ORF2014メインイベントの幕開けを飾るセッションは「オープニングトーク―大学は世界の新しい姿を描けるか?」。21日(金)、今年のORFテーマである「PROTO-UNIVERSITY」に込めた思いや大学のあるべき姿について、ORF実行委員会の教員らによりあらゆる議論がなされた。
■パネリスト
脇田玲 環境情報学部教授
中澤仁 環境情報学部准教授
水野大二郎 環境情報学部専任講師
 

テーマ「PROTO-UNIVERSITY」―原始に戻って考え直す

“PROTO”は、Prototypeなどの言葉でよく使われるように、物事が最適化する前の未分化の状態、つまり原始の状態を指す。現在の大学像があって、これからどうしていくのか、ではなく、原始(PROTO)に戻って、大学のあるべき姿を考えるというわけだ。「一度“退化”したゼロの視点から未来を考えた方が選択肢が広がるし、おもしろい」という考えが壇上で語られた。
 

「大学のあり方」とは何か―変わる社会 問われる大学の意義

最近、大学というもののあり方が問題視されている。わざわざ高い学費を払わずとも、インターネット上のサービスを利用すれば、スタンフォード大学やハーバード大学の授業を擬似的に受けることができる。何かモノを作りたい、研究したいのであれば、アイデアを武器にクラウドファンディングでお金を集め、実現することで、社会に大きなインパクトを与えることも不可能ではない。このような時代に、わざわざレガシィ(過去からの遺物)な大学を維持する意味がどこまであるのだろうか。

散財するアイデア、しかし人は大学にこそ集まる

水野専任講師は、ニコニコ生放送で投稿された「多くの友人こそが一番の宝になる」というコメントに対して、「一理ある」と反応した。先生とは、所詮“都合の良い事”を言う人。仲間と切磋琢磨し、共同でプロジェクトを立ち上げたり、研究したり、異分野と交流をしたり、そのような場を「提案する」ことは簡単だ。しかし、大学の外では簡単に人は集まらない。そういう意味で大学は都合よく集まるのではないだろうか。

水野専任講師は、人の集まる場所としての大学を強調した。

新しい知識は大学から生まれ、社会を変えていく

中澤准教授は、デジタル上のツールは使わないという古典的・保守的な考え方を持つ。既に確立された蓄積可能な理論はすべて保存し、それは後からいつでも振り返れば良い。大学は研究の方に重きがあって、大学が存在しない限り新しい知識が生まれてこない。大学が存在してはじめて世の中が徐々に変わっていく。これが重要であるという考えを示した。

中澤准教授は、大学があってこそ、社会が変わっていくと語った。

大学は“無駄な知”を創造する場

ORF実行委員長の脇田教授は、本当に世の中にインパクトを与える研究は、大学ではなく企業がやっていると切り出す。大学では新しい知というものをもっと細かく分けて考える必要がある。大学が生み出す知、それは語弊を恐れずに言えば、“無駄”なことだ。そのような金銭に換算しにくい、つまり社会に直接インパクトを与えにくいところを、大学は受け持つべきであると主張した。

思考停止人間を生み出す学校は廃止すべき!? 大胆発言も

学校という制度を廃止した方が良いという大胆な発言も見受けられた。学校があるから、みんな規則を守らなければならない。これをやってはいけない、という既成概念が生まれる。そういった環境により、思考停止状態に近い人間を生み出しているものが学校というシステムなのだ。一方、大学というものは、その学校で思考が固まった人間を、自由な場所で少し黙想させ、思考をほぐした上で社会に送り出している。そもそも、そのような凝り固まった人間を作り出すのであれば、学校は必要ないのではないか、という意見を述べた。

脇田教授は、大学の役割に鋭く切り込んだ。

「大学」を自分ごととして考えよう! それがORF2014

「取り留めのない話をしてしまったが、今日はあえて皆さんを扇動したいと思い、いろいろな話をしました」と脇田教授は議論を振り返る。「敵意があるとかイデオロギーの話ではなく、皆さんに考えていただきたい。他人ごとではなく、自分のこととして考えるのが一番大事。これで大学というものを、社会がどう捉えて、どう伸ばしていくのか、はたまた潰していくのか、わからない。しかし、それを全員で考えるということが、今年のORFのテーマだということを共有していただければなと思う」とオープニングトークを締め括った。