Hヴィレッジ パプリカハウスリーダー新美陸人さん(総1)「古典を掘り下げながら面白いことをやれる人が一番かっこいい」
Ηヴィレッジ開寮から2ヶ月。スパイスやハーブから名付けられた4つの居住棟はすでに各ハウスごとの色が出てきている。今回は、そんなΗヴィレッジで男女フロア別の寮となっている「パプリカハウス」リーダー新美陸人さん(総1)にハウスで意識していることや、2ヶ月で感じたSFCの授業について幅広く話を聞いた。
【6/6更新 一部文言を更新しました】
他のハウスの概要については以下の表の通り。
共用棟 | 居住棟 (男女フロア別) |
居住棟 (女性専用) |
居住棟 (男女フロア混合) |
居住棟 (男性専用) |
---|---|---|---|---|
SALT ソルト |
PAPRIKA パプリカ |
TURMERIC ターメリック |
ROSEMARY ローズマリー |
BASIL バジル |
パプリカは「一番人を呼びやすい」ハウス
—— そもそも、新美さんがΗヴィレッジを選んだ理由はありますか?
単純に1期目だから、これからできる文化基盤やΗヴィレッジから面白い文化を自分で作れたら面白そうだと感じたからです。
今のところ、パプリカハウスは一番、寮の外から遊びに来る人が多い場所になっています。外から人を呼びやすいような、友達を連れてきやすい雰囲気はできてきていると思いますが、内輪ノリなところがあるので、これが発展した時に排他性が生まれることは危惧しています。
交渉権を持つリーダーとしてハウス同士の流動性を高めたい
—— ハウスリーダーとしての構想はありますか?
寮としての一番大きいゴールは「キャンパス内にあるという価値をどう活かすか」という点です。Hヴィレッジを、それこそ教授も含めたSFC内の人々が「ここに来たら何か面白いことが起こっているだろう」くらいのノリで遊びにくる場所にできたら嬉しいです。
もう一つ、この寮基盤で面白い「文化」が生まれてほしいと思っています。そのために今は「人の流動性をどれだけ高めていけるか」が、自分の短期的なゴールです。
—— 短期的なゴールなんですね。
違うハウス同士は安全上の観点から自由に行き来することができない問題があります。例えば、バジルハウスに行きたいときには住んでいる人に鍵を開けてもらうしかないため、他のハウスの知り合いができにくくなってしまう現状があります。ハウス同士の流動性を高めることさえできれば、もっと面白いことができる確信があるので、管理会社との交渉権を持つハウスリーダーとして、すぐに改善したいです。
—— 他にも何か企画していることはありますか?
「寮生自身で文化を作る」という"手触り感"を育てていくためにも、まずは本棚を設置したいと考えています。今は共用スペースに自分のものを置いていたら「私物放置」と許されませんが、面白いことに人によってはギターを置いて、みんなが弾いていい空間が生まれています。本当はダメですが(笑)。
—— 本棚はいつ頃から置きたいと考えていましたか?
1年に120冊の本を読んだり、引越し時に他の荷物と同量の本を持ってきたりしていた私は、寮ができた当時からこの構想を考えていました。本棚を作ったら、みんな勝手に好きなものを詰め込んでいくと思います。パプリカハウスだけでなく、全ハウスで本棚を作って、ハウスごとに出てくる特性も楽しみたいです。
—— 楽しそう……! 私も勝手にその本棚に本を置きにいきたいです。
本棚があると読んでほしい本の布教ができるし、逆に勝手に借りることも必然的に起こっていくはずです。最近読んで面白かった三島由紀夫の『肉体の学校』は絶対に置くだろうし、そんな「布教」の力はバカにできないと思います。
それこそ前は週に何回か、共用部で映画鑑賞会も開催していました。理由は2つあって、1つは自分の好きな映画のファンを増やしたかったこと。これも布教です(笑)。もう1つは真面目な理由で、ハウスを超えた交流を起こすべく、イベントを企画してみました。自分の開催している映画鑑賞会に限らず、読書会など、イベントが寮生からもどんどん始まっていったら嬉しいです。
「セレンディピティ性が一番高そう」とSFCへ
—— そんな新美さんのSFCの入学理由は何ですか?
セレンディピティ(*)性が一番高そうだと思い入学しました。授業選択の自由度が高い分、自分で面白い文脈が作れそうだと考えています。単純に自分が取り組みたい分野である情報科学を学べるほか、政治系に強い人が多いことや建築が大好きという興味からも、SFCを選びました。
(*)ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ること。予想外のものを発見すること。
—— 実際に2ヶ月SFCで過ごしてみて、いかがですか?
単純にキャンパスに来てから感じたことは、思ったより時の流れがゆっくりでした。鴨池で座っている時とか、自然レベルでの時間を感じられるキャンパスは本当にここにしかないと思います。
SFCは新しさを追いすぎ!? 「役に立つことは、すぐに役に立たなくなる」
—— 逆に改善してほしいと思ったことはありますか?
授業においては、古いものの力を舐めすぎているとも思います。「未来からの留学生」というスタンスにあえて批判するなら、SFCは新しいものを追い求めすぎ。その場で役立つ知識は結構教えてくれますが、役に立つことは、すぐに役に立たなくなる。例えるなら「Chat GPT」の使い方の授業を開講しても、数年後には「意味なかったね」となることは明白です。
新しいもの好きなことは良いことだと思いますが、僕には新しいものよりも長く残ったものを大事にした方がいいという思想があります。人間の身体の構造が急激に変化しない以上「普遍的な価値を持つもの」も、もっと大事にした方が良いと思います。
目新しいものではないため、そういった授業が「つまらない」と思われてしまうこともわかります。ただ、学生の50年先にも役に立つような、人生を懸けて刺さる授業として、昔からあったものを掘ってみるフェーズはあってほしいと思います。
「大学生」という贅沢は「時間」に活かすべき
—— どうしたら、そんな陳腐化しない知識を教えられると思いますか?
SFC生が自分自身の授業の基盤になっている古典をしっかり読む文化ができたら面白いと思っています。産業革命、IT革命、と人類史で数々のパラダイムシフトが起こっている中で、言うなれば数千年、どの時代からもちゃんと評価されて、本に残ってきた古典は"やばい”です(笑)。
そういう意味で今こそ、「変わらなかった古典を学ぼう」のフェーズだと思っています。情報飽和の中でも変わっていないところは変わっていない。長い間、国語の教科書で評価されてきた歴史が間違いなくあります。「全ての評価の軸をそこに寄せてほしい」とは言いませんが、両側面を知って活かすことができれば強いと思います。
—— 両方を持つ人は、鬼に金棒ですね!
どちらが欠けても面白くないからこそ「古典を掘りつつ面白いことをやる人が一番かっこよくない?」という文化を広げていきたいですね。
求人で見つけた「情報が溢れる時代において究極のラグジュアリーとは意味と文脈である」という言葉にもあるように、情報がどんどん飽和し、1つ忘れたら1つ入っていくというサイクルが早まっていく中で、文脈を持ったものを作っていくことにゆっくりと集中できるのは大学の4年間だと思っています。
言い換えるなら、情報が溢れた時代において「夜更かし」など、ゆっくりとした時間は意識的にしか作れないものだと思います。大人になるとできなくなるなら、「大学生」というラグジュアリーは「時間」に活かすべきだと思います。時間の使い方は人生の使い方だと思うので、今は他の人がどういう文脈を紡いでどう時間を過ごしてきたか、に興味があります。
—— ありがとうございました!
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