SFC生の「仮住」の場を作り出す 松原弘典研究室×「湘南台の住み方設計」松本智之さん(政・メ)
この秋、一軒の空き家が新しい学生の活動場所として生まれ変わった。松原弘典研究室「湘南台の住み方設計」の空き家リノベーション、そのコンセプトや活動を2週にわたってメンバーの松本智之さん(政・メ)に紹介していただく。
●エントランスハウス×「湘南台の住み方設計」
松原弘典研究室は、長年使用されずに放置されていた藤沢市遠藤にある1軒の空き家を再生しました。2007年10月から約1年かけて設計・施工を行い、今秋、ひとまず竣工しました。この「エントランスハウス」は、昨年度から行なっている「湘南台の住み方設計」という研究プロジェクトの一環として、学生のセルフビルドで改装された空き家です。
駅前の商業地から、工業団地、そしてSFCのある農業地域へとバスで15分足らずの間に刻々と変化する「湘南台」という都市空間の中で、僕達にとって本当に居心地のいい居場所は見つかるのか/作れるのか、という問いからこのプロジェクトは生まれました。
20代前半の4年間を過ごす「仮住」の場を作り出す、というコンセプトをもとに、今回はその第1弾として、「空き家に棲み付く」ということを実験的に行なっています。
今月から来年3月いっぱいまで学内で短期利用者を募集しており、12月10-12日まで加藤文俊研究会に利用していただくことができました。今回は設計・施工者の視点から、松原研の学生が、その様子を独断と偏見たっぷりに2週にわたりレポートします。
(なお、当日の詳細な模様については、加藤研ウェブページおよび松原研ウェブページをご覧ください)
●エントランスハウス×加藤研
さて、今回貸し出すこととなった加藤研ブートキャンプを主宰する加藤文俊准教授は、フィールドワークを主体とする都市社会学がご専門。XD(エクス・デザイン)というSFCの新プログラムを脇田先生や田中浩也先生たちと立ち上げた、SFCで今もっとも過激な(?)教員の一人である。
松原研とは、加藤先生から去年の6月に"ファンレター"をいただいて以来、インタビューさせてもらったり、残念ながらボツになってしまったが看護裏にある空き家を紹介したりと、僕達のプロジェクトを懲りずに見守ってきてくださった学内では数少ない理解者のひとりである。
加藤研では今年度から「キャンプ論」に取り組み、各学期6回ずつ実際にフィールドに出て1日-2日間のキャンプを行っている。場のチカラを読み解きながら、極限(eXtreme)な環境での創造力のトレーニングを実践している。
今回、「キャンプ5:プレゼンブートキャンプ」の会場に、eXtremeな場所としてこのエントランスハウスが選ばれたのだ。…なんと光栄なことだろう!
●081211 14:45-準備
貸出利用規約を練り、大家さんに了承をもらい、3月までは全て松原研の諸君に一任する! とお墨付きをいただいて、どたばたと掃除をし、備品を整え、いよいよ加藤研の登場である。
工事で出た廃材を利用して製作したテーブルにガラスの天板が敷かれ、その上に大量のカップラーメンやレジュメやみかんが箱ごと積まれていく。加藤先生持参のiPodからボサノヴァが流れ、場の雰囲気がつくられていく(ちなみに、このテーブル、みんなに大好評でした)。
●15:40-長い自己紹介
さて、今回の加藤研「キャンプ5:プレゼンブートキャンプ(仮)」には、2人のゲストがいらっしゃった。
1人はオオニシ・タクヤさん。1971年生まれ、大阪出身の建築家。
武蔵野美術大学工芸工業デザイン科を経て、イギリスの建築学校AAスクールを首席で卒業。そこで知り合ったタイ人に誘われ、一路タイへ。現在は、タイの大学で非常勤講師をしながら、「launch pad 05」という建築設計事務所を主宰し、軽量建築を中心に、緊急援助や被災者用仮設住宅のプロトタイプを提案している。
山崎亮さんは、1973年生まれのランドスケープアーキテクトで、「studio-L」という事務所を運営している。彼も大阪出身で事務所は梅田。公園の設計から、自治体の総合計画策定、ワークショップの主催など手がける範囲は恐ろしく広い。
特に今回紹介してくださった「UNICEF PARK PROJECT」は、荒廃する里山を子供たち自身が遊び場に変えていくというプロジェクト。スポンサーとなる国土交通省、UNICEFを相手に企画書1枚とアツイ浪速節で通してしまったという。巨匠建築家・安藤忠雄しかり、この行動力は大阪のDNAか…。
オオニシさんも、AA時代にプレゼンの大切さと技術を徹底的に身につけさせられたという。この2人の行動力と構想力、そしてプレゼン力が今回のブートキャンプを乗り切る鍵になりそうだ。
●16:30-第1課題
さてさて、いよいよブートキャンプ本番。まずはウォームアップとして第1課題に取り組む。
エントランスハウスにちなみ、「ハ・ウ・ス」であいうえお作文。
加藤・オオニシ・山崎の審査員3人がYESを出せばクリアー。クリアーできれば、食べ物と水分補給ができる。審査基準は、「おもしろいこと、センスがあること」それだけ。
ちなみに僕も参加。工事中の会話というシチュエーション。
「ハ…ハ~、今日も施工2人だけかぁ」
「ウ…ウ~、なんか首痛ぇなぁ…で結局、」
「ス…スミカタセッケイって何なの?!」
まぁ、ちょっと小芝居も入れてあっさりクリアー。加藤さんとオオニシさんにはけっこうウケよかった。で、加藤研の学生も「ハハハ…」とつられ笑い。
今の微妙なデクレッシェンドで少しばかりのアウェーを感じつつ、いざ第2課題へ…。
つづく
(寄稿:松本智之 政策・メディア研究科修士2年)
●空き家利用者、募集しています。
松原弘典研究室では、引き続きエントランスハウスの利用者を募集していますので、[email protected]までお気軽にご連絡ください。