ORF2014メインイベントの前日20日(木)の夜、六本木のイベントスペースSuperDeluxeで「LIVE」が開催された。今年のORFから新たに加わったサテライトイベントのひとつであり、ORF実行委員会が前夜祭として企画した。

研究発表の場にアイドルが登場!? PIPパフォーマンス

ライブ会場に最初に姿を現したのは、SFC卒業生である濱野智史氏(政・メ05卒)だ。続いて、濱野氏がプロデュースするアイドルグループ「PIP」が登場すると、会場は瞬く間に熱気に包まれた。「PIP」は「プラトニックス・アイドル・プラットフォーム」の略で、コンセプトは「アイドルをつくるアイドル」。
 楽曲はAKB48のカバーだけでなく、最近発表されたオリジナル曲も披露した。目の前で全力のパフォーマンスをする姿に、来場者は手拍子を打って応え、大盛況であった。

PIPのライブパフォーマンス

アイドルにJK課にグラビア… 異端者を生むSFC

続いて、2つ目のコンテンツであるトークセッションへ。登壇者は以下の通り。

■登壇者
牧野百男(福井県鯖江市市長)
脊山麻理子(環04卒、フリーアナウンサー)
濱野智史(政・メ05卒、PIP総合プロデューサー)
熊坂賢次(環境情報学部教授)
若新雄純(政策・メディア研究科特任助教)

大人の常識を変える―完成形ではなく過程を楽しむ時代になった

トークセッションは、PIPのパフォーマンスの講評から始まった。脊山氏は、「完成されたものを目指して育った世代にとって、AKBやPIPのようにアイドルが成長していく過程を見ることを楽しみ、未熟がかわいいと思える時代になった。これはおもしろい」と語った。
 鯖江市役所JK課(4月設立)をプロデュースした若新氏は、素人のまま町づくりに取り組ませることの魅力に言及した。行政に無関心な女子高生を参加させることによって、常識を破り、新しい住民参加のあり方を追求することがこのプロジェクトの目的だ。牧野市長は、「大人の常識を変えなければ、行政も変わらない」と強調した。
 実は、鯖江市役所JK課の設立の話を受けた翌月には試みがスタートした。「議会や教育委員会から猛反発を受けたが、判子を押してよかった」と牧野市長が振り返ると、「ふつう市長は止める側だよね」との熊坂教授の言葉に笑いが巻き起こった。何が牧野市長に決断をさせたのか問われると、「地方の危機感。人口7万人の鯖江市では、高校を卒業するとほとんどが都市に移動してしまう。なかでも戻ってきてくれる女性は15%以下。そんな危機を抱える地方から変革を起こしたかった」と牧野市長は力強く答えた。

脊山氏は、大学卒業後にアナウンサーとして入社した日本テレビを退社し、2010年よりフリーに転身した。今年5月に34歳で水着グラビア写真集を発売し、世間の注目を浴びた。「女子アナがグラビアに挑戦することにメッセージ性がある」と脊山氏が語ると、「新しい価値観の創出。鯖江市役所JK課も前例がないからおもしろい」と若新氏も続いた。熊坂教授は、「単発で終わらせたら意味がない。継続しないと新しい価値観は定着しない」と加えた。

「変革を起こすのならば、まず活動の土壌となるプラットフォームを作ることが必要だ。そして、価値観や常識を積極的に壊していこう!」と熊坂教授は締めくくった。

左から若新氏、牧野市長、脊山氏、熊坂教授、濱野氏

画像が音に!? サイバーサウンドプロジェクトによる生演奏

最後は、岩竹教授率いる「サイバーサウンドプロジェクト」による音楽の新しい姿の実演だ。画像を音に変換する装置や、演奏者同士の音を結びつける装置など、プロジェクトに所属する大学院生やクリエーターが開発した作品の実演が順番に行われた。前半2つの特異なコンテンツで一気に会場は静まりかえる。来場者は見慣れない装置に目を凝らし、集中して演奏を聴いていた。最先端分野の音楽の研究と創作が感じられる発表であった。

映し出された画像が音に変換され、会場を奮わせる。

「LIVE」こそ新しいORFの挑戦

パフォーマンス、トークセッション、研究発表が渾然一体となったこの企画は、多様性と多次元性を研究発表に組み入れるという、今年のORF実行委員会の挑戦から生まれた。アイドル、市長、研究者、アナウンサーといった多彩なゲストが交わり、新たな発表の場を作り出す。サテライトイベント「LIVE」は、SFCならではの多様性が表現された舞台となった。