10月30日(日)-11月13日(日)の期間、奥田敦研究会によるアラブ人学生歓迎プログラム(ASP)が行われた。SFC CLIP編集部は、その一部日程において、潜入・密着取材を実施した。

「出身国についてのプレゼン」の様子

「出身国についてのプレゼン」の様子

ASPにおじゃま! アラブ人学生の活動に編集部が潜入・密着取材

ASPとは、SFCでアラビヤ語を学ぶ学生が、SFCに招聘された日本語学習者と共に、2週間にわたって行う学術交流だ。期間中には、日本語レポートの作成やスキット撮影をはじめ、書道教室や着付け・茶道体験などの幅広い文化交流も行われる。

今年のテーマは「アッサラーム~共に作ろう『大きな平和』~」。15周年という節目に、ASPの理念でもある「アッサラーム」(アラビア語で「平和」)の意味を改めて問い直すという意図で、このテーマが決定した。

ASP2016にはモロッコから3名、シリアから1名のアラブ人学生が参加。アラブ人学生による調査や発表だけでなく、日本文化に親しみ、また自国の文化を紹介する多くの催しが行われた。

ASP2016招聘学生

名前 出身国 専攻
ハディージャ・カッファー モロッコ 経営・財政管理
アフマド・アブドゥルアジーズ・ラクディム モロッコ 経済学
アスマー・マーヤー モロッコ 応用言語学
ハーリド・ハタビ― シリア 医学

ASP2016のおもな日程

日付 内容
11/1(火) アラブ文化講座・料理教室
11/3(木) アラビヤ語インテンシブ3授業サポート
11/4(金) 出身国についてのプレゼン@「イスラームとイスラーム圏」
11/7(月) 茶道体験
11/8(火) アラビヤ語ディスカッション
11/9(水) 和服の着付け体験
11/11(金) 日本語レポート発表会@「イスラームとイスラーム圏」

SFC CLIP編集部は、表の中で太字になっている日程を取材した。前編では、「出身国についてのプレゼン」を中心に、11月1日(火)-4日(金)の様子をリポートする。

11/9(水)の着付け体験での1枚

11/9(水)の着付け体験での1枚

11/1(火) 料理教室 「一緒に作って食べるアラブ」

11月1日(火)には料理教室「一緒に作って食べるアラブ」が行われ、来日したばかりのアラブ人との交流会が開かれた。

料理教室では天丼やフルーツポンチに加え、モロッコのスープ「ハリーラ」や、「シュッバーキーヤ」や「ブレイワート」などのアラブ料理も振舞われ、ASPメンバーとアラブ人学生が共にテーブルを囲んだ。

アラブ人学生がリーダーシップをとり、協力してアラブ料理をつくった。

アラブ人学生がリーダーシップをとり、協力してアラブ料理をつくった。

上の写真はモロッコのスープ「ハリーラ」を、モロッコ出身のアフマドさんが指揮をとりつつ調理する様子。「ハリーラ」はスパイスの効いたトマトベースのスープで、ひよこ豆の食感が楽しい。

11/3(木) インテン3授業サポート

11月3日(木)には「アラビア語インテンシブ3」の授業内に、アラブ人学生たちが参加し、履修者と共にグループワークを行った。アラブ人学生の趣味や暮らしなどを質問し、アラビア語で発表した。

筆者はアスマーさんのグループに加わった。日本語学習の話題になり、アスマーさんは、日本語の漢字の使い分けに苦労しているという。「例えば『ある』という言葉には『有』と『在』という漢字が両方使われますが、漢字が違うと、それぞれの意味も微妙に違ってしまいます」と語った。

11/4(金) 出身国についてプレゼン@「イスラームとイスラーム圏」

11月4日(金)には、「イスラームとイスラーム圏/現代文化探究」(金4・奥田敦教授)において「出身国についてのプレゼンテーション」が行われた。各アラブ人学生が自身の出身国について発表した後、質疑応答が行われ、「日本に来る前と、今の日本の印象は?」「日本の食事で、好きな食べ物と嫌いな食べ物は?」などの質問に答えた。

「日本人は『かたい』というイメージがあったが…」 アフマドさん(モロッコ出身)

来日してからの日本の印象を話すアフマドさん

来日してからの日本の印象を話すアフマドさん

アフマドさんはモロッコ出身。アフリカ北西部に位置するモロッコは、アラビヤ語では「المغرب(アル=マグリブ)」と呼ばれ、「日の沈む場所」という意味があると説明した。「日の出ずる国」である日本と対照的なモロッコは、どこか日本との縁が感じられるようにも思える。「『日本人は厳しくて真面目』いうイメージを持っていたが、いつも『かたい』わけではなく、はしゃいでいる時間もあるということがわかった」と、日本での発見を明かした。

アフマドさんが日本人と関わって驚いたことは、日本人の「空気を読む」スキルの高さだという。物事を明瞭に表現する傾向をもつといわれるアラブ人にとって、日本人の「空気を読む」作法は驚くべきものなのかもしれない。

「日本人とアラブ人の相互理解を」 ハディージャさん(モロッコ出身)

モロッコ国内の言語・民族の多様性について話すハディージャさん

モロッコ国内の言語・民族の多様性について話すハディージャさん

日本語の学習を始めたきっかけを「両国の文化を知り、相互理解につなげるため」と語るハディージャさん。ハディージャさんによると、モロッコではアラブ人やベルベル人をはじめとする、多様な民族が共存しているという。「モロッコでは多様な民族が争うことなく調和しています」と話し、宗教・人種に対して先入観を持たずに人と関わるべきだと強調した。

ハディージャさんは今回の来日で念願のすきやきを食べたという。最初は肉を生卵にからめて食べるのには抵抗があったが、意を決して食べてみると、「本当においしかった。モロッコの卵とはまったく違う」と絶賛。忘れられない思い出になったようだ。

「日本人は全員アニメが大好きだと思っていた」 アスマーさん(モロッコ出身)

モロッコの都市フェズのお気に入りの場所を説明するアスマーさん

モロッコの都市フェズのお気に入りの場所を説明するアスマーさん

アスマーさんもモロッコ出身。モロッコでは日本のアニメが人気で、アスマーさんの兄弟はアニメ好きが高じて日本語学習を始めたのだという。日本人は全員アニメが大好き、というイメージを持っていたアスマーさんは、来日してみてアニメファンがそれほど多くないことに驚いたそうだ。アスマーさんは「アニメに興味がない人でも、他に面白い趣味をたくさん持っている」と、日本での発見を明かした。

小説を書くのが趣味だというアスマーさんは、語り口もどこか詩的に聞こえる。なんと日本語で短編小説を書くこともあるそうだ。

「必ず復興すると信じている」 ハーリドさん(シリア出身)

戦地に身を置きながらも希望を持つアレッポ人の様子を力説するハーリドさん

戦地に身を置きながらも希望を持つアレッポ人の様子を力説するハーリドさん

ハーリドさんはシリアのアレッポ出身。アレッポと聞くと、ニュースでよく報道される惨状を思い浮かべる人が多いだろう。「アレッポは今まで何度も、戦争や地震に見舞われてきました。しかしその度にアレッポの街を復興させてきています」と希望に満ちた表情で訴えかけた。「アレッポ人は毎日希望をもって職場や学校へ通っています」と語るハーリドさんを見て、シリアにたいするイメージが変わった学生も多いのではないだろうか。

どこか「ほのぼの」とした雰囲気のハーリドさんは、ASP2016で周囲を和ませる「ゆるキャラ」としてのポジションを確立している。「一番好きな日本食は?」という質問に「たくさんあるので迷っちゃいます」と答えた。

2週間の活動の集大成 次回は「日本語レポート発表会」をリポート!

11月11日(金)には「日本語レポート発表会」が行われた。ASPではアラブ人学生が日本人チューターたちと共に各自のテーマに沿って調査・研究を行う。その最終発表の場がこの「日本語レポート発表会」だ。まさにアラブ人学生たちの2週間の活動の集大成である。

次回配信予定の【後編】では、この「日本語レポート発表会」の様子をリポートする。

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