23日(金)3限、Ω21での「国際社会と法」(青木節子総合政策学部教授担当)にて、中田達也文教大学国際学部非常勤講師のゲスト講義が行われた。演題は「沖ノ鳥島をめぐる最近の動向と国際法」。沖ノ鳥島の最新事情を知ると共に、本講義を通して国際法の面白さを体感してほしいと語った。


 沖ノ鳥島(東京都小笠原村)は、小笠原諸島から南西に約900km離れた日本の最南端に位置する無人島である。日本はこの島を起点として排他的経済水域(EEZ)を得られるため、領土保全や豊富な漁場の確保が可能となったが、激しい波風によって島を形成するサンゴ礁が減少したため、87年以降、国によって陸地部分のコンクリート製護岸や波消ブロックによる囲い込みが行われた。
 しかし、1994年に発効された国連海洋法条約では、島の定義を「自然に形成された陸地」としてコンクリートの人工島は認めておらず、同島については中国政府が2004年に「島ではなく岩だ」と主張、今年春には台湾当局も同じ見解を示し、日中、日台間での認識の食い違いが生じているため、現在では島周辺のサンゴ礁の保護、再生が試みられている。沖ノ鳥島はメディアでは頻繁に取り沙汰されているにもかかわらず、現在それを体系的に扱った国際法に関する文献は存在しない。
 最後に「現状に固執した論理の展開に終止するのではなく、未だ起こっていない事態であっても、それが起こることを仮定して論理を構築し、事態が起こった場合の貢献とすることも研究者の重要な仕事ではないか」と学生を前に熱く語った。
*国際法は成文化された「条約」と慣習によって成り立つ不文の「慣習国際法」から成り立っている。記事中の国連海洋法条約は国際法の「条約」にあたる。