めざせ "S" 2017年度より成績5段階化実施―新入生にはGPAを正式導入
慶應義塾大学は2017年度春学期以降、成績評価を現在の4段階から5段階へと変更する。これは2016年9月、春学期の学業成績表が送付された際に在学生向けに告知されたものだ。これに加えて2017年度以降の新入生については、不合格科目を含む全成績とそれを点数化したGPAが成績証明書に記載されるようになる。
来年度から実施されるこれらの変更について、SFC CLIP編集部は大学に取材した。
在学生も5段階化 相対評価も変更検討中
今回の成績評価の5段階化は、いくつかの研究科を除いて全学部・全研究科で統一的に行われる。現在「A, B, Cを合格、Dを不合格」とする4段階で成績評価が行われている学部・研究科では、2017年度春学期以降「S, A, B, Cを合格、Dを不合格」とする5段階へと変更される。C以上を合格とする点は現在と変わらない。SFC設置科目を含め、現在4段階評価の科目は、原則すべて5段階評価に移行する。ただし、現在「【14】データサイエンス基礎/【07】数学基礎」「囲碁」などが対象になっている、合否(P/F)のみの科目はそのまま残る見込みだ。
2016年度秋学期までに入学した在学生についても、来年度以降履修する科目については5段階で成績が付与される。これには07学則の学生も含まれる。なお担当者によれば、5段階評語が "ABCD/F" ではなく、 "SABC/D" となったのは、今年度までに入学した学生が見た時「C以上で単位修得」であることが分かりやすいよう配慮したためだという。
また現在、総・環両学部設置科目については、評語Aを上位20%程度とする相対評価が行われている。これについても何らかの形で変更が予定されており、詳細は今後発表されるという。
新入生にはGPAを正式導入―グローバル化への対応
来年度以降履修した科目について成績の5段階化が行われる点は、在学生と新入生で共通だが、異なる点もある。成績を点数化したGPAと、不合格となった科目について、対外的な成績証明書でどう扱われるか、についてだ。
GPAで世界の大学と同じ枠組みを
GPA(Grade Point Average)とは、学業成績を点数化する枠組みをいう。成績評語について "S: 4.0, A: 3.0, B: 2.0, C: 1.0, D: 0.0" のように対応する点数へと置き換えたうえで、計算の対象となる履修科目それぞれについて、「単位数」と成績評語に対応した「点数」を乗じる。この点数の合計を、総単位数で割ることで求められる。1単位あたりの成績の平均が算出できることから、この名称がある。海外の大学ではすでに広く用いられており、国内でも普及しつつある制度のひとつだ。
これまでのSFCにおいても、例えば3.5年早期卒業制度では成績が一定以上であることが要件になっており、ABCDの4段階の学業成績を 0.0 – 3.0 のあいだで点数化していた。しかしこれは成績証明書などには記載されず、対外的には用いられてこなかった。2017年度以降の新入生については、SABCDの5段階評価に基づいた学業成績を 0.0 – 4.0 のあいだで点数化し、これをGPAとして成績証明書に記載するように変更される。
担当者は、「在学生の海外留学、あるいは慶應への留学生の受け入れを促進していくうえで、大学の制度をグローバルスタンダードに対応させていくことは重要」と述べ、GPAの導入が慶應のグローバル化への取り組みの一環であることを明かす。また、世界の大学と同じ基準でGPAを算出できるように、成績評語についても、制度的に主流の5段階へと変更することになったとのことだ。
新入生はGPAおよび不合格科目も成績証明書に記載
これに合わせて、新入生の成績証明書には、5段階評価で不合格となった科目も記載されるようになる。Dとなった科目についてもGPAの算出に用いられるためだ。またGPAには影響しないが、P/F科目でFとなった科目も同様に記載される。新入生は、履修すると決めた科目については、単位修得に励むことが求められる一方、履修しないと決めた科目は履修登録取消期間*に確実に手続きを行うことが必要になる。
一方、在学生は、GPAが成績証明書に記載されない点が新入生とは異なる。また、来年度以降履修し不合格(DまたはF)となった科目についても、成績証明書には記載されない。
各種プログラムにおける成績計算方法は別途公開予定
2016年以前に入学した学生は、これまでの4段階評価と、新しい5段階評価の科目が単位修得履歴に混在することになる。「学部・大学院修士4年一貫教育プログラム」や「3.5年早期卒業制度」の成績の計算方法も変更になるため、今後新しい計算方法が公開される予定だ。
全学部・全研究科で履修登録取消制度が導入
GPAの正式導入に合わせて、これまで一部の学部・研究科のみにあった履修登録取消制度が、全学部・研究科で開始される。現在、SFCの学部生・大学院生は、自学部・自研究科科目について履修を取消することができるが、今回の変更に合わせて、他学部・他研究科の科目についても履修を取消することができるようになる。 (ただし、学部・研究科ごとに取消できない科目が設定される可能性があるので、SFCガイドやWebサイト等の注意をよく確認することが必要だ。)
詳細は "SFC GUIDE 2017" に掲載予定
慶應は、2011年度からSFCで英語による学部教育プログラム「GIGAプログラム」が、2016年度秋学期からは経済学部に「PEARL」が新設されるなど、グローバル化への対応をすすめている。5段階化とGPAの導入はその流れのひとつに位置づけられる。
成績に関する在学生と来年度以降の新入生の対応表
2016年度以前入学者 (在学生) |
2017年度以降入学者 (新入生) |
||
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2016年度以前の履修科目 | 4段階 | – | |
2017年度以降の履修科目 | 5段階 | ||
成績表 | GPAの記載 | 記載なし | 記載あり |
不合格科目の記載 | 記載あり | 記載あり | |
成績証明書 | GPAの記載 | 記載なし | 記載あり |
不合格科目の記載 | 記載なし | 記載あり |
この記事で述べたように、在学生と新入生では、適用されるルールが異なる。例えば不合格科目について、在学生は従来どおりであるのに対し、来年度以降の新入生は成績証明書に記載され、GPAに明確に反映される。在学生は、来年度の新入生に履修や成績でアドバイスを求められることもあるかもしれないが、安易なアドバイスは避け、どのルールが適用されるかを確かめることが重要だ。
成績の5段階化に関する詳細は、2016年度秋学期の学業成績表が発送される3月10日に正式に発表されるほか、来年度の履修案内 "SFC GUIDE 2017" にも掲載される予定だ。
*2017年度から「履修申告中止」は「履修登録取消」という名称に変わる。