SFC Open Research Forum 2006の2日目となる23日(木)15:00から、丸ビル7階丸ビルホールにおいて、Digital Art Awards 2006表彰式が開催された。Degital Art Awardsは、SFC研究所が創設した学生デジタルクリエイターのための国際コンペティションで、今年で6回目の開催となる。表彰式では毎年ゲストによる講演が行われているが、今年はアートユニットである明和電機が、「明和電機会社説明会」と題して特別講演を行った。


 明和電機は、土佐信道氏によるアートユニット。中小電機メーカーを模した形で活動し、土佐氏は自らを「代表取締役社長」と名乗り、作品を「製品」と呼んでいる。国内のみならず、国外でもユニークな活動を続け、ヨーロッパのメディアアートコンテスト「アルス・エレクトロニカ」でインタラクティブ部門賞の準グランプリを受賞するなどの実績も残している。
 
 会場は多くの観客で賑わい、客席はほぼ満員となっていた。土佐氏は明和電機のトレードマークとも言える青い作業服を纏って登場し、明和電機の成り立ち、主な製品紹介、作品の制作過程などを講演した。随所にユーモアを交えての講演となり、客席から笑いが捲き起こる場面も多く見られた。
 代表的な製品の1つとして、まず「魚器(なき)」が紹介された。これは大学生時代の「自分とはなんだろう?」という問いがきっかけになり作り出されたもの。そうして考えた結果を、言葉ではなく道具に置き換えていき、自分と世界を繋ぐインターフェイスとして作られたのが魚器だという。動画を交えて、魚器シリーズの多くの製品が紹介された。
 100Vの電流で動く電動楽器「ツクバ」シリーズの紹介も行われた。動画による紹介に加え、「指パッチン木魚」略して「パチモク」(指にセンサーをつけ、指パッチンをすると100Vの電流が流れ背中の木魚が鳴るという楽器)を土佐氏本人が実演する場面も見られた。
 他には、既に失われてしまったインターフェイステクノロジーを使用した製品により、現在のテクノロジーとは違う生活スタイルを提案する「ARCLASSY」や、明和電機とは別に立ち上げたシリーズ「EDELWEISS」も紹介された。
 いずれの作品にも共通するコンセプトは、まずは一人のアーティストとしてアートを作るが、それをそのまま売るのではなく、そのノウハウを生かしてプロダクトに落とし込んでから売っているということ。そして、そのプロモーションにも力を入れているのが明和電機だ、と土佐氏は語った。
 また、講演後に設けられた質疑応答では、「いろいろなことをやっていらっしゃるが、最終的にどこを目指されているのか?」という問いに対し、「明和電機という入れ物がなかったら僕はきっと支離滅裂な人間になってると思いますよ。でも、一つ言えることは、自分をいろいろな形に変身させて、表現していくのが自分のスタイルだということ。最終的にどうなっていくかというのは僕も良くわからないんですが、死ぬ間際に、今までやってきたことがキュッとまとまればいいなと思って、今は好きなことをやっています」と答えた。
 講演が終わると、Digital Art Awards 2006の表彰式が行われた。審査委員長である稲蔭正彦環境情報学部教授による挨拶の後、まずは高校生部門の受賞作品が紹介された。グランプリに輝いたのは、関口厚次さんの「ペンは剣よりも強し」というインタラクティブ作品だ。また、今年から新設されたベネッセ賞には、山岡潤一さんの「OUTSIDE」が選ばれた。
 次に、デジタルシネマ部門、インタラクティブ部門、デジタルミュージック部門のグランプリ・特別賞の受賞作品が紹介された。それぞれ、グランプリに輝いたのは、ジョエル・フルタードさんの「Tree for Two」、平川紀道さんの「DriftNet」、グルッポ・ラブンの「D-Homo」。これらの受賞作品は、ホワイエのプラズマディスプレイで全編上映された。
 
 授賞式の終わりに、稲蔭教授は、「これまでの受賞作品には、メディア芸術祭やアカデミー賞の学生部門にノミネートされているという実績もあり、非常にレベルの高い作品がたくさん集まってきております。このような中で今回受賞された作品というのは、大学としてだけでなくデジタルアート・デザインの分野で確実に太鼓判を持って明和電機社長にご推薦できる天才です」とコメントした。