まずは、SFCの「数学」の授業にあたるデータサイエンス(以下、DS)科目についてのアンケート結果をまとめる。
 14学則においてDS科目を履修するためには、まず「DS認定試験」に合格する必要がある。認定試験に合格すれば「DS1」が履修でき、「DS1」を2単位以上修得すると「DS2」を履修できるようになる。しかし「DS認定試験」をパス出来なかった場合は、4単位の自由科目「DS基礎」を履修する必要がある。

DS基礎 半数が「役に立たない」!?

「DS基礎を受けた・受けている方にお聞きします。DS基礎の授業は自分の数学力向上に役立ったと思いますか? そう思った理由も教えてください。」と質問した結果、3%が「役立った」、16%が「やや役立った」、8%が「やや役立たなかった」、45%が「役立たなかった」と回答した。また、28%は「データサイエンス基礎を履修したことはない」との回答だった。

よせられた意見(抜粋)

Good

  • 数学が好きではないので、必修でなかったらきっととらなかったし、その上で今後研究などに役に立つ(データを扱う際に)と思うから。
  • 高校で止めていた数学をまた勉強しなくてはいけない状況に自分が追い込まれたという意味では、自分の数学力の向上に繋がった。ただし、自分はもともとは数学を勉強する気はなく、したくない分野の勉強を無理やりさせられたという印象をうけた。
  • 基本的な数学の考え方や解き方を確認できたから。ただし、高度な問題を解くまでの知識を得ることはできなかった。

Bad

  • 学生と教授やSAとの距離が余りにも遠いため、学生たちは授業の内容を理解できていないことすら伝えられず、教授と学生の間に温度差があったため全く役に立たなかった。
  • データサイエンス基礎を履修する学生は基本的に数学が苦手な学生であるはずなのに、θ館で大人数で数学を学ぶのは無理があると思う。
  • そもそも数学を高校時代まともにやっていない人が集まっているのに、一方的に理論だけ言われて演習がほとんどなかった。出席もない上に、出たところで教えている内容は基礎的なことを高校の教科書以上に分かりづらく解説することだったので、数学のできる友人から教えてもらったり自力で勉強するほうがよっぽど役にたった。

編集部によるまとめ

数学に触れるチャンスとして前向きに受け止め、認定試験をパスした生徒も一定数いるようだ。だがその一方で、「データサイエンス基礎」という授業そのものに対しては、複数の批判が向けられている。「データサイエンス基礎を受講したから認定試験をパスできた」という生徒はどれだけいるのだろうか。

「適切」が多いものの賛否両論 DS1からDS2への流れ

「14学則ではDS1の単位を取得しないとDS2を取ることはできません。この制度を適切だと思いますか?そう思った理由もお答えください。」という質問に対しては、23%が「適切だとおもう」、19%が「やや適切だと思う」、19%が「やや不適切だと思う」と回答。「不適切だと思う」との回答は37%、残り2%は、「(DS1とDS2を)ともに履修したことはない」と回答した。

よせられた意見(抜粋)

Good

  • 数学の基礎ができていないのに,さらにその上の数学を学んだり実世界に応用しようとしたりしても無理があるから。授業についていけてない人が多数出ると教員としても授業のレベルを下げざるを得なくなり,ハイレベルな授業が受けられなくなってしまうとかんがえる。
  • データサイエンス2の授業はかなり難しく、前提知識も多く必要なので1をやっておく必要がある。
  • 数学が苦手な人にとって、両方履修して両方完璧にするのは難しいと思います。もちろん他にも勉強しなきゃいけないことが沢山あるわけですから、学生に無理をさせないためにも、学習効率を上げるためにも、システム的に制限するのは良いと思います。

Bad

  • データサイエンス2のいずれかを履修するにあたり、その科目の前提知識にあたるようなデータサイエンス1の科目を必須とするならば適切だと考えられるが、そうではなくデータサイエンス1ならなんでもいい、という現状の扱いには疑問があるため、他科目と同様に前提科目の設定を各担当教員に委ねる形が適切ではないかと思う。
  • この制度は悪くはないが、2年までにDS2を履修できなければ3年に上がれないというのは、期間が短すぎると思う。
  • 自分は春の間に1も2も取りたかったのだが、それが不可能だった。両方ともに受けてみた結果、このハードルを設けなくとも特に問題は無いと思った。

編集部によるまとめ

全体としては若干現状のシステムを不適切として否定する声のほうが大きいようだった。数学が得意な人が「飛び級」できる制度を望む意見も多い。また、DS1とDS2の関連性の無さや、進級条件として単位取得するまでの期間の短さなど、単なる内容の難しさではないポイントを指摘するものもある。一方で、DS1とDS2の履修の順番を完全に自由にすることに対しては、授業レベルの低下を憂慮する声などが上がった。いずれにせよ、まだまだ議論の余地がある仕組みだと言えるだろう。

データサイエンス科目について その他の意見

  • 確かに現代の社会問題を解決するというSFCのビジョン・ミッションから考えれば、ある程度の数学力はその手の研究に関わる上で必要だとは思うが、数2Bレベルの数学すら身についていない人間に数3Cあるいはそれ以上の内容ができるわけがない。
  • SFCはその多様性から、様々な境遇の人がいる。つまり、数学を学ばずにきた人もいる。他の科目で単位を取っている場合でも数学ができないために留年しなければならないというシステムには疑問を感じる。
  • 線形代数を受講したが、SFCの中で数学自体触れなくなってしまったので、学習意欲が湧かず、プリントの解法を覚えるような理解をしてしまった。とどのつまり、数学を学ぶにせよ、SFCなのだからその応用事例を豊富に示すような授業を求めたい。教科書的な教え方は理工学部でしてください。と感じました。
  • (DS認定試験の)合格基準がよくわからない。また、私は1回目で合格したからいいが、後になればなるほど難しくなる(3Cが範囲に増える等)は合理的ではないと思う。
  • 基礎程度の数学知識くらいはつけて大学に入るべきだと思うので、データサイエンス科目を設立するというよりはSFCの入試自体に数学を導入すべきだと思う。
  • 受験時に数学をやっていない人であっても、DS認定試験に合格するくらいの数学力は持っておくべきだと思う。また、合格することで数学や数字への抵抗をなくしてから大学で興味分野について学ぶべきだと思う。就活時に数学のテストがあり苦労している先輩もいたので数学を身につけていることは必ずためになると考える。

編集部によるまとめ

DS基礎に対する批判を始めデータサイエンス科目全体に対し多くの意見が集まった。ここまで高いレベルの数学は必要無いという意見も多く、必修化の是非を問うものもあった。一方で数学の基礎知識は必要だ、入試で必須科目にすべきだという声も存在し、必要性については意見が分かれている。また、端的にDS1の授業内容のレベルの低さを指摘する声もあり、授業としての質の向上も求められているようだ。データサイエンスについては「学生全体に対するシステム」と、「個々の授業」、両方の質の改善が望まれているのではないかと考えられる。

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