「やろうと思えば何でも出来る」がSFCの良いところ。今年も様々な企画が立ち上がり、キャンパスを賑やかに彩った。今回は、それらの企画を長く見てきた元事務室の職員に、担当したイベントを振り返ってもらった。

「いいね、その企画」 元事務室学生支援担当
(現湘南藤沢中・高等部事務長)
村松夏彦

昨年まで事務室で学生支援を担当していました村松です。SFCは多くのプロジェクトとサークルがあり、実にさまざまな企画書を受け取りました。提出された企画書は一年間で厚さ10cmのパイプファイルが4冊、5冊にもなりました。企画書の中で一番多かったものは「祭り」のイベントに関するもので、実行団体である当時のイベント企画局(その後『七夕祭』『秋祭』『新歓実』と独立団体として活動するようになりました)の学生達は組織力も行動力もあり学校側が見るに見兼ねて手伝ったりすることは決してしませんでした。【諭吉像を使うこと、鴨池に入る企画は没】が唯一暗黙の了解でもありました。
 祭りでの企画はいろいろと思い出があります。ある年の秋祭りで人を乗せた気球を上げる企画がありました。さまざまな困難を乗り越えてSFCから初めて気球が上がった時の喜びは今も忘れません。当日は悪天候であったため短時間で終了し乗船を待っていた多くの人たちを残念がらせてしまいました。
 またこの年は「とにかくギネスブックに載りたい」と、ドミノ倒しの世界新記録に挑戦するため、オメガ館をドミノ牌で埋め尽くしてしまいました。最終的に実行委員側は「新記録達成!」と喜んでいましたが……今現在そのような更新は掲載されていません。SFCの祭りに欠かせないものとして花火の打ち上げがあります。花火会(サークル)の学生が花火師の資格を取得して、中高グラウンドから花火を打ち上げることが伝統として引き継がれてきましたが、最初にこの発想をして実現させた学生の行動力には敬服いたします。遠藤公民館からステージまで聖火リレーをした年もありました。
 イベント団体以外の学生企画でも印象に残っているものがあります。まず、テアトロンでのファッションショー。照明、音楽、衣装でSFCの夏の夜を幻想的な雰囲気にした企画でした。主催者は、大量の蚊取り線香を客席に置いてやぶ蚊対策を行ったこれもまたSFCならでは光景でした。 サッカーのワールドカップをθ館でライブ放映する企画もありました。学校側との交渉が長引いて(シータ館での授業を休講にする交渉まで自分達で行いました)、告知期間が短かったにも関わらず会場は超満員となり、入りきれなかった学生(整理券方式が周知されていないと抗議してきた)が急遽γ館(アリーナ)のフィットネスルームに特設コーナーを設置して放映してしまいました。θ館の凄まじい大歓声が今でも思い出されます。SFCがワールドカップで沸いた一日でした。試合中継が深夜の年もありましたがこの時の企画は結局没になりました。
 多くの企画は一回限りで終わってしまうのですが、一度実施したイベントの問題点を改善して次回の実施に繋げていくようなプロジェクトグループ(SMRG、Pumpkins等)もありました。SFCが抱えていた社会問題としてバイクの違法駐車対策やタロー坂にずらりと並んだ自転車をなんとかしようと自転車置き場設置まで粘り強く交渉を続け解決したプロジェクトもありました。こういう学生たちは企画立案時からモチベーションが高く、実行力もあり、塾内で助成金を受けたり塾長奨励賞やSFCAWARDとして表彰されたりしました。学校や地元との交渉、経費の捻出方法、イベント運営のノウハウについてはほとんどゼロから始めたので当初は相当苦労していたようでした。2回目、3回目と実績を重ねることでに運営のノウハウを蓄積させ、成長していく形がはっきりと目に見えてわかりました。彼らは【慶應義塾大学の公認団体】として認められたいとの希望があり、こちらも応援したのですが、プロジェクト型の公認団体は全塾的には容認されにくく、慶應義塾としては非公認団体だけどSFCとしては公認団体だと言って励ましもしました。
Pumpkinsの当時のリーダーであり現在SFC CLIPの編集者である山本君から、今でもイベントを続けて開催していると聞いてうれしく思いました。
 自分は学生に対して、企画をよりよいものとして実現させるためのプロセスをしっかりと考えてもらおうと思って、よほどのものでない限り企画案を却下することはしませんでした。また企画案を即刻認めるようなこともあまりしませんでした。一部『即却下』した企画(例えば鴨池ボートレースやゲリラバーベキューといったもの)もありましたが。
 SFCのある先生が、自分が学生時代に指導された先生から掛けられた「いいねその発想、続けて考えてみて』という言葉がなによりの励みだった、という話しを伺ったことがあります。自分の学生支援の原点でもそうであったと思います。自分的には「いいね、その企画。でもこの点はどうするの?」であって、次に事務室に出してくる企画を待っていました。こちらが曖昧な対応をすると学生側が困惑してモチベーションが下がってしまうことも教えてもらいました。SFCの現役学生の皆さんには、ぜひ多くの斬新な企画を立案しその実現まで何回でも事務室に通うことや関係者に頭を下げることを厭わないでいただきたいと思います。皆さんの熱意に動かされてしまったことが多々ありました。現在も自分は同じキャンパスにおりますので何事でも立ち上がる学生諸君を陰ながら応援しています。