今年の秋学期から、SFCではGIGAプログラムなるものがスタートしている。世界各国からの留学生に向けて、卒業に必要な124単位全てを英語の授業で取得できるというプログラムだ。今回編集部ではこのプログラムの実態を探るべく、プロジェクトリーダーの萩野達也環境情報学部教授にインタビューを行った。

GIGAプロジェクトを始めたきっかけ

GIGAプロジェクトを始めようと考えたのは、SFCのグローバル化がまだまだ不十分と考えたから。SFC設立当初からのミッションとしてグローバル化は掲げられていたはずだが、十分に達成されてるとは言えない。この状況を打破し、SFC生1人ひとりがグローバルな価値観を手にするため、GIGAプログラムの実施を決定した。
 また、直接のきっかけとしては文科省のプロジェクト「グローバル30」の存在があった。グローバル30とは、2020年を目処に留学生30万人の受け入れを目指すという2008年に策定された計画。全国で13の大学が参加しているが、義塾もこの計画に参加することを決定した。そこで、義塾の中でも多くの留学生を受け入れた実績のあるSFCに白羽の矢が立ったということだ。

参加者はどんな人たち

プログラムに参加しているのは9名。WEBでの募集に対しては50数名の応募があり、そこから書類審査を行い、合格したのは15名だった。しかし、そこから震災の影響などにより、数名の辞退者が出たため、最終的に入学したのは9名となった。
 参加者はアジア各国や欧米など、まさに世界各国から集まっている。また、自分の出生国とは異なる国で教育を受けているなど、出身国はどこ? と聞かれても答えにくいようなグローバルな経歴の持ち主が多い。
 また、応募者にはTOEIC、TOEFLなどのスコアの提出を義務付けている。何点以上、という明確な基準はないが、英語力は合否判定上の重要な基準の一つ。逆に、日本語能力は一切問うていない。授業がすべて英語で行われるので、日本語力は必要ないと考えている。ただ実際には、以前から日本に住んでいる方や日本人の親を持つ方からの応募が多く、現在参加している9人のうちほとんどの方は生活に困らない程度の日本語を話すことができる。

問題点

開始前には、参加者の生活面で様々な問題が起きるのでは、と懸念していたが、いざ始まってみると大きな問題は見られなかった。やはりほとんどの方が日本語を話せるなど、日本の文化に親しみがあったからだろう。
 ただ、英語の授業に関しては、受講している日本人学生がついてこれなくなっているのではないかという懸念がある。一部の授業では実際に出席者が減っているという報告もある。今学期は総合政策学の創造、環境情報学の創造など、必修の授業も英語で行われているので、場合によっては何らかのフォローアップを行う必要があるかもしれない。
 まだ始まったばかりで問題点が表に出てきていないという側面もあるかもしれない。初年度ということもあるので、参加者全員と面談をするなど留学生のフォローアップには注力していきたい。

今後の展望

英語の授業は、いまよりも更に増やしていきたい。GIGA参加者が取れる授業のバリエーションを増やしていくため、というのももちろんだが、日本人学生にももっと英語の授業を取ってほしいという考えもある。カリキュラム改訂によって英語が必修ではなくなったこともあり、在学中に英語を学ぶ学生はかなり少なくなってしまった。多言語主義という考え方もSFCにはある。しかし、いまの社会状況を考えると、英語は共通のスキルとして獲得した上で、更に自分のやりたい言語を学んでいくべきではないか。
 また、留学生の数も今後増やしていきたいと考えている。将来的に何名というのはまだ考えていないが、当面の間は30名程度が最適ではないかと思う。SFC全体のグローバル化を図るためにも、GIGAの参加者が隔離されるような状況ではなく、一般の学生と広く交流していけるように工夫していきたい。
 

ますます広がる国際化の波に、SFCが取り残されないように

今回のインタビューを通じて、大学側がGIGAに賭ける思いの強さ、「本気度」をうかがい知ることができた。
 現在義塾が受け入れている留学生の数は、約1000名。早稲田や立命館APUが2000名以上の留学生を受け入れていることを鑑みれば、決して多いとは言えないだろう。また、お話の中にもあった通り英語の授業を履修する学生が減少しているということもあり、SFC生の中でも英語が流暢に話せるという学生はそれほど多くないと感じる。
 ただでさえ忙しいSFC生のこと、あまり自分の専門に関係のない科目を履修する余裕はないかもしれないが、もし機会があれば一度GIGAの授業を取ってみてもよいのではないだろうか。ちなみに、80単位以上をGIGAの授業で取得すると、「GIGA サーティフィケート」という証明書が発行されるとのことだ。