6日(水)、キャンパス内にてメディアや学生向けに、自動運転バスのデモ走行が行われた。実証実験では、運転手が常時席について監視しつつ、加減速やステアリングなどはシステムが行う「レベル3」での走行が行われている。SFC CLIP記者もこのバスに試乗したので、動画付きでレポートする。

小型バスの日野ポンチョをSBドライブが改造 小型バスの日野ポンチョをSBドライブが改造

センサーまみれの車両を眺める

車体のベースとなっている日野自動車のポンチョは、本来12人分の座席があり、立席を含め約20人が搭乗可能な小型バスだ。しかしこのバスに乗り込むと、機材を乗せるために多くの椅子が撤去されていた。カメラを持った取材班が7,8人ほど前方に集まったので手狭に感じたが、正しく座ればある程度ゆったりした空間ができるはずだ。

また、車体のいたるところにはLiDar、ミリ波レーダー、そしてカメラといったセンサーが取り付けられており、車内のモニターからは、これらのセンサーで人や標識などを認識していることが確認できた。LiDarとはレーザ光を照射して物体との距離を測る装置だ。歩行者、自転車、自動車といった障害物の検知はNVIDIA社が開発したシステムによるものだという。車線維持制御には、磁気マーカーや、数cm単位まで正確なRTK-GPS測量を用いている。これに加えて車内にもセンサーが設置されており、試しに車内でわざと転んでみると、走行中の乗客の歩行や転倒に対して注意を促す音声を流されてしまった。

バスの内外に多くのセンサーが付いている バスの内外に多くのセンサーが付いている

デモンストレーションの走行ルートは、θ館を出て、本館前バス停を通り、Z館を結ぶルート。θ館からΖ館までの往路は人間のドライバーが運転をし、自動運転は復路で披露された。この時はちょうど路線バスがキャンパスに到着する時刻であり、なかなかバス停が空かなかった。実際に自動運転バスが運行する際は、人間のドライバーの運転するバスと自動運転バスが混在したダイヤが出来上がるだろう。

待望のデモ走行

待望の自動運転デモンストレーションは、キャンパス内の周回道路(メビウスリング)で、Ζ館のロータリーを出たあたりから開始した。まずウィンカーを出してからゆっくりと左に幅寄せすると、湘南台駅西口行き・本館前バス停に一旦停止した。ドアの開閉後、再び走行を開始。一時停止の標識の前で止まり、そのままθ館の手前まで運行をした。時速10km前後とゆっくりではあったが、乗り心地に違和感は無く、人間のドライバーの走行と区別がつかないほどに快適だった。

バス会社としては「サービスインを100とするなら今は10か20」

設定によっては、デモ走行より速い速度で運転したり、より縁石の近くまで幅寄せできるという。その完成度の高さとは裏腹に、自動運転バスが、現在の湘南台駅とキャンパスを結ぶバスを置き換えるまでの道のりは遠いという。「車椅子のお客様の案内や、料金の支払いなど、オペレーション(運用面)での課題が多い」と、神奈川中央交通の経営企画部事業推進グループ課長の大塚英二郎氏は話す。

最終的なゴールとして見据えているのは、大型二種免許を持ったドライバーが、複数台のバスの運行を遠隔監視する「レベル4」の走行だ。SBドライブは既にこの車両で全日本空輸株式会社(ANA)とレベル4の実験を行っているが、これを従来型のバスを置き換える形で実現するまでには技術面、オペレーション、そして法律など、あらゆる分野での課題が多く残る。

遠隔操作は可能だが無人化はサービス面で不安が残る 遠隔操作は可能だが無人化はサービス面で不安が残る

このSBドライブ車両での実証実験は、慶應義塾大学の自動運転技術を活用したものではなく、実験の場所を提供した形にとどまる。10日(日)には、一般公開イベント「次世代モビリティフォーラム」が11:00よりθ館で開催される。このレポートで紹介したSBドライブの自動運転バスのほか、SFCの大前学研究会による自動運転車も加わり、試乗会も行われる予定だ。

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