SFC CLIP編集部では、情報技術科目の問題点に関する取材を行ってきた。今週はその総括として、現在情報技術科目の運営を行っている服部隆志環境情報学部助教授に、現在の問題点や、これからの情報技術科目の動きについて聞いた。


■運営の規模と体制
情報技術科目の運営の規模・体制を教えてください。
 コンピュータに関する科目はたくさんあり、多くはその担当の教員自身が考えて運営しています。ただし、学生が入学した直後に履修する、情報技術基礎や情報技術ワークショップは受講生が非常に多く、クラスが複数あるので、私がまとめ役になっています。規模は、学生数で言えば、情報技術基礎などはほぼ全員履修していますし、クラス数で言えばのべ50クラス以上あります。教員は25・6人居ますが、非常勤の方がかなり多く、専任教員の方は4・5人です。
■現在の問題点
情報技術科目のSAが不足しているという事実が、今回の特集を始めるきっかけとなりました。服部助教授は、SA不足の原因は何だとお考えですか?
 学生が1年次から研究会に入るようになって、忙しくなったことが大きいと思います。
SA不足について、何らかの対策は練られていますか?
 良い対策があればしていきたいのですが、なかなかうまくいきません。なるべく、コンピュータ系の研究室に頼んで、学生に勧めてもらうようにはしています。
情報技術基礎などの授業で、教員によって授業内容に差があるそうですね。教員同士で、お互いがどのような授業をしているのかという情報を共有する体制はあるのですか?
 年に1回、皆で集まって会議をしていますが、時間もあまりなく、具体的に個々の教員がどう教えているかという所までは話していません。仮に、教える内容をきっちり決めるとなると、教員のモチベーションの低下に繋がりかねないので、授業内容の完全な統一はなかなか難しいと思います。最低限全クラスで教えて欲しい内容は共通教材に盛り込みますが、具体的な教え方まで統一することはしないと思います。
現在、授業内で認定試験対策は実施されていませんが、これから授業内で認定試験対策を行う可能性はありますか?
 来年からカリキュラムが大幅に変わるので、認定試験とあわせて授業内容も全面的に変更する予定です。
■スタッフMLに関して
情報技術科目スタッフのメーリングリストで、教員から投稿された意見が科目の運営に反映されないということがあるそうですが。
 なるべく対応するようにしているつもりなんですけれども…。意見を無視しているわけではないです。
教員の意見がすぐに反映されない状況についてどうお考えですか?
 意見をすぐに反映できなくて、結果的にそれを無視する形になってしまっているかもしれませんが、ここ数年で寄せられている意見は、来年のカリキュラム改定の際に一気に反映させようと考えています。いろいろな方向の意見があるので、全てを反映するのは難しいですけれど。
■これからの情報技術科目
情報技術科目全体で、問題だと思う点があれば教えてください。
 今、情報に関して、大学で何を教えるべきかという事が教員を悩ませています。今は中学や高校でも情報を教えるようになったので、もう大学では情報をやらなくても良いという意見があります。でも、コンピュータを使えない大学生はいるので、全く教えないわけにはいかない。ここ数年、このような意見がいろいろと出て、収拾がつきませんでした。
 ですが、来年のカリキュラム改定で、SFCの情報の授業としては、基本的にプログラミングを教えるべきとの意見にまとまりました。まだ正式には決定していませんが…。情報技術基礎で教えているような一般的な知識は、本来高校の情報の授業で教えるべき内容ですが、今の高校では、受験科目ではない情報科目にはあまり力を入れていないようです。だから、高校の情報科目で教えるべきことも、SFCではサービスの一環として教えましょうというこということになりました。
では、来年度のカリキュラム改定で、情報技術科目ではプログラミングを中心に教えることになるのですか?
 プログラミングは学生全員にやってもらいます。ただ、総合政策学部の学生が技術者を目指す可能性は非常に低いと思うので、そういう人達のためには、プログラミングといっても少しとっつきやすいものを用意しようという計画があります。
認定試験もカリキュラム改定の際に変更が加えられるのですか?
 まだ決まっていませんが、おそらく変わると思います。大学ではプログラミングを教えたいけれど、プログラミングしか教えないわけにはいかない。必修ではない、高校で既に情報の基礎を習得した人は履修しなくてもよい科目として、基本的な科目も設置します。認定試験もその科目に連動させることになると思います。
ありがとうございました。
 今回の一連の取材で、問題点と同時にそれらを改善することの難しさが浮き彫りになった。特に、入学時の習熟度の差については、SFCだけでは解決できない問題であり、完全に解決することは困難であろう。だが、そのような問題も、来年度のカリキュラム改定をきっかけに、徐々に改善が加えられていくのではないだろうか。
 カリキュラム改定では、情報技術科目以外にも多くの変更があると予想される。今後の動きに注目していきたい。

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