20日(木)16:00-17:30、Auto-IDをはじめとする自動識別技術の可能性とビジネス・社会モデルを演題としたセッションが行われた。司会者は、中村修環境情報学部助教授、パネリストには、村井純環境情報学部教授、國領二郎環境情報学部教授、ワイズシステム株式会社の山本謙治氏、早稲田大学大学院商学研究科の根来龍之教授が参加した。


 まず、司会の中村助教授から、パネリストの紹介とRFIDの簡単な紹介があり、Auto-IDをはじめとする自動認識技術の技術的な可能性、ビジネスの可能性、社会的に解決しなければならない問題についてというテーマを設定し、各パネリストの話に移った。
 根来教授は、RFIDと先行者優位について語り、ビジネスにおける先行者優位の一般的説明をしてから、RFIDについての先行者優位について、技術的先取り、客のスイッチングコスト、ネットワークの外部性は、良いほうに当てはまるとし、場所などの希少資源の占拠はなく、先駆者ブランドは必ずしもないとしながらも、「先行してもそんなに悪くはない」という感触を述べた。
 ワイズシステムの山本氏は、農産物の流通を仕事にしており、農産物や食品のトレーサビリティについての話を披露した。山本氏は食品のトレーサビリティを行う上で、小売業者、中間流通業者だけでなく、生産・出荷業者も合わせたプレイヤー全員にメリットがでる仕組みを作ることが課題であると指摘した。
 國領教授は、歴史的観点からみると現在が、近代の大量生産・大量販売の過程で作る人と使う人の関係が切れた、誰が作ったものなのか分からない、だれが使うのか分からない特異な状況であるとし、その切れたものがつながりだすと、全く新しいビジネスモデルが生まれると指摘。また、その過程でプライバシー問題は避けて通ってはいけない問題だとし、「そもそも守りたいプライバシーは何なのかということを議論しなければならない」と述べた。
 村井教授は、RFIDタグ付きの本の出版の例を引き合いに出し、「やってみると課題が山積み」とコメント。また話の中で、大学の研究が産業と一体になって、研究・フィードバックをすること、産学連携の重要性を指摘した。
 一通りパネリストの話が終わると、司会の中村教授はプライバシーについて言及し、國領教授に意見を求めた。
 國領教授は「プライバシー問題はRFIDに限った話ではなく、インターネットが出てきたときからある問題。プライバシーが心配だと騒ぐのではなく、冷静に一つ一つ対処していくことが必要だ」とコメント。それに対し村井教授は、プライバシーが過度に取りざたされていることに対し、プライバシーを考えるきっかけになれば、それは良いことだと指摘。「今、使っている技術で危険なものはある。なぜそれがよくて、あれがだめなのか。今まで許容されてきたのはなぜかというのを考えなければならない」とコメントした。
 また山本氏は、何かを犠牲にした場合に、何を得られるかといった視点が大事。たくさんの絵を描いて、こういうことができるよと示していくべきだと指摘した。