12日(金)、新入生歓迎の集い実行委員会(新歓実)はSFC CLIPの取材に対し、クリーニング代及び消耗品費、備品費の一部支出の返還を明らかにした。会計に不正はなかったものの、信頼性が損なわれる運用をしてしまったのが理由と説明している。また、その他の会計に対する疑問点についても説明を行った。


 まず「カラ支出」の疑いがもたれているクリーニング代について、新歓実の会計担当者は、会計報告書に明記されたクリーニング店との契約は事実であったと説明した。ただし契約は口頭で行われ、店側で契約が忘れられてしまっている場合、誤解を取り除く証拠がないことも明かした。また領収書発行の経緯については、店舗で15,000円を支払った上、宛名・金額・日付が空欄の領収書を受け取り、翌日に金額及び宛名の記入をクリーニング店から受けたと説明した。
 新歓実はクリーニング代の支出内容に間違いはなく適切であったとしながらも、会計報告の手続き上ミスがあったと判断し、15,000円の全額返還することを決めた。また、他の支出に関する領収書の信頼性も失われたとし、領収書以外に正当性を示せる証拠・証明がない、消耗品費の全額及び備品費の一部に関する支出も会計担当者が返還するとした。まだ確定していないものの、返還対象の合計金額は70,000円余りとみられ、来年度への繰越金に編入される予定。
 新歓実はSFC CLIPの取材に対し、本年度の支出に関して一切の不正は行っていないとの説明を行った。その上で、会計担当者は「不正を疑われても、(一部支出は)反論できる記録がない。気の緩みがあった」と話し、新歓に参加した各団体へ謝罪を述べた。また参加団体には、後日メーリングリストで一連の説明及び返還対象の支出一覧を送るとし、総会後の質問は受け付けないとしたものの、今回の返還に関する問い合わせには応じることを明らかにした。
 新歓実は、今回の混乱に関して、湘南自治会から何らかの罰則を受ける予定であるという。また「(支出の一部返還で)誠意を示したい。このような混乱をもたらし、申し訳ないと思う」との認識を示し、来年度の新歓実へ、改善案などの引き継ぎを行うことを約束した。

■新歓実とCLIP 質疑応答の記録

編集部では、コラム「新歓実 ずさんな会計、問われるあり方 / 西田将之」でも挙げられている、会計に関する数多くの疑問についても質問し回答を得た。

消耗品費について

――消耗品費55,491円まで全額返還するのは酷ではありませんか。
クリーニング代を計上する際の手続き上の瑕疵に拠って領収書に対する信頼を失ってしまったため、領収書のみで計上した会計は全て返上することが我々が取るべき対応、誠意と考えています。
――大学当局からの指導はありましたか。
もちろんありません。我々の判断です。

交通費について

――交通費も領収書のみで計上しているのでは無いでしょうか。
交通費には団体参加費ではなく協賛金を充てており、財源が違うのでご了承いただきたいと思っております。協賛金を上回った分については自己負担しています。
――タクシーを使った時刻や場所は明かせないのでしょうか。
それを明かしてしまうと、どの企業にいつ協賛を取りに行ったのか、どの企業が協賛を断ったのか等が明らかになってしまいます。企業に配慮して詳細は伏せてあります。
――おおまかに「協賛先から大学」程度でも明かせないのでしょうか。
一律明かせない規則になっております。申し訳ありません。
――湘南台駅から大学への移動でタクシーを利用したことはありますか。
始発バス前や終バス後に利用していました。特に4月に入ってからは早朝に大学へ行かなければならない程、人手が足りずに切羽詰まっている状況でした。人が増えれば交通費は減らせると思います。
――協賛獲得のための交通費が明かせないことは分かりました。新歓運営のために大学へ移動した時の交通費は明かせないのでしょうか。
協賛を得るための移動と運営のための移動とは完全に切り離せるものではなく、公開する予定でなかったものを後から公開するのは、なかなか難しいということをご理解ください。来年への申し送り事項には含めたいと思います。
――交通費補助はバス代と電車賃の合計ですか。
そうです。定期の無い時期にも活動していたので、このような交通費になっています。

備品費について

――10個で34,650円もする高額の腕章を購入した理由は何でしょうか。
ネームタグでは見た目に分かりづらいので、誰が見ても新歓実だと分かる確固たる物を選びました。長期的に必要な物を前倒しで買い、繰越金を減らすように自治会からも指導されています。費用対効果も考え、このような支出となりました。
――繰越金を減らすべき理由は何ですか。
自治会に聞いていただくしかありません。申し訳ありません。
――学事にも腕章の用意がありますが、それを借りることは検討しましたか。
腕章の貸し出しは学事に断られました。
――トランシーバーも高額です。個々人の携帯電話ではいけないのでしょうか。
腕章と同様、来年度以降への投資と考えています。迅速な連絡のためには、話し中で繋がらない等の恐れがある携帯電話ではなくトランシーバーが必要でした。
――腕章やトランシーバーの管理はどうなっていますか。
クラブハウス棟に相部屋ではない部室があるので、高級な備品はそこで保管します。

印刷費について

昨年秋の新歓特別総会で配布された資料には、新歓実になるメリットとして「新歓活動参加費の免除ならびに教室の位置やパンフレット掲載順など、新入生を効率良く勧誘するための諸要素の決定権があります。公正さを損なわない範囲での我田引水は、義務を果たした者の権利と考えます」と書かれている。
 しかし一方で、終了総会で配られた会計解説書には「総会等で公的に認められた新歓に関する利益誘導の一環として、2009年度慶應義塾大学新入生歓迎の集い実行委員会役員出向元団体のチラシを印刷して新入生に配布する封筒に入れた。この印刷費の分だけ、昨年より増加している」とある。チラシを封入することや、チラシを新歓実の予算で印刷することは「公正さを損なわない範囲での我田引水」に含まれるのだろうか。
――印刷費639,975円のうち、チラシの印刷費用はいくらですか。
領収書は1枚になっており、見積もり書も手元に無いので今は分かりません。
――「諸要素の決定権」と「利益誘導」の違いはなんでしょう。
「利益誘導」は誤解を招く表現でした。チラシの封入も公平性を害さない範囲で新歓実の出向元団体に与えられている権利のひとつと考えています。
――チラシの封入も事前に告知するべきではなかったのでしょうか。
事前に告知するのが筋でしたが、自治会の監査を通ったので大丈夫と判断して実行に移してしまいました。チラシの封入は新入生へのアピールと共に、来年度への危機感から新歓実のメリットを他団体にアピールする意図もありました。
――来年度への危機感とは何ですか。
ご存じの通り、新歓実は人手不足です。新歓実はタナ実や秋実と違い、何かを創出する機関ではありません。こういうことを言っていいのか分かりませんが、やってて楽しい機関ではありません。職務に厳格性を求められる団体です。他団体とのやり取りでも葛藤はあります。来年の新歓実に辛い思いをさせたくないのです。
――今年度は6名での運営でした。目安として何人位いれば理想的な状態にもっていけそうですか。
15名から20名いれば良いと思います。あまり人数が多すぎても仕事の効率化に繋がるとは思いません。

自治会と新歓実について

――自治会に新歓実のOBがいらっしゃいますが、癒着は無いのでしょうか。
新歓実と自治会との分離は図られています。会計に関しても新歓実と自治会の間で相当厳しいやり取りがありました。
――新歓の運営に関して自治会が関与したことはありますか。
新歓実が越権行為をした際には自治会から注意や命令が入りますが、それ以外で自治会が口出ししてくることはありません。

義務保証金について

終了総会に出席しなければ義務保証金は返還されない。終了総会告知にもその旨、記載されているが、その文字は著しく小さく、見落として義務保証金を失った団体もあった。
――義務保証金返還について書かれた部分の文字が小さいことには何か意図があったのでしょうか。
悪意も他意もありません。終了総会には皆様出席していただけるだろうと思っておりました。
――終了総会告知には「欠席しても罰等は無し」と書いてあります。義務保証金が返還されないことは「罰」には当たらないのでしょうか。
「罰」とは遅延団体指定等のペナルティを想定しています。
――自治会から繰越金を減らすように指導されているなら、義務保証金もできるだけ返還した方が良いと思うのですが。
終了総会後にお金を動かすと、仮にミスがあった時に総会で訴えることができないのでやらないようにしています。また、終了総会以外の場で返還に応じてしまうと、忙しいなか終了総会にお越しいただいた団体との間で不公平を生じますので、追加返還は行いません。
――今回の騒動を受けて総会を再び開く予定はありますか。
終了総会の意義が薄れてしまうので、自治会が命じない限り、その予定はありません。
※6/17 追記
後日、終了総会に欠席してしまった団体に対して、義務保証金返還の機会が別途設けられました。
※6/19 追記
16日、湘南自治会から、クリーニング代の不明瞭な会計に関して、新歓実代表及び会計担当者に処分が下されました。代表に対しては6月30日を以っての代表・委員の解任、会計担当者に対しては6月30日までの自主的辞任を促す、というものでした。