SFCにはあらゆる分野の研究会が存在する。シラバスだけでは分からない研究会の実情を、SFC CLIP編集部が実際に研究会へ赴いて調査する「CLIP流研究会シラバス」。第8回は、小林良樹研究会「社会安全政策 (治安問題)」を取材した。


 小林良樹総合政策学部教授は警察庁出身で、2010年春学期にSFCに着任した。今学期で退職する予定となっている。小林教授は2つの研究会を持ち、治安問題などの「社会安全政策」、防衛問題などの「安全保障政策」の分野をそれぞれ扱っている。今回は、社会安全政策を扱う研究会を取材した。


身近な問題を解決できなければ、大きな問題も解決できない


 研究会では、学期の始めに研究手法を確認し合い、文献の輪読や中間発表を通して個人研究の完成を目指す。研究テーマにまず、自分の住んでいる地域での自転車の盗難についてなど、身近なテーマを選ぶ学生が多い。上級生になってから、国家の政策など大きなテーマを扱うためだ。小林教授は「身近な問題を解決できない人は、大きな問題も解決できない」と語る。

小林研1小林良樹総合政策学部教授


私がするのは、背中を押すこと


 身近なテーマを推奨する理由には、フィールドワークのし易さという理由もある。「ツールが便利になった分、今の学生はアナログな情報収集が苦手なのではないか。理論的な裏付けと現場の情報、両方があって説得力を持って語ることができる」と小林教授は説く。学生は、実践的な学びを研究会で行い、犯罪学の理論などはサブゼミで学んでいる。「フィールドワークの体験はできるだけ研究会で共有している。1人だとできないことも、仲間の後押しがあればできる」と小林教授。この日も、附属池田小事件の現場となった大阪教育大学附属池田小学校で行った調査経験を学生が話していた。小林教授は「体を動かすのが得意な学生と、資料から分析をするのが得意な学生がいる。私がするのは、そんな学生に合わせてそれぞれの背中を押すこと。あとは、主体的にやるのが良い」と語る。

小林研研究会中の様子


熱心な指導、近い距離


 履修者の田名部美紗さん(総2)、瀬口実生さん(総4)、鈴木あいさん(総4)、津島真美さん(環4)、河津幸太郎さん(総2)に小林教授について聞いた。「とても熱心に指導してくれます。特に学生に対するメールが丁寧です。口頭でした資料の質問に、一覧をメールで送ってくれたこともあります」と瀬口さん。「言うことが常に正論。まさに警察庁出身という方です。一方で、サークル活動等の近況報告を毎回聞いてくれたり、懇親会の幹事も引き受けてくれたり、とても距離を近く感じています」と語る。

小林研3鈴木あいさん(総4)、瀬口実生さん(総4)、田名部美紗さん(総2)


社会で生き抜く力を


「社会には、問題解決はできるが、問題発見ができない人が多い。そういう教育を日本がしてきたからだ。今後、それでは会社も役所も回らない。SFCに来て、まさに日本に必要な教育をしていると思った」と小林教授。「SFCには問題発見、問題解決を育むための仕掛けがあるのに、気が付いていない学生がいるのは残念。研究会はその仕掛けを気付かせるためにある。SFCの良い所に気付いて、社会で生きる力を身につけて欲しい」と語った。

小林研2


 小林教授は今期までの在籍予定であり、講義を受けることはもうできないかもしれない。しかし、小林教授の言う「社会を生き抜く力」を身に付けることを考え直してほしい。