8日(月)、実業家の堀江貴文氏が、夏野剛政策・メディア研究科特別招聘教授(以下夏野教授)による「ネットワーク産業論」のゲストスピーカーとして来校した。堀江氏の生講演を聞こうと多くの学生が集まり、Ωの大教室に立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。


 夏野教授が堀江氏を「何かをやろうとするとき、それが社会のためになっているという確信があれば、挫けずにやり遂げることができる。強い信念を持つ人」と紹介した。

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インターネットと、「面白い人」との出会い



 堀江氏は福岡県の八女市出身。進学校に通っていたが、同級生たちは常識に縛られ過ぎていて、話していても退屈だったと振り返る。もっと面白い人に出会いたいという思いを持って上京し、東京大学に進学した。しかし、そこで出会った人々もやはり常識に縛られており、肩を落とした。 
 その後、インターネットが日本でも広く使われるようになると、インターネットを通じて面白い人と出会えるようになったと、堀江氏は言う。「インターネットのお陰で、自分の才能を活かし、面白い人と面白い事ことを出来るようになった」と語る姿はどこか懐かしげだ。「今では当時より、インターネットはずっと速くなったし、PCも安くなった。ぜひ恵まれた環境を利用して、世の中を面白くて、ワクワクするものに変えていって欲しい」と語った。

ノウハウも人材も、インターネットで集める時代へ



 その後、自らの事業を引き合いに、インターネットの普及により可能になったことについて、更に説明を加えた。
 堀江氏は以前より、低価格で飛ばすことのできるロケットの開発を行っており、その活動は試行錯誤の連続だという。
  例えば当時、沸点がとても低い燃料をタンクに注入する方法は、あまりにも基本的なことだった。そのため、過去の成功や失敗が記録として残されていなかった。インターネットの普及により、今までは残されてこなかったこうしたノウハウが保存されやすくなるだろうと、堀江氏は期待を込めて語る。
 また、人材集めのために、最近ではよくソーシャルメディアを用いるそうだ。「ソーシャルメディアを通じて僕らが開いているイベントを知り、ロケットに知識と関心を持つ人たちが集まるようになった。このようにバラバラに活動している人を集めることは、インターネットが無い時代ではとても難しかった」と語った。
 

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世の中を変える可能性があるものはいっぱいある



 「スマートフォンの登場で、世界は変わったと思う」と堀江氏は熱く語る。スマートフォン以外にも、世の中を変える可能性を秘めるものは無数にあり、それを実現するための仕組みも整い始めている。パソコンもネットも安くなっているし、人材もソーシャルメディアを駆使することで集められる。また、クラウドファンディングが一般化し、資金調達も以前より容易になった。
 「こういう仕組みを利用したイノベーションは現在たくさん起こっている。次に世の中を変えるようなイノベーションを起こすのは、あなた方だと思っている」と堀江氏は講演を締めくくった。

 講演後のセッションでは、学生からこれまでの話を聞いて思いついたアイディアや、どうしても堀江氏に聞きたい質問などを募った。自分のアイディアを披露し、それを実現する方法について堀江氏と議論する。学生の顔は、皆一様に楽しげだった。
 

ホリエモン質問者


学生: ラップトップを持ち歩くのは面倒なので、サイコロみたいな小さなものから、画面やキーボードをプロジェクターみたいに映して、操作できたら便利だと思うのですが


堀江氏: そういうデバイスの新しい形を模索する流れがあって、それに近い発想だと思う。いま「グーグルグラス」や「iwatch」が開発されているが、そこでネックになっているのが、電池とユーザーインターフェースの問題。電池に関しては、磁気共鳴や電波を使った、充電器と離れていても充電が行うことができる技術が開発されている。ユーザーインターフェースについては、まだまだ改善の余地があると思う。決定的なユーザーインターフェースというものをつくり出すことが出来ればかなり面白い。

学生: 堀江さんはさまざまな分野の知識を持っていらっしゃいますよね、自分の専門領域でない知識を集めるために、気をつけていることはありますか


堀江氏: 情報のインプット量はかなり多いと思う。Twitterは常にチェックしているし、様々なニュースサイトを巡ったり、Facebookやメールマガジンも読んでいる。また、夕食はいつも誰かと一緒に食べるようにしている。そのほうが楽しいし、人から直接伝わってくる情報というのは面白い。例えば、夏野さんとワインを飲んでいると、面白いことが一晩で2,3個は聞けるし、そのなかの1つは実際にビジネスにできるほど。対面でのコミュニケーションでは、ツイッターやFacebookには書かないようなことが聞けるんです。

 堀江氏は講演の中で、「面白い」という気持ちを大切にすること、それを軸に社会を良い方向に変えていくことの重要性を何度も強調していた。彼の明確な信念は、学生達にしっかりと伝わっただろう。