ORF初日、オープニングセッションが森タワー49Fのホールで行われた。「ユビキタス社会の展望」と題して、まず今年のORF実行委員長である徳田英幸政策・メディア研究科長が挨拶した。その後、村上輝長氏(株式会社野村総合研究所理事長)、青山友紀氏(東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻教授)、中島秀之氏(独立行政法人産業技術総合研究所サイバーアシスト研究センター研究センター長)がパネリストとして参加し、徳田教授とともに、ユビキタス時代の展望とともに、それに対する現在の課題について議論した。会場は早くに満席となって立ち見が出る状況となり、SFCが行うユビキタス社会への取り組みに対する、世間の注目の高さが窺えた。

村上氏
 徳田教授の挨拶の後、各氏よりユビキタス時代の要点が示された。まず村上氏がユビキタスとは何かを説明し、ユビキタス社会においては、「どこでもつながる」、「いつでもつながる」、「何でもつながる」というのがポイントであるとした。また最後の「何でもつながる」というのは、コンピュータを使って人と人(PtoP)を結びつけるのではなく、人と物(PtoO)、物と物(OtoO)を結びつけるのだという。

青山教授
 青山教授は、ユビキタス社会は、単なるインターネットの延長ではなく、新しい時代に移ったものであるということを強調した。その一方で、情報社会から、仮想社会、そしてユビキタス社会の順で移行してきているが、ユビキタス社会へのビジョンがいまだに貧弱だと考えている、と述べた。同氏は仮想と実社会の統合を目指すべきだという道を提案した。

中島氏
 中島氏は、いかにユーザと機器との親和性を高めるかがポイントだとした上で、「Cyber Assist」という概念を説明した。今後はネットワーク技術だけではなく、ユーザのコンテクストの考慮や、言語処理技術などとの連携が必要になるという。
 各氏が関わっている団体と広告代理店と共同で製作した「small stories 2008」という2008年のビジョンを映像にしたビデオの放映の後、各氏が考えるユビキタス社会の課題が述べられた。それぞれ異なった視点からの課題を説明した。初めに徳田教授からは、ブートストラップ問題を提起し、インターネットからユビキタスネットワークへどのように進化するのかという問題を挙げた。その移行の際に村上氏は、利用者を忘れてはならず、定着させていくための順番を間違えてはいけない、と強調した。
 また、青山教授は実現に向けて、コストなどの現実問題を延べ、設備投資額を考えると、普及は普遍的にはいかず、おのおののできる限りの範囲になるだろうという見通しを述べた。
 中島氏は環境整備に着目し、位置情報を取得するためのGPSなどの整備などを誰がやるのか、という問題を投げかけた。また、セキュリティ・プライバシなどの社会システムの設計が必要だ強調した。

徳田教授
 最後に、徳田教授がオープニングセッションを締めくくり、来場者は24階のメインセッション・展示会場に向かった。