25日(木)三田キャンパスにて、電気自動車プロジェクトEliica(Electric Lithium-ion Car)「エリーカ」の発表会が行われた。発表会では、このプロジェクトの概要とともに、1/5スケールの模型を公開した。このプロジェクトは、第37回東京モーターショーに出展することが決まっており、出展内容の詳細も発表された。発表会には新聞、テレビ各社をはじめとした数多くの報道陣が駆けつけ、Eliicaに対する高い注目ぶりを窺わせた。

発表会では、まず吉田博一政策・メディア研究科教授と、清水浩環境情報学部教授による挨拶が行われた。挨拶の中では、清水教授による8台目の自動車プロジェクトであるEliicaが「実用性」を押し出したものであること、プロジェクト全体に学生が主体的に関わっていること、教授にとってあらゆる面で満足がいったプロジェクトであったことがアピールされた。
 続いて、行われた日吉達也さん(政メ・修2)によるプロジェクト概要の発表では、まずEliicaのプロジェクトが持つ3つのテーマ、「産学協同」、「実用的」、「学生中心」の説明があった。更に、そのコンセプトである「FUTUREAL」がFUTUREとREALを組み合わせた造語であり、未来の車であると同時に現実的に普及する可能性を実証するものだということが述べられた。

次にEliicaの3つの特徴として、「省エネルギー」、「安全性」、「快適性」があげられた。Ellicaは、ギア比(ギアが1回転する間のエンジンの回転数)に違いを出すことで異なった性格を持たせた、2つのタイプが製作される。1つは最高時速400km/hを目指し、もう一方は最高加速度0.8Gを目指す。現在は部品の製作を行っており、11月に部品の組み立てを始め、12月に完成、2ヶ月間日本でテストした後、来年3月にはイタリア・ナルドでの走行実験を行う予定だ。
 その後、Ellicaの1/5の模型が披露された。さらに、東京モーターショーのコンパニオンを務めるSFCの学生の紹介も行われた。

続いて、デザインを担当した江本聞夫SFC研究所研究員が、模型に関して説明を行った。Eliicaではガソリン自動車に比べて、空間面でのデザインの制約がなくなり、その空間が十二分に生かされている。似たもの同士にならない、今後の電気自動車のデザインの展望も同時に示された。
 江本研究員は「Eliicaの次のプロジェクトのテーマは何か」、という取材陣からの質問に対して「価格面での実用化をテーマにしたい」と答えた。1台前の電気自動車プロジェクト「KAZ」は、イタリアで最高速度311.67km達成し大きな話題を呼んだ。Eliicaは「車としての実用性」を重視して開発を進めてきた。さらに次のプロジェクトでは、「価格面での現実性」を目標に設定するつもりだという。
 さらに、燃料電池自動車との優劣についても指摘されたが、リチウムイオン電池のほうが早期の実用化が可能であり、材料の面からも有利という見解が示された。構造の特徴上、燃料電池にリプレースすることも容易とのことだ。
 発表会の中では、東京モーターショーに出典するブースについての詳細も発表された。短期間かつ低コストでという制約の中、学生が中心となりながら、その準備が着実に進んでいることがアピールされた。
 今回の東京モーターショーの広報担当の小田佳さん(環4)は、SFC CLIPの取材に対し「SFCのタレントが集結しました。全てのメンバーが夏期休暇返上でプロジェクトを進行させた結果がここにあらわれています。東京モーターショーへ一人でも多くの方が足を運んで下さることを期待しています」とコメントした。
 東京モーターショーでは、Eliicaの1/1スケールモデルの展示が行われるほか、KAZ、集積台車の概念模型(台車の設計技術の一つ)の展示が予定されている。東京モーターショーの一般公開は10月30日(水)から11月3日(日)まで、幕張メッセで行われる。
 発表会当日の三田キャンパスでは、福沢諭吉先生像の前でのKAZの展示も行われた。