SFC学生有志によるアート展「こうさ展」は、10月27日、28日の両日、横浜山手の4つの洋館で開かれ、親子連れからお年寄りまでおよそ3,000人が訪れた。


 今年7月の同コーナーで「ひとがつながる展覧会にしたい」と述べていた代表の高橋大伴さん(総4)。その思いは達成されたのだろうか。そしてそれは来年へとどう結びついていくのだろうか。今年の反省と、来年への抱負を聞いてみた。「来年は、山手の丘の道を歩行者天国にしてみたいんです」
こうさ展、終わってみてどうでしたか?
 「ありがとう」の多いイベントだったなあというのが率直な感想です。それはもちろん僕からのThank you.という気持ちもたくさんあるけれど、そういう場面や、やりとりがすごく多かったのがうれしいです。Thank you.を軽く言い合えるようなシーンをたくさん見られましたしね。
昨年の開催場所「はる画廊」に比べて、今年はスケールが大きかったですよね? 
 第2回目の今年は、第1回を企画しているときにすでに考えていました。この最初のステップはどんなところへつながっていくのかと。それはすごく明確に芸術祭というイメージとなって僕の中にありました。アートが街にあふれる祭りです。第1回目が終わって、第2回目を開いた「はる画廊」のような場所をたくさん集めたいと思いました。それをカタチにしたのが今年の【こうさ展】です。こだわりをもってつくりました。
高橋さんに、ここまで成し遂げさせたのは、いったいなんだったでしょう?
 最初のイメージですね。わくわくするようなイメージです。芸術祭という言葉が最初にぴったりときました。フタを開けてみたらもっと明らかに「ハロウィーン」というお祭りでした。場所も山手西洋館。そしてそこで開かれるワークショップを集めた展覧会【こうさ展】。最初はそこまでイメージしていなかったし、単なる絵のようなものでした。でも、そういう最初のシーンが想像できたら半分はできたといつも思います。あとの半分はそのシーンをもっと鮮明に見えるようにしながらカタチをつくっていくという過程でした。
今年、よかったことは?
今年はカタチをつくる過程にこだわったんです。ひとりの学生がどうやって、山手西洋館という場所を使って、多くのメンバーと一緒に【こうさ展】というイベントをカタチにするか、ということに繊細になりました。ひとつひとつのステップを確実に踏んで実現することができたことがよかった。
 その意味では、【こうさ展】をつくるプロセスにあった、出会いや出来事すべてが【こうさ展】でしたね。今後、プロセスづくりからプロダクト重視へ、そしてまたプロセスに繊細に、という巡回がよいイベントや組織をつくっていくと思います。
逆に、残念に思うことは?
 大きく3つあります。搬入に戸惑い、いくつかの企画では予定時間よりずれこんでの開始となってしまったものがあること。ある判断ミスで2日目に、配付地図にスタンプラリーの訂正を入れなくてはいけなくなってしまったこと。洋館への配慮が欠ける場面が出てしまったこと。
 それぞれについては、大きなクレームになることはなく事故などは起きなかったのですが、ただ、そうした「小さな約束」のようなものが、実はものごとの幹になっていることを考えれば、次回への大きなステップとして位置づける必要がありますね。
今回は14のすべてのアート企画が大好評でしたね。
そうでしたね。行列ができるものも多かった。一度来た人が、数時間後に友達を連れてやってきてくれたり、今日は混雑しているからと次の日また来てくれたりと楽しんでもらえたようです。子ども達はスタッフのお手伝いをするぐらいの熱中ぶりでした。
 「誰もがアーティスト」と言っていましたが、本当にその通りでした。つくりだしているときというのは、それ自体楽しいし、自然とつくり合ったり・教えあったりするのがまた楽しいのですね。そう考えると、アートは、人と人とのつながりの中に初めて生まれてくるもののように思えてきます。
ところで、横浜トリエンナーレを意識するところはありましたか。
 はい。横浜トリエンナーレは日本で最大の現代アート国際展です。【こうさ展】は連携事業にも指定されましたが、開催前より注目して、内容的にも意識しました。トリエンナーレは、とても完成度の高い作品を各国から集めています。だから、ある意味、でき上がった作品=プロダクツが重視されるイベントなんです。
 一方、【こうさ展】に集まったアート企画では、来展者が生き生きと表現できることに繊細になって準備がされました。これは来展者が作品をつくるプロセスを重視した結果です。とても対照的でおもしろいと思います。
高橋さんにとってアートって何でしょう?
 シンプルで、アートとは表現であり、メッセージです。つくりだしたものに気持ちが入っているという意味です。【こうさ展】のアートの特徴は、その場でつくられるということです。だから自然につくり合い、教え合いが始まる。つながりやすいアートだと思います。
来年「こうさ展」はどうなりますか?
 来年も山手西洋館で行います。僕も参加します。名前は変わるかもしれませんね。
というのは、今年開催をしてみて気づいたのは、「ハロウィーン」という名前が、山手西洋館ではとても生き生きとしているんです。参加する人も、その場の雰囲気としても。 【こうさ展】は、そのコンセプトとして息づいていくのがよいかもしれない。その時は、山手の丘の道を歩行者天国にしてみたいです。キャンディーがちょっとしたツールとして使われることもあるかもしれません。
ということは来年の「こうさ展」はまた変化があるのですね。
 今年もハロウィーンをテーマに協力した、元町商店街との連携は、来年の大きいトピックになるでしょう。もちろん変化しないところもあります。「誰もがアーティスト」というコンセプトや「ハロウィーン」という時期とテーマは、今年の成功をつくってくれたものです。企画をする人が子どもから大人まで集まり、まさに「世代の交差点」となったのも好評でした。「デジタルとアナログの交差点」という視点も欠かせません。
高橋さんはいま何をいちばんやりたいですか?
 温泉ですね、ゆっくり。そう思ってこの前行ってきました。
 今後はじっくり、もともと自分の好きだったことをやりたいです。書道・サッカー・パスタ・クロスカントリースキー・語学・焼き肉・ドライブ・コンサートといった感じで。なぜなら、今はすごくリズムを取り戻したい時期にいるから。そんな小気味よいリズムの中から、挑戦が始まるはずなので。のんびりとしすぎているかもしれませんね。もともと道草の多い性質ですし。ただ、やり遂げる信念は、よいリズムの中でこそ保てると思っています。
最後にひとことおねがいします。
 たのしい気持ちをそのままカタチにしたようなイベントを体験でき、幸運でした。そして、今年の【こうさ展】をつくる過程と、それを伝えるこの連載にあたり、SFC CLIP編集部の活躍があったことを最後に読者の皆さんにお伝えしておきます。
ありがとうございました。