2021年11月22日、七夕祭実行委員会と秋祭実行委員会が合併するという衝撃的な発表が、両会の代表と塾生代表から行われた。今回、両委員長と塾生代表、そして新しい湘南学祭実行委員会の代表の4人に、それぞれの立場から合併に対する思いを伺った。

SFCの祭り2つが統合する形に

SFCには、1990年にSFCが開設された当初から続く、7月開催の「七夕祭」と、1992年から続く10月頃の「秋祭」という2つの祭りがあり、それぞれ毎年開催されている。今回、この2つの祭りが合併されるという衝撃的なニュースが旧七夕祭実行委員会・旧秋祭実行委員会と塾生代表から連名で発表された。

祭りの統合を知らせる文書 祭りの統合を知らせる文書

今回、旧七夕祭実行委員会代表の七条祐香さん(環3)、旧秋祭実行委員会代表の志賀祐斗さん(総2)、今回発足した湘南学園祭実行委員会で代表に就任した井藤康佑さん(環2)、そして旧七夕祭実行委員会の役員であり塾生代表の山田健太さん(総2)の4名に集まってもらい、この合併に至るまでの経緯や今後の七夕祭のありたかについてオンラインでインタビューをした。

取材に集まっていただいた皆さん 取材に集まっていただいた皆さん

それぞれの個性を持っていた2つの祭り

—— まず初めに、七夕祭と秋祭はそれぞれどのような祭りだったのか改めて教えてください。

七条: 七夕祭は「地域密着」の祭りとして、例えばステージの前にやぐらを建てて盆踊りを企画したり、藤沢三田会と協力しておみこしを出したり、地域の方も多くいらしていたのでお子さん向けの縁日企画がある点などが特徴でした。一方で秋祭は学園祭として、受験生向けの企画や研究会による発表などを行っていました。

—— それぞれの実行委員会が別組織としてあることで、実行委員内の風土や雰囲気に違いはありましたか?

志賀: メンバーの約半数が両方に所属していたこともあって、あまり組織としての色の違いはなかったかなと思います。

七条: ただ役員はそれぞれ別々の人がやっていたので、そこで少し雰囲気が変わるところがあったかもしれません。

山田: 私が感じていたのは、秋祭のほうは七夕祭が終わるまで本格的な活動が難しいため、その間にいわゆるサークル的なレクリエーションが充実していたと聞いています。

七夕祭と秋祭では資材等も共用で使用しているものが多く、このような面でも両委員会は協力しあっていた。一方で、組織としては2020年以降の旧七夕祭実行委員会には1-3年生が所属しているのに対して、旧秋祭実行委員会は1-2年生のみが参加しているという違いがあったという。

合併に至るまでの経緯 一度は断念したことも

—— 両団体の合併の具体的な話は、実際にどのように進んでいったのでしょうか。

山田: 実は以前からから組織としての合併の話自体はあったと聞いています。2020年1月に大学側からの打診もあって合併を一度検討してみないかという場が設けられましたが、それぞれの方向性の違いから当時は統合を断念しました。その後感染症の流行が拡大し、2020年は七夕祭・秋祭ともにオンライン開催となりました。

山田: 次に合併についての議論が始まったのは、2021年の夏頃でした。七夕祭が終わり秋祭に向けての準備が始まるなかで、過去2回連続で現地開催を断念してきた秋祭の知見やノウハウを引継ぐことが困難となっており、組織として弱っていることが改めて浮き彫りとなってきました。「今年は何とかなっても来年以降の秋祭は課題が多いし、七夕祭も来年以降は現地開催を経験したことのないメンバーだけで開催しないといけない」という危機感が両実行委員会と大学側の間で共有され、秋祭の準備と並行して9月末頃から議論が進められました。

山田: それぞれ合併するにあたって譲れないものはありつつも、合併することが今後のためになるという点で一致したのが10月頭ごろ、そこから秋祭本番を経て11月初旬頃に合併をするという大まかな方針が決まりました。また合併を決める際に大学側から「学園祭の規模を大きくする」ことについて譲歩をいただけたのも、合併を決める後押しとなりました。

七夕祭の伝統と秋祭のコンセプトを両立

—— それぞれの実行委員会内では、合併に際してどのようなことが譲れない点として挙がりましたか?

七条: 旧七夕祭実行委員会としては、名称と時期の2点は譲れないところでした。七夕祭は1990年のSFC開設初年から続いている伝統を守りたいということもあり、また慶應の他の学園祭やORFが集中している秋の時期と離すためにも、現状の時期が良いのではないかと考えていました。

七条: また時期が早いからこそできることもあると考えていて、例えば2020年の七夕祭は日本の中でも初めてとなるオンラインの学園祭を実現し、これまでの「学園祭」の固定概念を打ち砕き、新しい形を提案できる活動ができました。また全国の学園祭のスタッフをはじめとして多くの方々から注目を頂きました。

山田: 当日はオンライン七夕祭会場(Cluster)内で開放していた部屋に複数の学園祭の代表者が誘い合わせて、オンラインでの新しい学園祭の価値を議論している場面もあったと聞いています。またこの他にもメールなどでオンライン学園祭の実現方法について問い合わせを多くいただくなど、新しい学園祭の姿を示すことができたとおもいます。

オンライン学園祭の先駆けとなった2020年の七夕祭(実行委員会提供) オンライン学園祭の先駆けとなった2020年の七夕祭(実行委員会提供)

—— あと「七夕祭」の名前を引き継ぐのであれば、開催時期は大きくは変えにくいですね

七条: そうですね(笑)。

山田: 一度、七夕祭の名称のままで時期を変更する案もあがりましたが、新学期や試験の日程を考えるとやはり元の7月上旬というところに落ち着きました。

—— 旧秋祭実行委員会側からはどのような点が挙がりましたか?

志賀: 旧秋祭実行委員会からも名称について譲れない点があり、ただ「秋祭」の名を残すことではなく新しい名前にしたいという点がありました。これは結果的に「湘南学園祭実行委員会」という新しい組織で七夕祭を開催するということになりました。

志賀: また七夕祭の名前だけが残ると傍から見るとどうしても「秋祭が消滅した」という感覚を強く持たれてしまうので、あくまでも合併してコンセプトを引き継ぐということを伝えるためにもここは譲れない点でした。今後のSFCに学園祭を残していく事も考えた、前向きな統合であると言うことをお伝えしたいです。

—— 結果的に秋祭の名前は消えてしまうこととなりますが、旧秋祭実行委員会の中ではどのように受け止められているのでしょうか。

志賀: 自分たちは「秋祭」という名前で1年半の間活動してきたので寂しさはありますが、秋祭を残してバラバラでやっていくよりかは七夕祭と合流して新しい一歩を踏み出したほうが、次年度以降の祭を運営する人のためにもより良い選択なのではないかと考えました。もちろん七夕祭とは別に単独で開催する道もありましたが、今の世代が辛くても将来の実行委員のためになる選択をしようという考えで合併することを決めました。

山田: 先程も「規模の拡大」を前提に準備をしているとお話しましたが、実は2022年度の七夕祭は2日間での開催を予定しています。その意味でも、ここ数年の七夕祭や秋祭とは違う、新しい挑戦になるのかなと考えています。

山田: SFCの学園祭が1つだけになるということで、秋祭のもっていた学園祭としてのコンセプトを引き継ぐことも要件としてありました。また湘南学園祭実行委員会は旧秋祭実行委員会を継いで全塾協議会に参加することになります。従来は七夕祭が全塾に加盟しておらず、コンセプト的にも本当に学園祭なのか怪しいところでしたが、これで慶應の学園祭すべてが全塾に加盟することになります。

秋祭では模擬授業など受験生向けの企画も用意(実行委員会提供) 秋祭では模擬授業など受験生向けの企画も用意(実行委員会提供)

それぞれの祭りの要素を融合した「新しくて懐かしい」七夕祭に

—— 秋祭から「学園祭」としてのコンセプトを引き継ぐということですが、七夕祭の「地域密着」というコンセプトも引き継ぐ予定なのでしょうか。

井藤: 引き継ぐ予定です。というのも今までと同じ時期に別の名称で祭を開催すると地域の方々に混乱を与えかねないために「七夕祭」の名称を引き継いだという経緯もあります。一方で秋祭の学園祭としてのコンセプトと二者択一にはせずに、両方の要素をもつ「新しくて懐かしい」七夕祭にしていこうと考えています。

井藤: ここ2年キャンパスで開催できていないので、私たちの世代からするとキャンパスで開催すること自体が新しい取り組みになる部分もありますが、先輩方の知見もお借りしながら「初めて」の現地開催を目指しています。

2つの祭りのコンセプトを融合(実行委員会提供) 2つの祭りのコンセプトを融合(実行委員会提供)

—— 今のところは現地での開催を検討しているのでしょうか。

井藤: そうですね。情勢的な問題もあって私たちの力だけではどうしようもない部分もありますが、現時点ではキャンパスを利用した開催を考えています。

—— 最後になるかと思いますが、記事の読者に向けて井藤さんからなにかメッセージをいただけますか?

井藤: いまSFCでは七夕祭も秋祭も現地開催ができていないので、その分どうしても一般の学生に認知されにくく、「七夕祭ってあったんだ」と後から気づかれるようなケースも多くなってしまっていると思います。そういう意味でも新しい学祭を作っていくにあたって、改めて「SFCにも学祭がある」というところを認知してもらえるように活動していきたいと思っています。皆様ぜひとも応援していただければと思います。

—— ありがとうございました。


2020年度から既に2年間近くにわたって我々は感染症の影響を受け続け、学生生活においては既にコロナ禍前には戻れない状態に陥っている要素も決して少なくない。そのような状況下であっても七夕祭がオンラインでの学園祭の在り方を示し、サークル活動の集大成の場として秋祭もオンラインで開催され続けてきた。

そして今後は、SFCのキャンパス現地で開催される学園祭を知らない世代の学生が新たな七夕祭を作っていくという。今後どのように進化していくのか、今からその姿が楽しみだ。

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