今週のアゴラはSFCの卒業生である渡辺俊史さんに寄稿していただいた。SFCで学んだことが社会に出てどう活かされているかについて。また在学生に向けたメッセージも述べられている。就職活動中の学生は必読だ。


「無限大の可能性。それがSFCらしさ」
渡辺俊史さん(NTTコミュニケーションズ株式会社)

2000年環境情報学部修了
2002年政策・メディア研究科卒業

 google先生に聞くと、いまやSFCの専売特許ではなくなっているらしい「未来からの留学生」という言葉。このいかにも魅力的なキャッチコピーに惹かれて、自分は10年とちょっと前、SFCに入学した。
 パソコン通信に代わって、インターネットという言葉がちょっと聞こえ始めたかなというくらいの当時、PC-9801から9600bpsのモデムで一生懸命Mosaicを動かしてWWWを見て衝撃を受けていた自分が、SFCに魅力を感じたのは当然のことだった。
 そしてもう一つ、進路に悩んでいた自分がSFCを選んだ決め手は、少し旬を過ぎてしまった言葉かもしれないが「学際的」という考え方だった。国語と社会が得意だけど、なぜか理系のクラスにいた、そんな中途半端な自分にはピッタリな学部だった。
 大学院を卒業してはや6年。その選択は間違ってはいなかったと確信している。SFCでの様々な経験-ゼミでの研究、サークル活動、バラエティに富んだ講義などなど-は社会人となった今、陰になり日向になり自分を支えてくれている。
 SFCは本当に何でもできるキャンパスだった。学部時代はネットワークゲームを作るかたわら、ジャーナリズムの研究で環境問題への対応をIT企業に取材に行き、大学院では情報社会学を研究しながら、ウェアラブルコンピューティングのシステムの構築などもした。
 これだけ専攻に関係なく何でもできるキャンパスというのはSFCくらいだろう。でも、その何でもできる可能性こそが自分の基礎を作ってくれたと思っている。
 文系の学問だけでは、この情報社会の変革を起こしている本質である「技術」がわからないし、逆に理系の学問だけでは、その技術がどんなインパクトを「社会」に与えるかを解き明かすことはできない。
 今、自分はその経験を生かして、通信会社で法人向けのインターネット接続サービスの新商品の企画・開発の業務に携わっている。この仕事はビジネスとしての知識はもちろんのこと、最新技術の動向も常にウォッチしていないといけない。
 SFCにすごく感謝しているのは、新しい技術を「とにかく試してみる」癖がついたことと「自分でモノを作る」経験ができたことだ。何か新しい仕組みを考えるときに、ただ企画を絵にするだけでなく、どんな技術を、どんなソフトウェアを使えばそれが実現可能なのか、自然に頭で考えることができるようになっている。
 そして、何にも代え難いのが、SFCで出来た人脈である。今でも定期的にSFCCLIPの元となった中島洋先生のゼミのメンバーとは集まって、情報交換をしている。今はまだ中堅一歩手前くらいのビジネスマンだが、きっと10年後20年後には、社会にインパクトを与えるような活動が出来るようになっているんじゃないかと楽しみにしている。
 最後に今の学生の皆さんに伝えたいこと。
 是非、学生のうちに、色んな経験をして下さい。失敗しても許されるのは学生の特権です。やらないで後悔するくらいなら、やって後悔しましょう。その後、きっと自分は大きく成長出来ているはずです。
 視野を広げてください。SFCは可能性に溢れるキャンパスですが、SFCが社会の全てではありません。積極的に外に出ましょう。
 何かを作ってみてください。議論も大事ですが、せっかくモノを作れるキャンパスにいるのですから、簡単なプログラムでもいい、映像作品でもいい、サークルでの活動でもいい、とにかく何かを作ってみてください。モノを作った経験はきっと将来役に立ちます。
 就職活動中のみなさん。色んな企業を見てください。自由な立場で会社を見られるのは、就職活動中の今だけです。でも、最低限面接前に失礼にならない程度の企業研究くらいはして下さいね。売り手市場なのでしょうがないかもしれませんが…
 あとは非常に俗な話ですが、福利厚生や給与など待遇面もちゃんとチェックしましょう。結構重要です。
 何でもできる可能性に埋もれることなく、その可能性を最大限に、そして無限大に生かして、SFCらしさをこれからも作っていってください。