ヨハネスブルグ環境サミットからの10年。環境問題の前進を評価するこのサミットで焦点となった多国籍企業の環境責任についてレポートします。


 今週はSFC環境週間です。身近なことからグローバルな問題まで、地球環境問題を考えるきっかけを提供します。今回は企業責任についてのレポートをお届けします。

ヨハネスブルグサミットから見る企業責任の10年 リオサミットから10年、環境問題の前進を評価する

ヨハネスブルグサミットが2002年8月に開催されました。昨年、南アフリカ共和国で開催されたこのサミットに参加した私は、国際会議における海外の国際NGOの主張を毎日のように耳にしていました(英語はあんまりできないんですが)彼らの主張は、エネルギー問題や水の供給方法、貧困、貿易と多岐にわたっていましたが(※1)リオサミットに比べ特別焦点となったのは「多国籍企業を規制する国際的な枠組みの設立」でした。国際NGOは具体的に法的拘束力をもった国際的な枠組みを設立する事を各国政府へ求めていました。

企業責任とは??

皆さんの中には、「企業責任」と聞くと「企業に責任を押し付けるよりも、身近にやれることをやるべきだ」「日本の企業の環境対策は優秀だ」と考えている人がいるかもしれませんね。日本の行政・民間企業も、環境問題に対しての対策はここ10年で不十分ではあるけれども努力したとは言えるかもしれません。ですが、たとえばトヨタにおける企業活動の例をご存知でしょうか?トヨタはハイブリッド車の開発やISO14001の取得など環境対策を積極的に行っていますが、一方で愛知県豊田市の有害物質汚染問題が指摘されています。(※2)また、フィリピントヨタ社では、労働者の基本的人権を認めない生産活動をし、フィリピンの労働組合との交渉要請やフィリピン国内の労働法を無視した企業活動をしたというNGOからの報告もあります。
 これは一つの例ですが、多国籍企業上位50社が占めるシェアだけでも、国際貿易の70%以上、海外投資の80%以上に及んでいます。この数字が示すように国際経済の中での影響力は無視できないものになっています。それにともない、多国籍企業の活動について責任を明記する必要があるという国際世論が盛り上がり、ヨハネスブルグサミットに至ったという訳です。
 皆さんの中には、将来これらの大企業に進まれる方も多くいると思います。「自分がいる組織が、本当に“環境問題”という社会的責任を果たしているか」考えられる人が、どんどん増えてくれればと思います。
担当:三本裕子
今週で、CLIPでの環境連載は終了です。
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