さて、Welcome CLIPでは先々週から座談会、相談室という形式でSFCのAO入試に関する情報を、実際のAO合格生であるSFC CLIP編集員が配信してきました。第3週の今回は、AO合格者(A方式)の書類記入内容を具体的に分析します。


 筆者の私がAO入試に取り組んでいた時、やはり実際に合格した方々の情報が出来るだけ具体的に欲しいと思いました。AO入試は受験生によって各自内容が異なるので直接的な参考にはならないとは分かっていても、先人の例を見ることで実感が掴め、漠然とした不安が解消するからです。
 実はWelcome CLIP、あるいはインターネット上で公開されているAO入試合格体験記などが協力できるのは、今ここで挙げた「漠然とした不安」を軽減することぐらいだと考えます。AO入試を受験する上で本当に「必要な」知るべき情報は入試要項(慶應義塾大学のオフィシャルサイト: http://www.admissions.keio.ac.jp/exam/ao_sfc_about.html)に記載されています。
 今の時期にAOの書類を書き出す受験生も多いと想像します。はじめは何をどう書こうか迷い悩むのではないでしょうか。そんな時に以下の具体的な例を、抽象的な参考として頂ければ幸いであります。
<回答者>
赤瀬翔子(環境情報学部06年度4月入学・A方式1期)
Aさん(総合政策学部06年度4月入学・A方式2期)
●SFCをどうやって知りましたか?
赤瀬:放送部ニュースキャスターという職業を志していたので、高3の6月ごろに担任の先生と相談した際に、メディア系に加え幅広く学べるSFCを、と薦められた。高3の6月ごろ。
Aさん:もともと海外の大学に行きたかったが、それが困難になり日本の中では海外っぽいのがSFCと高校の教員に薦められた。高3の5月ごろ。
●SFCを選んだ理由は?
赤瀬:最近のニュースキャスターには文系が多い。そのため理系の話が理解できるニュースキャスターを目指したいと思った。メディア系に加え地球環境学や生命科学なども学べるSFCが魅力的に見えた。
Aさん:文系理系の枠に縛られず、色々なことが学べる環境に惹かれた。
●AO入試を選んだ理由は?
赤瀬:高校で所属していた放送部での活躍を考慮して、先生にもAOで目指せると言われた。面接で「なんで普通入試じゃ駄目なの?」と聞かれた際、「私の熱意は紙の試験だけじゃ伝わらないからです」と大きな声で答えたら、面接官が笑っていた。
Aさん:普通入試までに時間があり、AOも受けておこう、といった感じ。しかし、そんなネガティブな理由だけではなく、これまでの活動を振り返り、これからの目標を真剣に考える機会になるので、AO入試に取り組むこと自体が有意義だと考えた。
●AO入試の準備をいつ頃から始めたか
赤瀬:8月になってから、約5日間で猛集中して書いた。
Aさん:6月頃から9月の締め切りまで着実にのんびりと。特に8月は時間と労力をAOに大目に割いた。
●SFC CLIP Welcome CLIPのようなWeb上にある合格者の情報を探したか
赤瀬:実際にどのような内容で合格しているのか、合格のポイントは何かを知りたくて熱心に探した。赤本の合格体験記もよく読んだ。
Aさん:必死に探した。不安だったので。
●普通入試との両立は?
赤瀬:部活動を8月まで熱心に取り組んでいたので、普段も塾に通うなどしてはいたが、事実上はAOに賭けていた。
Aさん:基本的に普通入試を完全に優先。AO入試はあくまで2番手。しかし、さすがに2次面接直前の1週間は緊張してプレゼンの用意と面接への心の準備に専念していた。
●志望理由書の内容は?
赤瀬:「理系の内容に精通したキャスターになる」
Aさん:「インターネットの法整備」
●3年前の自分と比較しての知的成長の欄は?
赤瀬:高校3年間で物理・化学・生物、と多くの理科系の科目に取り組んだ。それぞれの科目を別々にではなく、統合的に考えるようになり、それが物事を多面的にみる力になった、と回答。
Aさん:交換留学していたのでその経験を踏まえて、「書く力と外国語」が特に伸びたと記述。
●問題視している社会的な問題は? 貴方はそれに何をしてきた・している・する予定か?
赤瀬:ゴミ問題。ゴミを微生物によって堆肥化する活動を家族でやってきた。生ゴミは燃やすと焼却熱を低下させ、ダイオキシン発生に繋がる。それを防ぎ環境ホルモンを軽減することに貢献してきた。またニュースキャスターとして、より多くの情報を発信し、自分が動くだけでなく周りを動かすようにしたい、と書いた。
Aさん:裁判員制度の導入について、日本人にはなじまないだろう、でも長い目では教育などで、適応していかねばならない、と書いた。
●3つの自分に影響を与えたMedia (本、人、社会的事象、技術など)
赤瀬:(1)「風の谷のナウシカ」宮崎駿、(2)「ガラスの地球を救え」手塚治、(3)「ブンナよ、木からおりてこい」水上勉。さらにここでは含めなかったが、テレビをよく見た。その中でNHKの国谷裕子さんが、自分の目標になっている。
Aさん:(1)電子辞書、(2)オンライン通販、(3)「華氏911」Michael Moore
●いわゆる「自分の全体像」の白紙部分には何を書いた?
赤瀬:自分を過去・現在・未来の3つに分け、過去の部分には写真を貼り、未来の部分にはキャスターとして働く自分や、環境問題の解決された社会を想像して絵を書き、それぞれにコメントを添えた。ラジオ番組などを作った際の経験を生かして、絵コンテのようにした。
Aさん:白紙であったのに、ごく普通に横書きの文章で埋めた。半分は、どのようにして自分がSFCのAOを受けるに至ったかの経緯、そして残りの半分はAO入試に向けて自分が読んだ本の感想。坂村健、村井純、ローレンス・レッシグ各氏など、自分の志望理由書の内容に関連がある分野の方々の著書は勿論、福翁自伝も読み、自分の感心した場所を面接で引用した。
●達成・記録・活動・留学・資格などは?
赤瀬:放送部活動での全国的活躍。高校生に関係の深い社会問題についてラジオ番組を制作し、NHK杯や九州大会などに参加。九州1位、全国トップ10入賞など。また、自分が普段の学校生活などで気が付いた身近な事柄などを短くまとめて、アナウンスする活動。NHK長崎の、原爆の出来事についてのテレビ番組の一部で朗読を担当。その他、構内向け、大会向けにテレビ番組やドラマの制作にも参加。北方四島でのロシア人の人々との交流体験。オープンキャンパスに来て、いろいろな先生方に熱心に話しかけたこと。
Aさん:TOEFL、TOEIC、英検などの英語試験。交換留学の際の奨学金合格、部活動での表彰。あと、いくつか英語で書いた文章。SFC卒業生へのインタビュー記事など。
●2通の評価書(いわゆる推薦書)は誰に書いてもらったか?
赤瀬:クラス担任と部活の顧問の先生に書いてもらった。
Aさん:高校の数学・英語の先生にお願いした。志望理由書のことで相談にのって頂き、お世話になった。
●添付資料は量としてはどのくらいに?
赤瀬:自分がいままでの受賞の賞状や、大会に参加した時の音声を録音したもの、さらに授与されたトロフィーなども写真にして全て添付したため、規定の袋に入りきらず、箱に入れて送った。
Aさん:全体の量としてはかなり薄く、規定の袋に充分なスペースを余らせ、郵送。
次週は、面接篇。