今回はSFCから遠く離れた慶應義塾大学病院で学ぶ看護医療学部3年生の学生生活をお伝えする。1、2年生と異なり大学病院での本格的な実習が授業に組み込まれ、塾内でも屈指の多忙さを誇る。あまりの忙しさに「高校時代からずっと付き合っていた彼氏と急に疎遠になってしまい、別れてしまった」というほどだ。SFC CLIP編集部は聞き取り調査をもとに知られざる看護医療学部上級生の実態を解き明かした。

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藤沢から信濃町へ 看護医療学部生の大移動

藤沢の僻地から都心のまちなかへ

湘南藤沢キャンパス(SFC、藤沢市遠藤)で1、2年生を過ごした看護医療学部生は、3年生になると慶應義塾大学病院での実習のために都心の信濃町キャンパス(東京都新宿区)に学びの場を移す。

実はこの移動は看護医療学部生にとって非常に大きな変化だ。信濃町とSFCは50km近く離れているが、これほどのキャンパス移動をする学部はほかにない。信濃町キャンパスでは1限(9:00-)から授業が開始されることが多く、SFC周辺で一人暮らしをしていた学生の多くが都内に引越す。

キャンパスの環境も大きく変わる。まず、始業時刻がSFCの9:25から信濃町キャンパスの9:00へと25分早くなる。(SFCは遠方通学者に配慮して25分遅れている) また、SFCが最寄りの湘南台駅から4kmも遠く離れているのに対し、信濃町キャンパスはJR信濃町駅から徒歩1分。信濃町駅を出たら目の前にある。また、都営大江戸線の国立競技場駅からも徒歩5分というアクセスの良さだ。バスを使わなければいけないSFCに対して、駅から近い信濃町キャンパスは「通学時間が読みやすい」(看3)という声もある。

信濃町駅を出たらすぐそこにキャンパス。 信濃町駅を出たらすぐそこにキャンパス。

「居心地の良さはSFCの看護棟が一番」

信濃町キャンパスでは看護医療学部生は「孝養舎」(こうようしゃ)と呼ばれる校舎で学ぶ。孝養舎はMR棟や本館臨床講堂、内分泌検査棟に囲まれた小さな白い建物であり、周囲に自然があふれ、広々としたSFCの看護医療学部校舎(看護棟)とは対照的な校舎だ。また、信濃町キャンパスでは、学期末試験も含め実習ではない授業は202教室や405教室と呼ばれるごく限られた教室のみを使う。さらにこの校舎は看護医療学部専用の建物ではなく、ロッカーも医学部学生と共用だ。

看護医療学部3年生が学ぶ孝養舎 看護医療学部3年生が学ぶ孝養舎

孝養舎は1988年開校の慶應義塾看護短期大学時代から使われている建物であるため、2001年から使用されているSFCの看護棟に比べて建物の老朽化が進んでいる。SFCに比べて建物の設備で劣る点は否めない。

「信濃町ではなんとなくキャンパスの一室を借りている感覚で、やっぱりSFCが私たちのホームなんだと思った」と調査に答えた4年生もいた。信濃町キャンパスにはSFCで看護医療学部生を見守るような警備員がいないという点を指摘する学生もいる。看護医療学部生にとって、居心地の良さや安心感はSFCの看護棟が一番ということだろう。

赤丸をしている建物が孝養舎。大病院のなかにひっそりとある。 赤丸をしている建物が孝養舎。大病院のなかにひっそりとある。

春学期 必修だけで約250コマ

彼氏と別れるほど忙しい日々

続いて、看護医療学部3年生のカリキュラムや時間割をみていこう。毎日が1限スタートとなり、空きコマもなくなる。春学期の場合、必修だけで250コマ近くある。なお、4年春学期では、実習科目との兼ね合いで、4年生のみが履修できる選択科目と体育(SFC)以外の選択科目を履修することができない。そのため、3年秋学期までに、必修科目だけではなく卒業に必要な選択科目をすべて履修し終えることが求められる。「あまりに忙しく高校からの彼氏と疎遠になって別れてしまった」という話もあるほどだ。

このように、3年生は講義や演習、実習がしっかり詰まっており、厳しいスケジュールをこなすことになる。ちなみに、他学部のように週ごとに時間割が固定されているわけではない。それぞれの実習は特定期間に集中して行われるので、授業の時間割は変則的だ。課題をこなすのが精一杯で、睡眠時間の確保が難しいと感じる学生も多い。

より専門、高度な学びへ 1限から生々しい手術映像

3年生になると、概論の多い1、2年生と異なり、今までよりもさらに細かい病態にせまる授業が行われるようになる。例えば、急性期病態学の授業では担当の専門医から身体の各部分についてより深い講義を受ける。1限から腹部を切っている手術の映像を見ることもあり、精神的にもなかなかハードな授業だ。

また、個別の内容が専門的かつ高度である上に学習分野が多岐にわたるため、試験範囲が非常に広くなる。テストでは「次の記号のうち、合っているものをすべて選べ」といった複数選択の正誤問題をはじめ、非常に難解で処理が複雑なものが出題されることもある。

進路の分かれ目の3年生

こうして忙しい日々をどうにか乗り越え、3年生の必修科目をすべて取得すれば、無事に4年へ進級となる。3年秋学期に翌年度の保健師と助産師になるためのコースの募集が始まる。保健師や助産師コースを選択するには1、2年次に指定された科目を履修し、単位を取得する必要がある。それだけではなく、3年秋学期末の成績や論文、面接による選抜の突破も求められる。

こうして各コースを選択し、定められた科目を履修すれば、保健師、助産師の国家試験受験資格が得られるわけだ。しかし、そのコースに入るための選抜も難関であり、決して平坦な道ではない。3年生は進路選択の分かれ目でもあるのだ。

多くの卒業生がもう一度この大学病院に戻る。 多くの卒業生がもう一度この大学病院に戻る。

とてつもなく忙しい3年生の大変さがおわかりいただけただろうか。しかし、看護医療学部の4年生は3年生よりもさらに忙しいといわれている。そんな4年生の実態も次回以降お伝えする。

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