慶應塾生新聞会(以下、塾新)。慶應義塾で400号以上に渡って新聞を発行し続けてきた、誰もが知る義塾最大のメディアである。今回のProject CLIPでは、編集局長の福冨隼太郎さん(総3)、藤沢デスクの香取了さん(環2)という塾新で活躍する2人のSFC生に取材を行い、SFCというキャンパスにおける「紙の新聞」の行方を追った。


<span style="font-size: 120%; font-weight: bold";>■SFCとの距離感
<span style="color: red; font-weight: bold"">CLIP:個人としてSFCではどのような分野に取り組んでいますか?
福冨:青木研に所属しています。やりたいことがこの春休みに見えてきた気がしています。
香取:作曲やエネルギーに興味がありますが、研究会はこれからです。
<span style="color: red; font-weight: bold"">お二人ともマスメディア志望というわけではないんですね。
福:塾新でもメディア・コミュニケーション研究所に所属する学生もいますが、SFCではあまりいないです。
<span style="color: red; font-weight: bold"">それでは塾生新聞会について伺いたいのですが、創刊は何年になのでしょうか?
福:1969年からです。学生闘争の頃に創刊しました。
<span style="color: red; font-weight: bold"">当時から発行の形式は変わっていないのでしょうか?
福:縮刷版の厚さが変わらないので、あんまり変わってないのだと思います。
<span style="color: red; font-weight: bold"">全塾的にはどれほどの規模なのでしょうか?
福:いろいろな区別のしかたがあるのですが、大体70人くらいですね。そのうちSFCの学生は15人くらいです。
<span style="color: red; font-weight: bold"">活動は三田で行うと聞いたんですが?
福:編集作業というのが1回に1週間くらいあるんですが、その時期はかなり三田に通います。授業が終わった後に移動するので夜遅くなりますが、人数的に三田の学生が多いのでしょうがないですね。
<span style="color: red; font-weight: bold"">全塾規模の団体に所属しているメリットはありますか?
福:SFCにいながら三田・日吉の知り合いや先輩ができる。40年分のOBの方もいらっしゃって提案してくれることもあります。SFCで完結する団体ではないので、慶應の色んなところに知り合いが持てますね。
<span style="color: red; font-weight: bold"">SFCのメンバーだけで活動することはあるんですか?
香:七夕祭などの出店はやりますが、編集作業はキャンパス単位で動くことはありません。
<span style="color: red; font-weight: bold"">SFCの話題の取材をするのも、基本的にSFC生のメンバーですか?
香:そうです。ただ、日吉や三田の学生でもSFCで取材したい相手がいれば、SFCで活動することもあります。
<span style="font-size: 120%; font-weight: bold";>■塾新は奇人の集まり!?
<span style="color: red; font-weight: bold"">二人が塾新に入ったきっかけ、動機というのは何だったんでしょう。
香:新歓に参加したら雰囲気が良くて入ったんですが、有名な人を取材したり、自分の書いた記事が新聞に載った時の達成感も大きいですね。
福:受験の時に配られていた塾新に「東京六大学のトイレを比較する」という企画が載っているのを見て、こんな面白い企画をやる学生新聞があるのか、と思いました。
<span style="color: red; font-weight: bold"">入学前から塾新のような団体に所属したいとは考えていなかったのですね。
福:僕の場合は中高で部活をやっていなかったので、特に打ち込みたいスポーツもなかったし、旅行が趣味なんですが、それはサークル入ってやろうとは思ってなかったですね。
<span style="color: red; font-weight: bold"">主観で結構ですが、塾新はどういう団体だと思われますか?
香:皆で1つの新聞を作りあげるために、一生懸命になっているイメージですね。共同作業が良さだと思います。
福:奇人の集まり(笑)。例えば、広告局というところはひたすら営業の電話を掛けていて見ていて目を覆いたくなるほど大変なんですけど、そういう負担が重い役職でも給料は出ないし、それなのに何故かやりたくなる人が多いのは、変人が多いからだと思います。
 それに、割と規律に縛られないというか、「何かしなきゃいけない」という状態を作らないようにしようと思っていて、そういう雰囲気が好きですね。
 役職者は信任投票で決まるので、もちろん最低限の仕事にだけは責任を持ってくれないと団体として成り立たないと思っています。
<span style="font-size: 120%; font-weight: bold";>■こだわって上手くできたら「あ、嬉しいな」と。
<span style="color: red; font-weight: bold"">塾新として活動する上で個人的に気をつけていることはありますか?
香:先輩に対する礼儀はちゃんと守るようにしています。取材に関しては「謙虚に」と思っています。
福:自分は規律がない分、しっかり責任を果たそうと思い、かなり積極的に活動には参加しています。今は編集局長なので当然と言えば当然なのですが、その前から心がけていました。
<span style="color: red; font-weight: bold"">塾新の活動でやりがいを感じるのはどんな時ですか?
香:自分の書いた記事が新聞になって皆に読まれる時ですね。
福:僕は、デスクになって最初のうちは取材することに精一杯だったんですけど、後半からは、塾新のレイアウトを一般紙のレイアウトに近づけたいな、と思っています。
 たとえば、記事はリード文の後に本文が始まるんですけど、今まではリード文と本文の間に罫線を入れてたんです。でも、それは見栄え的におかしい。一般紙はそんなことしてないから、それはとっぱらおう、とか。そういう見栄えの話にこだわり始めて、この間の4月号も、だいぶ一般紙に近づくことができて嬉しい、と言うのもおかしいんですけど。見栄え的にはプロが作ってるものに近いほうが良いにきまってるから…
 「あ、なんか今月出来栄えイイじゃん」とか、刷り上ったのを見て思って。見栄えにこだわって上手くできたら「あ、嬉しいな」と。
<span style="color: red; font-weight: bold"">逆に、言える範囲で構わないので、失敗した経験はありますか?
香:一年生の時の取材で、あまり勉強しないまま質問しちゃったことがあって。適当に質問を考えてバラバラにやっちゃって、これはどういう記事になるんだって相手から疑問に思われたりしました。
福:個人的な話なんですけど、デスクとして受け持った記事を持ったまま海外旅行に行っちゃって、帰ってきたら締切があと3日で、持ってた記事を2個落として編集局長にめちゃくちゃ怒られたりとか。記事を2個落とすっていうのは、編集局長になってみたらわかるけど、ほんと死刑にしたくなるんですよ(笑)
<span style="color: red; font-weight: bold"">旅行に行く前には不安は感じなかったんですか(笑)
福:軽く考えてました。どうせなんとかなるだろうと思ってたんですよ(笑)。でもなんとかならなかったんですよね。
<span style="font-size: 120%; font-weight: bold";>■SFCにおける「紙の新聞」の存在感
<span style="color: red; font-weight: bold"">紙面とWEBサイトの優先順位は…。
福:紙面が優先です。紙面に載ってからWEBに出します。いろいろ考えてはいますが、まだ具体的に変える予定はないです。
<span style="color: red; font-weight: bold"">塾新全体としては、紙という媒体へのこだわりがあるんでしょうか?
福:一応新聞サークルなので紙面第一という主義です。WEBの速報性を利用してやってみようという気持ちは強いんですが、そこまでモチベーションが高くはないですね。
<span style="color: red; font-weight: bold"">インターネットが普及してるSFCという環境は、紙のメディアにとってどうなのでしょう?
福:三田と日吉と違って、SFCでは休み時間に新聞を配ることができないんです。だから、新聞を取ってもらえないと読んでもらえない。ただ、みんなが授業中にパソコンを開いている中でも、よく見ると塾新を開いてる人も居る。
 案外、ここのキャンパスの人間も、大きな言い方をすれば、情報の収集手段はWEBだけって思っているわけではないじゃないですか。少なくとも、こんなにみんながパソコンを持ち歩いてるキャンパスでも、新聞という媒体で続けているというデメリットは無いんじゃないかと思っています。
<span style="color: red; font-weight: bold"">現在は、紙・WEBともに年11回発行というペースですが、多いとか少ないとか感じますか?
福:個人的な感想だと、機会としては少ないけれど、作っていて思うのは月1回が限界だということです。ペースには、今のところあまりこだわっていないです。
<span style="color: red; font-weight: bold"">ところで、SFC CLIPって読みますか?
福:入学して2ヶ月目くらいからずっと読んでいます。正直な話、CLIPの方が全然速報性があるので、割とネタ元になるんですよ。「こんなニュースあったんだ」みたいな。後追いに近いことを塾新がしていることはありますよね。
<span style="color: red; font-weight: bold"">それは発行頻度が違う以上、しょうがないですよね。
福:まあ、しょうがないんですけどね。藤沢のニュースでは、細かいところまで調べてると思います。
<span style="color: red; font-weight: bold"">ところで、紙面の割り当てを事前に決めていると聞いたんですが、記事が短くなった時というのはどうするんですか?
福:最終的な手段として自社広告を入れますね。取材なしでできる代わりのネタを見つけるとか、写真を大きくする、見出しを太らせるなどあります。
 見出しも太らせればいいってもんじゃなく、やっぱりネタの重要性によって字体も面積も考えなきゃいけないんですよ。
<span style="color: red; font-weight: bold"">最近塾新を読んでいてSFCの記事が多いと感じるのは気のせいでしょうか。
福:それは単純にSFCで頑張る人が増えただけだと思います。今の藤沢のデスクは、3人とも頑張ってるという印象で、実際記事も増えてます。どれくらいからそう思いました?
<span style="color: red; font-weight: bold"">1年前くらいから…
福:自分がデスクになったくらいかな
<span style="color: red; font-weight: bold"">丁度リンクしてるんですね。
福:確かに、三田や日吉のデスクに比べて、どんな細かいことでもネタはたくさん持っていきました。去年の編集局長が1人SFC出身だったというのもあるんですけど。ネタを出した量の多さと、編集局長が藤沢出身という環境的要因、両方揃ってたからじゃないでしょうか。編集局長が両方とも三田の人だと、藤沢の何がニュースなのかわからないじゃないですか。
<span style="font-size: 120%; font-weight: bold";>■批判だけがジャーナリズムじゃない
<span style="color: red; font-weight: bold"">塾新での今後の目標はありますか?
香:皆で協調しあえる仕事をしたいですね。取材などは個人でバラバラに行くことが多いので、皆でできる活動を増やしたいですね。
福:一番思うのは、塾新は学生新聞のサークルでありながら、いわゆるジャーナリズムの視点を持っている人が少ない。例えば大学を批判をする内容の記事は、ネタ出しの段階で叩いてしまうし、立場としてあまり学事と距離を置きたくないんですよ。
 学生が何か叩く記事を書いても、学生らしくていいんですが、本当の新聞社に比べると薄いんですよ。そうすると折角叩いても反論する隙を与えてしまうことが多いんです。
 学事と距離を置かれると、うちは新聞をキャンパスに置けなくなってしまうんです。そんな事になると、新聞を出しているのに元も子もないので、できるだけわだかまりは作りたくないです。
 ジャーナリズムって批判するだけじゃないと思うんです。例えば去年の11月頃に総合政策学部の教授を集めて「常任理事国入りを問う」というテーマで識者に聞いたんですが、そういう世論的なものに対する企画を増やしていければもっと読みごたえができるかなと。
 慶應で何が起こりました、ということを報道したり、塾員でこんな凄い人がいます、というのを皆に伝えるのも重要な役割の1つですが、学生が世論に対してどう考えているかといったことを、難しいんですけど…
<span style="color: red; font-weight: bold"">あまり大学の中で完結しないような感じで。
福:そうですね。しかも、意見を持っているというような記事が増えるといいんじゃないかなと思っています。