今回の「探険、僕の街湘南台」では湘南台駅からバスでSFCに向かう時、工業団地バス停と南大山バス停の間の左手にみえる、あの謎のロゴマークの正体を明らかにする。


佐藤商事神奈川コイルセンター
 上のロゴマークに見覚えはないだろうか?湘南台からバスで通学しているなら方なら見覚えがあると思う。湘南台からSFCに向かう石川大山の交差点脇にある佐藤商事株式会社神奈川コイルセンターの壁面に描かれた謎のマーク。SFC CLIP編集部は佐藤商事株式会社のご協力を得て、この取材を通じロゴマークの正体を明らかにし、工場の製造工程を取材することにも成功した。
 佐藤商事の業務は幅広い。鉄鋼から非鉄金属、機械、雑貨まで扱っている。デザイナーの柳宗理氏とタイアップして同氏のデザインによる食器まで販売しているという。今回取材した、神奈川コイルセンターでは原材料の鉄板の中間加工を行っているという。取材依頼の段階で、「見てもつまらないですよ」と先方はおっしゃっていたが、そんなことはなかった。実際に機械が作動している工場内は、小学生の時の社会科見学を彷彿させるものであった。
案内してくださった工場長の笠原さん
 見学前に工場長の佐藤さんから「鋼板には絶対に素手でさわらないでください」との注意を受けた。鋼板の断面は刃物と同じぐらいに切れるのだという。あのロゴマークがデザインされたヘルメットと軍手を着用し、いざ工場内に入ってみると、外からみるより中はずうっと広いことがわかる。工場内にある事務所を出てすぐに目に入ったのが、日本鋼管などの原材料メーカから調達した、加工を待つコイルである。
約14tもあるコイルが所狭しと並ぶ
 コイルは大きいものでは1ロール14tにもなるという。こんなのが崩れてきたらひとたまりもない。これだけ重いものを動かすには、クレーンなどの機械の力を借りる必要があり、重い故に移動するだけでも大変だという。この工場から出荷される加工されたコイルや鋼板は県内のいすず自動車関連の会社や藤沢にある松下電器の冷蔵庫工場に送られるという。この神奈川コイルセンターでは、鋼板を型で打ち抜く、いわゆるブランク加工やシャーリング加工を行っている。最大でプラスマイナス0.1mm以内の精度で加工できるという。
スリッターで様々な長さにコイルが切断される
 次に取材班はスリッターという機械で行われている作業を見学した。スリッターの工程は、こうだ。まず最初に原材料となるコイルを片側にセットする。このコイルをセットした反対側に巻き取り装置がついており、加工したコイルを巻き取っていく。途中にスリットとよばれる回転型の刃がとりつけられており、その刃を通った鋼板は顧客の要望に応じ、それぞれの寸法で切断され、再びロールのように巻かれる。この状態で梱包され、次の段階に加工される工場に出荷されるという。
工場内部の様子
 工場長の笠原さん曰く、最近では、いすゞ自動車の内製化や乗用車の生産ラインを絞ったことなどの影響を受け、工場の稼働時間は減少しているという。工場内にサイレンが響き渡る。5時の終業の合図だという。始業、終業の合図がないSFCの生活に長く浸っていると、合図によって時間が管理されていることに新鮮味を覚える。約1時間の工場見学はアッという間に過ぎていった。湘南台からSFCに行く道沿いは工場などが集まった工業団地で、いくつかの工場が存在するが、在学中にこれら工場の内部を見学する機会などまずないだろう。今回の取材では小学校時代に体験した社会科見学の際の気分の高ぶりを再び体験することができた。
 さて、今回の取材の目的は工場見学と同時に、あの謎のロゴマークの真相解明である。なぜこのロゴマークが会社の商標として採用されたのか、東京、八丁堀にある株式会社佐藤商事総務部飯野さんにお聞きした。
マーシャン

このロゴマークが採用された経緯を教えてください。

終戦直後の昭和21年1月に金属洋食器や雑貨商品のトレードマークとして、使用するために当時の社長が英国の会社の商標図案をヒントに作成したのです。その後、昭和33年に当時話題になった空想上の「火星人」に似ているということで、マーシャン(火星人)と命名し、社章として制定することになったのです。 2年後の昭和35年には特許庁に出願し、商標として確立されました。

このロゴは何をイメージしているのですか?

理想に燃える生まれたての赤ん坊をイメージしています。赤ん坊の顔にしたのは、いつまでも赤心を忘れないためです。やっとの足で大地に踏ん張り、スパナの手を大きく広げているのは、金属商社であることを意味しています。大きな顔は啓蒙と想像あふれる精神のもと、誠意と責任ある会社を目指すことを意味し、頭の5本の毛は、人の和、仁義、礼、知、信を重んじる心を表すと同時に、世界の5大陸に向け進展するという理想を掲げたものです。
マーシャンがデザインされたヘルメット

なぜ、このロゴを採用したのでしょうか?

見た人の記憶にいつまでも残ることと、「あれは何だろう?」と好奇心をいだいてもらうことを期待したためです。

ありがとうございました。

このロゴマークにここまで深い意味があったとは、今回取材した神奈川コイルセンターの笠原工場長も知らなかったという。
今回の探険僕の街は、バスの中で聞いた「あのマークは何?」という会話を編集部メンバーがたまたま聞いていたことから今回の取材につながりました。このコーナーでは、SFCの周りにある気になるスポットにSFC CLIP編集部が取材に行き、その真相を確かめます。次回もご期待ください。次回は遠藤バス停そばにある、気になるお店に潜入予定です。
 SFCの近所で気になるスポットがありましたらSFC CLIP編集部までお知らせください。連絡先:[email protected]