小川克彦研究会は、9月3日(火)-10月25日(金)の約2カ月間、江ノ島電鉄(以下、江ノ電)沿線15駅の情景を楽しめるイベント「江ノ電の情景」を、江ノ電SKIP号の車内で開催している。車内には江ノ電の各駅2種類、計108枚のポスターが展示されている。今回は、このプロジェクトについて小川克彦環境情報学部教授に聞いた。


 江ノ電SKIP号は藤沢駅から鎌倉駅までの15駅を約30分かけて走行する。車内では、乗客の多くがポスターに目を向けていた。予定していなかった駅で降りる機会になったり、ガイドブックを広げる機会となったりと、乗客の足に新たな目的を与えていたようだ。


(無題)


–この「江ノ電の情景」の狙いは何でしょうか?



 このプロジェクトの狙いは3つあります。まず1つ目は、ガイドブックに載らない街について知ってもらうことです。そこで、駅名を載せた各駅ごとのポスターを作りました。これを見て興味をもった人がガイドブックを開いたり、携帯端末でその街について調べたりしてくれるはずです。

 また2つ目の狙いは、このプロジェクトを行っているのはSFCであるということをアピールすることです。慶應義塾大学という名をポスター1枚1枚に掲載するのではなく、あえて「小川克彦研究室」というロゴだけを載せました。こうすることで、ポスターを見ている人に「小川克彦研究室」について興味を持たせ、「調べる」という能動的な動きを促します。「小川克彦研究室」について調べることは、「SFC」について知るきっかけに繋がります。結果として、SFCをアピールすることとなるのです。

 また、3つ目の狙いは、ポスターが何らかの会話のきっかけとなることです。

ogawa小川克彦環境情報学部教授






–どのような経緯で「江ノ電の情景」は始まったのでしょうか?



 もともと私が鉄道好きなため、これまでも他のローカル路線を調べてきました。その上で、今回の題材を江ノ電にしました。4月頃からこの企画をスタートさせ、研究会の学生が実際に各駅の街に足を運びながら、ポスターを作りました。また、電車内でのポスターの見せ方を考えたのも学生です。現在は、この企画がどのように街へ影響を与えたのかについて調べています。


–地元の人や江ノ島電鉄からの反響はいかがですか?



 みなさんよく見てくださっています。地元の方から、様々なコメントや指摘をいただきました。江ノ島電鉄からも、1ヶ月延長をするという話を頂いたので、反響は大きいと思っています。 


江の電2




–これからどのような展開をお考えですか?



 今回のポスター掲載は紙媒体を利用したアナログな企画でしたが、今後はデジタルな江ノ電プロジェクトを進めていきたいです。

 いま考えているのは、沿線の街の色々な情報や口コミを音声化して、その街を歩くときに自動的にその音声が流れる、というデジタルラジオなどです。また、将来的にはアナログとデジタルを融合させた企画を構想しています。今後、まだまだこのプロジェクトの可能性を広げられると思います。


江ノ電街を走るSKIP号





 SKIP号はイベント列車であるため、運行時間は日によって異なる。SKIP号に乗車したい人は事前にチェックが必要だ。次第に過ごしやすく秋めいてきたこの季節。SKIP号に乗って江ノ電沿線を巡ってみてはいかがだろうか。