今月1日付けで環境情報学部長に冨田勝教授が就任した。SFC CLIPでは就任に当たり、冨田学部長にインタビューを行った。この中で冨田学部長は、研究プロジェクトを軸にした、SFCの一層の活性化や、鉄道の延伸を目指す意気込みを語った。また、学生の間から多く出ている不満を伝えると、「具体的な解決案とともに、私に提案して欲しい」と学生に呼びかけた。

7月13日(水)に学部長選挙で冨田教授がSFCにおいて学部長として選ばれましたが、学部長選挙では何をアピールしたのでしょうか。冨田先生が学部長となって一番やりたいということは何でしょうか?
 SFCの一層の活性化です。面白くて楽しいキャンパスにしたいと思っています。
 日本の学生は国際的に見て学力は高いほうですが、勉強嫌いな人が多いです。試験のために嫌々勉強し、試験が終わるとみな忘れてしまう。そんな日本の教育の閉塞感を打破するために慶應義塾はSFCを作りました。
 試験のための勉強はつまらないですが、研究のための勉強は面白いです。試験問題には正解がありますが、先端研究においては世界中の誰も正解を知りません。だから教員と学生が一緒になって、世界の誰も解決したことのない問題に試行錯誤しながら挑戦します。
 成功すれば皆で喜びを分かち合い、うまくいかなければ皆で悩む。そんな研究プロジェクトは、とてもチャレンジングで楽しい。でも、そのためには基礎的な知識や技術が不可欠なので授業を通して勉強をする。だから勉強も苦にならず、楽しい。このプロジェクト実践教育がSFCの基本理念です。これだけ多種多彩な先端研究プロジェクトが揃っているのはSFCだけです。
残念ながら、そのようなSFCのメリットを知らないまま卒業していく学生も中にはいます。
 それはまずいですよね。基本的に研究会がSFCの柱であり、かつ面白いものだと思っています。サークルみたいに楽しくやっている研究室をSFC CLIPでも特集してください(笑)。シラバスだけではなかなか伝わりません。
 そこで新入生の4月ガイダンスの時に、学生による研究会紹介イベントを開催し、研究プロジェクトの面白さを真っ先に体感してもらおうと思っています。
先日の会議で卒業制作の必須化が決定したそうですが、そうすると研究会の履修も必須になるのでしょうか。
 事実上そういうことになりますが、詳細はこれから教員会議で議論していきます。2007年4月入学生から適用する予定です。
他に何かやりたいことはありますか?
 ぜひ地下鉄SFC駅を実現したいです。これは私一人ではどうしようもないことですが、小島先生などと一緒に全力を尽くします。それと新幹線寒川駅もです。単に駅を作ってくださいではなくて、そこに新しい実験的なシティを作り、それをSFCが半分研究としてやるというような、ストーリーでやれば面白いのではないでしょうか。
看護医療側の土地の行方も気になります。
 ご存知の通り、SIVのインキュベーション施設ができます。また、義塾創立150周年に向けて、新たな土地を取得して建物を建てる計画も検討されています。
続いてSFCの代表的な不満などを取り上げてみたいと思います。例えば履修選抜についてですが、どうも履修選抜が多すぎるのではないか、という学生の不満が上がっている点に関してはいかがでしょうか?
 去年までは選抜をくじ引きでやっているところもありましたが、それはやめました。
例えば教室が小さすぎるのでは、という意見もありますし、人気授業に偏っているのではないか、ということも考えられます。
 そのような科目がやたらと多いという場合には問題ですが、ある程度のいくつかの科目がそのようになっているのは仕方がないのではないでしょうか。やはり先生ががんばって面白い授業をやると学生が増える、これはいいことですし、年によって増減があることは当然のことと思います。
 実習科目などどうしても人数制限しなければならない授業では、何らかの方法で選抜するしかありません。しかし絶対にこの授業が受けたいという学生は、オフィスアワーで先生にぜひその旨アピールして欲しいと思います。しかし、そこまでしていますでしょうか。
確かにそこまでやるケースは稀ですね。
 研究会も同じことです。どうしてもこの研究会入りたい、と思っている人がオフィスアワーなどで熱意をアピールしたのに履修させてもらえなかった、という話は聞いた事がありません。
現在はショッピングウィークが形骸化しつつあると思います。本来ならば、一時限を分割して入れ替え制にするはずが、現状では一時限まるごと授業を行うケースもあります。その場合、履修制限がある科目などでその弊害がでてきています。その点についてどのように考えていますでしょうか?
 では、どうすればいいと思いますか?
全授業を、前後半に授業を分割するという方法を統一し、履修制限も同等に扱うという方法があります。
 それはやれば出来ると思います。やりましょう。それを各教員に徹底してもらえばいいと思います。
学生の集まる場所が欲しいという要望が多く聞かれます。集まる場所がないので、本来静かであるはずのメディアセンターが騒々しく、問題を抱えています。
 では、どうするべきだと思いますか? ぜひ具体的な提案をしてください。
そのような提案は学部長に直接持ってきて良いのでしょうか?
 はい。こうしてほしいという要望だけでなく、なるべく具体的な提案を一緒に持ってきてください。僕が学生に言いたいのはまさにそこです。今のSFCは完璧だと思っていません。まだまだ改善点は沢山あるのですが、それらを単に指摘するだけでなく、もし君たちが学部長だったらどうするか、そこまで考えて持ってきてもらいたいのです。
思いつきではなく、きちんと考えてから持ってきてほしい、ということでしょうか。
 そうです。そしてその提案が実現可能でしたら、早急に実施を検討します。
 SFC-SFSは匿名ですが、僕は匿名が嫌いです。SFC生は堂々と実名で意見を述べて欲しいと思います。匿名でないと言いにくいというのもわかりますが、やはり言うほうも責任を持ってほしい。そうしたら私も責任を持って対応します。
ありがとうございました。
 今回のインタビューではこの他、AO入試に関することを伺った。その際の様子は、今後のSERIES、「Welcome CLIP」に掲載する予定。