8月27日から4日間、遠藤公民館で行われた夏休み学習開放で、SFC生4名が講師役を務めた。参加を呼びかけたのは遠藤隆太さん(総1)。コーカスでも関連する活動をしており、遠藤地区へ貢献したかったという。遠藤さんのほか、参加した浦野里彩さん(環1)と高木裕介さん(総1)にもお話を伺った。

教えられたことが多かった

—— この4日間の活動では、具体的にはどんなことを行っていましたか?

遠藤さん:
来てもらった子の勉強の支援です。公民館の方々の協力で、延べ35人の小中学生が来てくれました。

浦野さん:
自分一人では学習に向かう集中力がない子のために時間を計ってあげたりだとか、背中を押してあげて学習の環境づくりをしていました。

中学生に理科を教える遠藤さん 中学生に理科を教える遠藤さん

—— やってみての感想を聞かせてください。

遠藤さん:
色々教わりました。学習開放としては僕たちは座って見守るだけでもいいわけです。それでも親御さんは大事な子どもさんを預けてくださってるわけだから、何か与えてあげないとな、という気持ちはありました。

浦野さん:
人生の中の一番の基本となる時期に、ちょっとだけでも関わってしまうということは、無料の学習開放であっても大きな責任が伴うと感じました。だから気は遣うし目を配るところも多くありましたが、元気づけられたし、もらうものも多かったです。特に、みんな笑顔で帰っていってくれたりとか、親御さんたちに「ありがとう」「子どもは今まで勉強が好きじゃなかったけれど、今は自分から行きたいと言うようになりました」と言われたときにはすごく嬉しかったです。

遠藤さん:
たった数日ではありますが、子どもたちが参加したことで何か成長してくれたのは嬉しかったし、続けたいと思いましたね。

高木さん:
藤沢市を代表してやらせてもらっているし、ふつうであればもらえる教材や教え方の方針もない中で、これから成長していく小さい子どもたちに手探りで教えるのがすごく難しかったです。家庭教師のアルバイトなどでは味わえないような、教える楽しさが実感できた気がします。

僻地だからできることをしたい

—— なぜこの活動をしようと思ったのですか?

遠藤さん:
僕たちSFC生は、せっかく都心から離れた、地域に密着できるキャンパスに来ているのだから、「何かこの地域に貢献できるものがあってもいいのではないか」とずっと疑問に思っていたんです。そこで「歳の離れたお年寄りになにかするのは難しいかもしれないけれども、子どもたちに対してなにかするくらいは自分たちでもできるのではないか」と思い、その一歩としてやってみました。

浦野さん:
私はとにかくボランティアがしたくて、自分にできる活動を探しているときに、遠藤くんの活動呼びかけのツイートを見て「何かの縁かな」と感じてやってみました。

高木さん:
僕の中高の同級生で、お金がないから私立への進学を諦めるとか、塾に行けないから志望校を変えるという人が何人かいて、僕よりも能力があるかもしれないのにそういうことで諦めるのは変かなと思ったんです。だから、普段塾とかに行けないような子どもたちでも気軽に参加できるこの活動をTwitterで知って参加しました。

Twitterを見て参加した浦野さんと高木さんは小学生を教える Twitterを見て参加した浦野さんと高木さんは小学生を教える

コーカスが基盤になった

—— 遠藤さんはコーカスでも遠藤地区との関わり合いを大事にしようと訴えていましたね。

遠藤さん:
はい。個人的に、総合政策学という授業は一度きりのみのものではないと考えています。コーカスを含む、総合政策学の授業がSFCでの生活の基盤となるわけだから、その経験を一度きりで捨てずに次の自分を作っていくべきなんじゃないかと思っているんです。だから僕は自分のやりたいこととして、遠藤地区への貢献を続けています。

浦野さん:
よくTwitterなどで「結局コーカスはそのときだけで全部なくなっちゃったんだね」という意見を目にします。けれど、コーカスにちゃんとコミットしてきた人たちはその経験を基盤に物事を考えるようになっているんです。だから私は、遠藤くんのコーカスがあったからこの活動があるんだと思うし、この活動があったから私もまた教育という自分にとって新しい分野に興味を持てたんだと思います。

—— 3人は同じコーカスだったんですか?

遠藤さん:
むしろ3人とも別々のコーカスでしたよ(笑)。でもそういうことがあってもいいのがSFCだと思います。

高木さん:
僕のコーカスの場合、コーカスが始まるときにあれだけ熱く自分の思いを語っていた仲間たちがだんだん来なくなっていって、結局はお開きみたいな形になってしまいました。そんなことがあって僕は不完全燃焼で、だからこそコーカスの時からずっと熱意を持っている遠藤くんの活動に参加させてもらいました。

コーカスから今までを振り返る3人 コーカスから今までを振り返る3人

なにか一歩自分にできることを

—— 来年以降もこの活動を続ける予定はありますか?

遠藤さん:
はい。できれば来年も続けたいと思います。もっと言えば、夏休みにこだわらず定期的に開催したいです。

浦野さん:
継続的に活動しないとあまり意味はないし、それが大学生として地域を支える上で重要だと思っています。

遠藤さん:
今回は行政の方を交えて、遠藤地区と大学の間での一本の橋渡しをすることができたと思います。また、私たち以外にも研究会等で遠藤地区と関わりを持とうとしている人たちがいるのであれば、一緒にコネクトできるものはコネクトし、どんどん橋の本数を増やし、その関係を強固にしていきたいと考えています。

—— SFC生に伝えたいことはありますか?

遠藤さん:
みんな「SFCは僻地だ」って言うけれど、僻地だからこそできることがあるんじゃないかと私は思います。昨今、巷では「地方創生」というワードが叫ばれていますが、遠藤地区だって見方を変えれば一つの地方です。SFC生の力を集めれば、「この街を僻地というマイナスイメージではなく、地方創生の最先端を行く街に変化させること」だってそう難しくはないと思います。

高木さん:
SFCには能力があってもくすぶっている人がいると思うんです。僕もくすぶっていた熱意をこの活動で引き出すことができました。だから、ここでの活動以外でもそのくすぶりを引き出せる活動があれば、SFCもいい雰囲気になっていくのではないかと思います。

浦野さん:
私はもともと教育には興味がなかったんですが、ただ何かボランティア活動がしたくて、ただ子どもが好きで加わったこの活動で、私の中の「教育」という分野が花開いたと感じています。だから、興味がないことでも「ただ○○だから」っていうそれだけの理由で一歩踏み出してみると、自分の中で何かが花開くんじゃないかと思います。