シラバスだけではわからないSFC研究会の実情を、SFC CLIP編集部が実際に研究会へ赴いて調査する「CLIP流研究会シラバス」。今回と次回の2回続けて、清水唯一朗研究会を特集する。第5回の今回はそのひとつである「日本政治外交研究(以下、JPD)」を取材した。

学生主体、ゼミはみんなで作るもの

JPDは、その名の通り日本政治外交の問題点とその本質を探る研究会だ。「歴史と現代を繋げて考える」というコンセプトのもとで、議論を進める。国内で起きた、過去の事例と現在を比較することで、「なぜ今こうなっているのか」「では、これからどうしていくべきなのか」を論理的に考えることができる。
 研究会では、学生が司会・運営を行う。毎回その日のテーマに沿って議題共有を行い、議論の方向性を皆で相談して決める。これは人からの受け売りの知識、いわゆる「借り物」の議論を嫌い、「自分の頭で考える」ということを重要視する清水唯一朗総合政策学部准教授の方針による。

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去年までは、歴史のレビューから議論まですべて清水准教授が主導して進めていた。しかし、学生だけでも議論が円滑に進む事が分かってからは、各回テーマや参考文献の提示以外はほとんど学生に任せている。「ゼミはみんなで作るもの」という言葉がまさに体現されたスタイルと言える。
 「自分の頭で考えることはそんなに簡単ではありません。知識はもちろん必要ですが、それを様々な個性を持った仲間と共有した上で、議論する場が必要です。それがまさに『研究会』なのではないでしょうか」と清水准教授は語る。その言葉通り、研究会には三田キャンパスからも学生が参加している。

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皆で交わす熱い議論

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取材に伺った日のディスカッションテーマは、「対外政策のあり方について」。外交と国内との関係から、国益を最大化するにはどうすれば良いか。外交が国内に与える影響から考える班と、国内が外交に与える影響から考える班に分かれ、1時間ほどグループワークを行った。ここでも、清水准教授はほとんど口を挟まない。時折様子を覗くことはあるが、基本的には任せきり。教員の発言は正しいと感じてしまうことによって、議論の方向性がひとつに固まってしまうことを防ぐためだ。

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その後、今度は清水准教授も含め全員集まって各班成果のプレゼンを行い、議論を進めた。その都度、疑問点や指摘などを出していくうちに議論はだんだんヒートアップし、もう一度考え直そう、と新たな課題を設定したところで研究会は終了。帰宅後はサイボウズLiveという情報共有のためのプラットフォームサービスを用いてオンラインでも意見交換を行い、次回のディスカッションへと繋げていく。

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研究会中に熱い議論を交わす一方で、休み時間にはお菓子を皆で回して食べながら談笑するなど、とても和やかな雰囲気だった。時には清水准教授も含めて夕食を食べに行くこともあるといい、オンとオフの切り替えがきっちりとできる、けじめのある研究会だと感じた。

怖い? 優しい? 学生に慕われる清水准教授

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JPDで幹事長を務める伊藤あゆみさん(総4)に、清水准教授について伺った。
 「清水准教授は、実はとても面倒見の良い方なんです。論文の推敲などは、毎回真っ赤になって返却されますし、研究に必要な情報やお知り合いの方なども紹介していただけます。また、以前私が個人的な理由で落ち込んでいた時、お茶を出して気遣ってくださったこともあるんですよ。厳しい批判をされることもありますが、そんな清水准教授のもとで研究できるのはとても幸せなことだと感じています。」
 どんなジャンルに興味があっても、必ずどこかで関わってくるであろう分野が「政治」だ。仲間との議論を通して自分の頭で考えることができるようになる研究会は、誰にとっても魅力的であるに違いない。
 次回は清水唯一朗研究会「オーラルヒストリー」を特集する。