奥出研究室では、ブロードバンドインターネットが普及するデジタル社会において求められている、新しいコンテンツの制作に必要なあらゆる知識や技術を学んでいる。企画立案から制作までの流れを自分達でマネジメントしながら創造的な活動をグループで行っており、グループワークを通してコラボレーションの方法論についても 身につけていく。


 研究会のスタイルは、教授による講義とメンバーによるプレゼンテーション。数人 でひとつのチームを組み、学期末の研究発表を目指してコンテンツ制作をおこなう。
 エージェントの技術を用いたPCによるラーニング制作を行っている、広井洋平さん (政メM2)と海老原智さん(政メM2)に話を聞いてみた。
● どんな研究をしていますか?
 
 奥出研究会は、コンテンツを企画してそれを作るための研究会です。制作の企画・設計、登場する3Dキャラクターのデザイン、プログラミングなど、コンテンツ制作のためのプロセスを学び、半期でひとつの作品を作ることを研究会の目的としています。複数人で成し遂げることに意義があり、コラボレーションのための方法論も同時に学んでいきます。また、エージェントや、ブロードバンドによる配信方法などの技術的な面を学ぶことも重要です。技術体得は大学院生によるワークショップ形式で行っています。
 
現在、研究会では3つのプロジェクトが進行しています。一つ目はPCで動くインタラクティブコンテンツ、いわばゲームを作っているチームで、具体的には「数学ラーニング」という、数学を効果的に学ぶためのソフト制作が企画段階にあります。二つ目はネットワーク上で配信することを前提としたコンテンツの制作で、ブロードバン
ドインターネット時代に向けて、新しいコンテンツ制作を目指しています。三つ目はインタラクティブに楽しむことができるXMLを使った映像制作で、見ている人が見たいものにアクセスできる次世代型のコンテンツ制作を学んでいます。
 
今学期から特に力を入れているのがXMLを使ったインタラクティブ映像で、奥出先生、高橋先生が担当している「デジタルシネマトグラフィー」の授業でも、XMLを使った編集方法について学ぶことができます。
● 今後のビジョンは?
 新カリキュラムでは、奥出研究会はメディアデザイン(MD) に属していて、クラスターの理念とも一致する部分が多いのですが、ハードウェアからソフトウェアへビジネスの重点が移り変わっていくなかで、コンテンツ供給のニーズが急速に高まっています。グループワークによるコンテンツ制作を通して、基礎となる技術を備えつつ、
自ら創造的に何かを作ることができる人材を育てていくことが、今後さらに重要になってくると思います。
● 研究発表の場/メディアは何ですか?
 学期末に研究会でおこなう作品発表会が中心です。
http://www.ok.sfc.keio.ac.jp/公開しています。
● 他研究室や企業とのコラボレーションはしていますか?
 凸版印刷と数学ラーニングコンテンツプロジェクトにおいて、金井研が3DCGプログラミング、稲蔭研が3DCGモデリング、奥出研がインタラクティブ、の分野でそれぞれの強みを生かし、コラボレーションしています。
 また、NTTドコモとはエージェントに関する技術に関して、産学協同で研究しています。
● どんな知識/スキル/人材が欲しいですか?
 大切なのは、本人に作りたいものがあるかどうかです。研究会に入ってくる新入生には知識・技術はそれほど求めていません。研究会で作品を制作していく中で体得していくことは十分可能です。もちろん、専門的な技術を備えていることは後々大切になってくこともありますが、研究会でのグループワークを通じて基本的な技術を学び、つねにオールマイティであってほしい。企画を立てて作品を制作していくためには、マインドの部分でディレクター的、プロデューサー的な思考が必要です。
 
● 気になる研究会は?
 
 メディアデザイン(MD)に所属する研究会はやはり常に興味の対象になります。
● 不満に思っていることを教えてください。
 
 それぞれの積極的な努力が必要なのはもちろんですが、キャンパスの機能として、他研究会との関わり合いが少ないことです。他の研究会がどのようなプロジェクトに取り組んでいるかという情報を得る機会があまり少ない。
 もうひとつは、ここ数年の流れですが、新入生に、能動的に関わっていく姿勢が薄れていっているような気がします。
● 研究会のトレンドは?
 XML、エージェント技術、IPv6です。これまではプログラミングをC++で行っていましたが、先学期から徐々にJavaに移行しつつあります。
● どこにアクセスすればよいのでしょうか?
 奥出先生[email protected]のほか、広井洋平[email protected]や海老原智[email protected]までメールをくれればお答えします。直接、研究室に顔を出してもらっても結構です。
● 最後にひとことお願いします。
 制作を行う上で「クリエイティビティ」「ビジネス」「テクノロジー」という三つの分野・能力があり、自分がそのどれに属する人間であっても、常に他の分野について理解を持ち勉強していく姿勢が必要です。そのためにはこの三つに通底しそれぞれを結びつける「作りたいと思う心」を大切にしていってもらいたいですね。