22日(火)・23(水)、六本木ヒルズ森タワー40階にて、SFC Open Research Forum 2005(以下ORF)が「レッドクイーンの法則 -知の遺伝子進化を加速せよ-」をテーマに開催された。舞台を六本木に移して3回目となった今回は、大物ゲストによるセッションが話題になった昨年に比べ、各展示やセッションの充実が見られた。SFC CLIPでは今回の配信で、ORFで開催されたセッションを中心に特集を行う。


 ORFの玄関となった森タワー1階入り口には、清水研究室が開発する電気自動車Eliica2台が展示され、ORF参加者だけでなく通行人の注目を浴びていた。清水研究室はブースでもモックアップなどの展示を行った。

小檜山研究室のブースでは、2つの特徴的な展示が並んだ。「EatingComputing?ユビキタス環境に置ける食卓のデザイン」と銘打たれた未来の食卓をイメージした展示では、ディスプレイを食卓にすることで置かれたコップに関する情報を表示したり、コップ同士の類似性を表現することができる技術が紹介された。

また「MicroArchiving《かたち》の記録」の展示では3次元のモデル化されたゾウムシを、タブレットで自由に動かして好きな角度から外観や断面を見られるシステムを、来場者は実際に触れながら楽しんでいた。

熊坂研、小檜山研、加藤文俊研によるケータイラボのブースでは、偏光板を用いてQRコードを環境に埋め込む「ステルスQRコード」や、GPSや複数のセンサーを組み合わせて携帯電話からリアルタイムで情報を得る仕組みなど、携帯電話を巡る幅広い展示が行われた。

UbiLabと称して展開された徳田・高汐研の展示では、実際に未来の机や部屋などユビキタス環境をデザインした展示がある一方で、現在のOSの機能を補いネットワーク接続を加速させるプログラムの実演が行われるなど幅広い内容で、好評を博した。

加藤文俊研のブースでは「モバイルリサーチとコミュニティづくり」と題したカメラ付きケータイを用いたフィールド調査によって、地域コミュニティの評価・再評価を試みるプロジェクトが紹介されていた。ブースはたくさんのポストカードで華やかに賑わっていた。

実演が目立ったのは福田忠彦・亮子、加藤貴昭研による人間工学へのアプローチを紹介したブースで、眼球運動の測定などを体験できた。また、仰木研ブースでは、スポーツのトレーニングとコーチングの未来像が紹介され、実際にゴルフスイングの診断が催されていた。

大きなブースで特色溢れる展示となったのは、「NEW MODE OF LIFE」をテーマとした奥出研。少し先の未来生活を想定した様々なグッズがブースを彩り、それぞれに込められた意味に来場者は熱心に耳を傾けていた。

我々が住む社会は複雑怪奇、その分析は困難を極める。井庭崇研究プロジェクトではそんな複雑な社会を、コンピュータを用いて擬似的な社会を構成するという「社会シミュレーション」によって理解しようとする試みがで行われている。
 今回のORFで井庭研究室はシミュレーションシステム「PlatBox」の体験型デモを行った。このチュートリアルセッションで主体的な役割を担ったのは、井庭崇研究室の学生たちである。研究室の学生たちは、夏休みに特別研究プロジェクトを組織し、教材となるチュートリアルを他の様々な教材を参考にしつつもほぼ一から作り上げたという。更に今回のデモにあたり、教材を洗練させて臨んだ。その甲斐あってか、定員60名ほどの会場は多くの人で賑わい、60名近い参加者があったという。
 今回のセッションの司会を務めた環境情報学部4年の鈴木祐太さんは「このチュートリアルが少しでも皆さんの役に立てれば嬉しいです。また、色々な皆さんにこのシステムを使っていただいて、フィードバックを頂けるとありがたいですね」とコメントした。

また、今回のORFでは、展示・デモブースの充実が目立ち、特に来場者に各ブースの出展者が積極的に説明を行う姿が目立った。一方で、人の集まりやすいブースとそうでないブースで差がつく形になったことも事実。単純なパネル展示だけとなりやすい研究領域のブースにとっては難しい状況となった。今後の総合政策・看護医療の研究室の参加への影響が懸念される。
 一方、メインセッション以外のセッションにも特徴ある内容が多く、会場に入りきれず通路まで聴衆が並ぶこともあった。会場内に3ヶ所設置された共有プレゼンスペースも併せて、多様性に富むセッションを見ることができた。
 2日目の午後、SFC CLIPは熊坂賢次実行委員長にSFC ORF 2005の手応えと今後を聞いた。
今回のORFでよかったと思われている点は?
 去年との違いについて言えば、セッション会場を絞りこんだおかげで、ブースをみんなにきちんと見てもらえたということがよかった点だね。同時に、セッションについては絞り込んだ分、非常に一体感を持った感じで聞いてもらえた。おそらく来場者数は去年とあまり変わらないけれども、今年の方がより充実していたと思う。
来場者の声は聞かれていますか?
熊坂:はい、聞いてますよ。今回は実験的に、ブースのある部屋でミニセッションを開いていたけれども、その場でみんなで話し合うっていう感じが、非常に新しい試みとして良い評価を受けていました。
今回のORFの広報に関してはどう評価されますか?
 まあそれなりにがんばりましたね。及第点という感じでしょうか。しかし、日韓の議員を結んでの政治対談が実現したこともあって、これまではORFに興味を持たなかったような人たちまで足を運んでくれたと思いますね。SFCの客層の幅が広がったと思います。
今後への課題は?
 このペースをどれだけ守れるか、ということですね。簡単じゃないんでね。
来年も六本木ヒルズでの開催は実現しそうですか?
熊坂:それはまだわからないんだよね。このパターンを続けたいとは思いますけれどね。
ありがとうございました。