「建築とメディアサイエンスの融合:空間知能化のデザイン」は、ESL共同研究プロジェクトリーダーでもある三宅理一政策・メディア研究科教授の挨拶から始まった。


 慶應義塾大学ESL協同研究プロジェクトは02年より産学協同で進められている。「住まい手の視点から、環境情報と先端技術を高度に用いることにより可能になる人と地球に優しい暮らし」をESL(エコスマートライフ)と定義し、それらを実現する生活環境モデルの具現化を目指す。
 現在第2フェーズに入ったESLプロジェクトの活動報告は、渡邊朗子政策・メディア研究科助教授により行われた。
 具体的なESLのプロダクトである、人の知的活動を支援する空間知能化インフィルの例としては、「学習する会議室」の紹介があった。これは、会議室の空間そのものが学習エンジンを搭載し、部屋に組み込まれたデバイスによって議事録をCD-ROM化、参加者がそれを持ち帰れるなどといった、コンシェルジェ機能を果たすもの。05年度7月に開校予定の三鷹ネットワーク大学で、第一号の完成が予定されている。
 また、招待講演では今年度新たにマサチューセッツ工科大学建築学科学科長に就任した、アデル・サントス教授を迎え、「建築とメディアサイエンスの融合:MITの試み」と題して、MITで先験的に行われている建築とメディアサイエンスの融合分野における、学術とビジネスの取り組みについて、7つのプロジェクトの紹介があった。
これらの研究分野は今後、プライバシーの問題、人々の知覚的な問題をはらんでいくと述べた上で、サントス教授は「もしかすると、現在行われている研究では目新しいこと、目立つことを追求するという欲求から、奇抜な発想を選択してしまうのかもしれない。しかしながら人間にとって何が本当によりよい暮らしをもたらすのかを考なくてはならい」とプレゼンテーションを総括した。