1日(火)、公益財団法人日本デザイン振興会主催の2013年度グッドデザイン賞受賞作品が発表され、松原弘典研究室設計の「コンゴ民主共和国日本文化センター」が受賞し、グッドデザインベスト100に選出された。アフリカで設計されたこの建物には、どのような意味がこめられているのか。「日本人が日本の外でデザインする意味を問い直す」この建物の詳細に迫った。

Congo_1撮影:細井洋介



 この建物は、アフリカ中西部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)首都・キンシャサ市中心部にあるInstitut Supérieur Pédagogique de la Gombe(以下、ゴンベ教員大学)敷地内に建設された文化交流施設。日本国外務省のODAの援助を受けて建築されたもので、松原弘典研究室とエーエスアソシエイツの共同設計である。



 松原弘典研究室がコンゴ民主共和国での活動を開始したのは2008年。他研究会・学部、さらには他大学と連携しながら現地に私立小学校を建設・運営する「コンゴ民主共和国アカデックス小学校プロジェクト」を続け、今年で6年目を迎えた。この建物もそのプロジェクトから派生したもので、小学校と同様、現地の伝統的な材料を使い、現地の人々とともに、日本で構造設計したものを建設している。


Congo_2撮影:細井洋介



 建物は、上空から見ると一辺約19mの正方形の形をしており、それぞれ角度の異なる屋根が重なり合い連なっているのが特徴。日本で設計し構造計算した屋根構造は、建物を貫くような通し梁で支えられているが、この大きな梁が雨どいも兼ねており、雨季に大量の雨が降る現地において、効率的に雨水を排出するという重要な機能をもつ。ここで排出した雨水は効率的に集めることができ、再利用も可能だ。

 余計なものを出来る限り排したこの建物は、風雨をしのいで、快適な空間を確保するという単純なことを、電気や機械に頼らずに、必要最低限のことで実現している。

 ゴンベ教員大学ではこの建物で日本語の授業を開講しており、日本人講師も勤務している。8月には「JAPAN DAY」と称した日本・コンゴ民主共和国の交流行事も開催された。今後も文化やスポーツ活動を通じた多角的な交流に、この建物が活用されることが期待される。


Congo_3撮影:細井洋介



 かつてのザイール共和国であるこの国では、96年に最初の紛争が勃発して以来、アンゴラ共和国、ウガンダ共和国、ルワンダなどの周辺国を巻き込んだアフリカ大戦で、540万人もの死者を出した歴史がある。かつては「世界最悪の紛争地帯」と呼ばれることもあった。2003年に周辺国軍の撤退が完了し、暫定政府が設立されてからは、不安定ではあるが、平和の中にある。今まさに立ち上がろうとしているコンゴ民主共和国において、日本人がものづくりで協働していくことで、本当の意味での「国際協力」の形が見えてくるかもしれない。

 グッドデザイン賞審査委員からは、「現地の施工精度を受容し、現地の人たちを巻き込み、また自分たちでできることを一緒にやる。こうした活動そのものが、新しい建築を生み、地域に愛され、そして新しい交流を育んでいる。建築を通じてできる文化的交流の原点を見る、勇気づけられるプロジェクトである」と評価された。



 10月30日(水)から11月4日(月)まで、東京ミッドタウンで受賞展「グッドデザインエキシビジョン2013」が開催される予定だ。本年度受賞作、ベスト100として展示され、模型等も見ることができる。また、これ以外の今年度受賞作品も見ることができるので、国際協力などに興味がある人や、これからSFCでデザインを学ぼうと思っている人は、ぜひ足を運んでみてはいかがだろう。