1日(木)、慶應義塾大学から慶應の水が発売された。衝撃的なネーミングだ。慶應の水、これはどんな水なのだろうか? 実際に飲み、発売に関わった玉村雅敏研究会の学生にインタビューを行った。


 早速、慶應の水を販売している、レディーバードカフェへ向かった。呼び鈴を鳴らし、出てきた店員さんに「慶應の水をください」と言うと、よく冷えた噂の「慶應の水」が出てきた。

 深い青に1本の赤線、おなじみの三色旗を模したラベルの中央に、慶應の代名詞であるペンの校章がプリントされており、その下に「Keio University」と書いてある。まさしく、慶應の水と呼ぶにふさわしいデザインだ。価格は100円だ。


慶應の水(1)





 飲んでみると、給水機の水と違い、鉄臭さなどの雑味が無く、水本来の味が楽しめる。夏の暑さのなか、のどを鳴らしながら、ごくごくと飲む。とてもおいしい。



 おいしいのもそのはずで、富士吉田市の地下水なのだ。富士といえば、多くのミネラルウォーター製造企業が生産拠点を置く、水の名産地だ。富士吉田市は、慶應義塾と連携協定を結んでおり、さまざまな研究室がこの富士吉田市で活動をしている。その中の一つである玉村雅敏研究会が中心となり、企画されたのがこの慶應の水なのだ。



 SFC CLIP編集部は玉村雅敏研究会に所属する、木勢翔太さん(総3)にインタビューを行った。


なぜ「水」を発売しようと考えたのですか?





 富士吉田市には、古くから富士山の湧き水が湧き出るところが多数あり、清めの水としてその存在は大切にされてきました。また、現在でも、多くのミネラルウォーター製造企業が生産拠点をおいていることから、水質やその美味しさは折り紙つきでした。私たちと一緒に活動している鹿園直建名誉教授(元理工学部教授)による地下水の水質や年代等に関する調査研究によると、「慶應の水」で用いている地下水は平均標高約2000mから富士山に浸み込み、約30年を経て、富士山北麓の富士吉田市に湧出してきた水であり、富士山の恵みそのものだったからです。


慶應の水(3)




「慶應の水」という名前をつけたのはどうしてですか?





 この企画は塾生や塾員が購入した"水"の一部が、塾生の学びや研究実践活動への支援や、富士吉田で地域づくりに奮闘する人たちへの支援につながる仕組みづくり(コーズ・リレイテッド・マーケティング)となっています。そのためにも塾生や塾員の皆さんにも馴染みやすくわかりやすい名称として「慶應の水」と名付けました。

 実際に売り上げの一部は、塾生の奨学資金に充てられるほか、「富士吉田みんなの貯金箱財団」(後述)を通じて、地域活性化や富士山麓の環境保全活動に活用されるものとなります。


慶應の水は、富士吉田市の地域活性化にはどのように貢献しますか?





 富士吉田市では、塾生の研究成果からの提案がきっかけとなり、市民が中心となり、地域の諸団体・組織が連携して、8月8日に「一般財団法人富士吉田みんなの貯金箱財団」が正式に登記されました。この財団は、貯金箱にお金を少しずつ貯めて活かしていくように「みんなで貯めて、みんなで進める地域活動を支援する」ことを趣旨とする市民財団です。ミネラルウォーターをボトリングしている会社から、「慶應の水」の売り上げの一部が「富士吉田みんなの貯金箱財団」に寄付され、地域の皆さんが進める地域活動を支援することにも繋がります。


慶應の水(2)




発売してみて、反応はどのようなものでしたか?





 プレスリリースが出されたすぐ後に、慶應義塾大学のオープンキャンパスにて、受験生やその保護者の方などに無料配布をしました。私も配布することをお手伝いしましたが、「慶應の水」への反応はとても良いものでした。芝共立、信濃町のオープンキャンパス、三田や日吉での模擬講義でも参加者から大変好評だったと聞いています。

 また、8月1日から慶應義塾公式グッズのウェブサイトからも購入できるようになりましたが、早速、塾員の方々をはじめ全国の多くの方から注文をいただいているそうです。三田、日吉、大阪シティキャンパスの窓口にも多くの方が買いにきているということでした。


今後、水以外の商品を富士吉田市と連携して送り出す予定はありますか?





 私たちは水の潜在力に着目しているので、まずは「慶應の水」の普及に努めたいと思っています。

 ちなみに、今回は「慶應の水」として、慶應義塾の公式グッズができましたが、最初に提案したときには、目的に応じたパッケージングのアイデアもありました。例えば、慶早戦のときに塾生と塾員のつながりを深めるためのツールとして水を販売し、売上の一部を塾生の福利厚生のための基金化することなどがありました。まだ具体化していませんが、こういった様々なテーマでの工夫もできると良いなと思います。



 近年、地域と大学の関わり方が注目されている。富士吉田市と慶應義塾の意欲的な試みに期待したい。