山田前塾生代表に聞く 塾生代表再選挙・塾生議会補欠選挙
塾生代表再選挙・塾生議会補欠選挙の投票は16日から始まる。今回の塾生代表再選挙は、候補者が5人と盛り上がりを見せ、中には公約において山田健太前塾生代表の名前を出す候補もいる。そのような状況において、塾生代表として長い間学生自治に携わった山田氏の視点を届ける必要性があると考え、SFC CLIP編集部は山田氏に質問票への回答を依頼した。
なお、塾生代表再選挙・塾生議会補欠選挙のスケジュールや各候補の情報は、以下の記事にまとめた。
塾生代表再選挙の見どころは「選挙が成立するかどうか」
—— 今回の塾生代表再選挙の見どころはどのようなところでしょうか?
まず、一番の見どころは「選挙が成立するかどうか」ですね。2019年以降、投票率が10%を下回って不成立になるケースが続いており、2024年・2025年ともに第1回選挙が成立に至らず再選挙になってしまいました。今回こそは投票率10%を突破し、正式に新代表が選ばれるかどうかが前提になると思います。
塾生代表選挙における投票率の推移(全塾協議会公式WebサイトやXをもとに、SFC CLIPが作成)
「議論が複雑に交錯している」
また、前回の選挙とは異なり、争点は見出しやすい選挙です。「私が3期にわたって築いた“山田路線”をどう評価し、どう継承もしくは刷新していくか」という議論が、学園祭改革をめぐる意見と投票率問題という制度面の課題と重なり合って、かなり複雑に交錯していると感じています。
たとえば、奥村候補や内田候補が「山田路線の継承」を謳うのに対して、岩切候補は予算の見直しなど「山田路線の見直し」を強く打ち出しています。また、岩田候補のように“三田祭実行委員会の解散”という極端な立場も出てきています。一方で、何を議論しても投票率が10%に達しなければ選挙が不成立になってしまうので、制度そのものが危機的状況にあるという面も見過ごせません。
要するに、山田路線の是非を問う政策論争と、学園祭の在り方をどう変えるかという塾生生活の重要なテーマ、さらには塾生代表選挙の存続意義を懸けた投票率問題が一挙に噴き出しているというところが今回の選挙における大きな見どころだと感じます。
塾生議会補欠選挙の見どころ
—— 今回の塾生議会補欠選挙の見どころはどのようなところでしょうか?
前回とは異なり、塾生議会の定員数問題も解決している状況です。あくまでもシンプルに加藤候補が打ち出す公約が塾生に受け入れられるかどうかが争点と言えるでしょう。また今回も候補者間の競争はなく単純に候補者が有権者の1%の得票をできるかの戦いです。さらに、加藤候補の公約も過去の選挙で比較的評価されやすかった公約であることを踏まえると、当選は難しくないように感じます。
とはいえ、加藤候補は「スポット議員(仮称)」をはじめ、かなり具体的な提案をしています。これらの公約が、どれだけ塾生のニーズにマッチしているのかが見どころですね。
山田路線の継承・発展「創造力を示せるかどうかが鍵」
—— 奥村候補と内田候補は公約において山田氏の名前を出していますが、それに対してどのように感じていますか?
お二人とも、私が塾生代表として行ってきた路線、いわゆる「山田路線」を継承・発展させるという主張を明確にしてくださっていますね。私が在任中に取り組んだコロナ禍対応や全塾協議会の改革、サークル支援の強化といった具体的な施策を、彼らも評価してくれているのだと思います。あとはやはり、私の実績を踏襲することで“安定感と実行力”を訴える戦略があるのでしょう。
具体的に個別の候補について申し上げますと、奥村候補は「俺が第2の山田健太」と豪語しているぐらい、真っ向から“山田路線”を掲げている。理工学部2年ということで、矢上キャンパスの事情も知っている分、キャンパス間格差に対する問題意識を強く持っているようです。私が在任中に見直した交付金の運用方法や新歓サポート体制をさらに強化したい、という方向性を打ち出していますね。
内田候補は現職の塾生代表ということで、「山田前代表の志を受け継ぐ」というメッセージ性が強い。2024年の再選挙で当選されましたが、不成立による持ち越しで色々と大変な部分もあったかと推測します。実は再選挙になる前に、一度「どうするのが塾生のためになるのか、またそれが伝わるのか」という相談をもらったんです。私も経験者として自分なりのアドバイスをしましたが、その意見を反映した結果、今の公約ができあがったのではないかと思います。私の時代に改革した自治会費や施設利用の自由度などをベースに、さらに食事場所や施設開館時間の延長、イベント拡充などを進めたい意向であると感じています。
このような方針は、私が在任中に恩恵を感じた学生団体や塾生は、私の路線に肯定的でしょうし、「山田健太と同じことをやってくれるなら安心だ」と思っていただけるかもしれません。特にコロナ禍で救われたと思っている方々の票を得やすいでしょう。
とはいえ、3期連続で務めたあとには必ず「もう山田路線は飽きた」「新しい視点が欲しい」という声が出てくるものです。実際、自治運営には常に「若い学年のフレッシュな感覚」が求められますし、私が詳しいと思っていた問題も時とともに形を変え、別の対処を要する可能性があります。
たとえば、私が在任中に整備及び改革した全塾協議会が逆に「集中化しすぎ」「前例踏襲的すぎ」と言われる時代も来るかもしれません。学園祭運営や施設利用ルールも、コロナ禍の制約がなくなった今、「以前の基準に縛られず新たなルールをつくろう」という動きが出てくるのは自然な流れでしょう。
私の名前を出してくださる候補には感謝しつつ、正直に言えば「私がやった改革を更に上回るアイデアを見せてほしい」と思います。何かに頼るだけではなく、「山田健太のモデルを踏まえつつ、ここをこう変える」という創造力を示せるかどうかが、塾生の心をつかむ鍵ではないでしょうか。
「現時点で特定の候補を支持・公認していない」
なお多くの方から質問をいただきますので、この場でご回答いたしますと。現時点(2024年12月29日時点)で私山田健太は特定の候補を支持や公認はしておりません。私を含め誰かが支持をしたからではなく、塾生一人ひとりの視点で候補者を選んでいただきたいと思っています。それこそ私の目指した真の塾生自治です。
投票率10%の可否「十分に成立し得る選挙だと感じる」
—— 前回の塾生代表選挙は不成立となりましたが、今回は候補者が5人と盛り上がりを見せています。投票率10%の達成の可否についてどのように考えていますか?
私が塾生代表だった頃も、投票率10%を越えられなければそもそも選挙自体が成立しないという制度は常に課題でした。ここ2年、再選挙が相次いでいるのは、非常に残念です。
しかし、今回は5名もの候補が出ており、学園祭改革から山田路線の継承、キャンパス格差や黒票候補のような投票率問題の直接的な訴えなど、多彩なテーマが提示されています。つまり前回までの選挙に比べ「争点のある/結果による影響が大きい(と感じやすい)」選挙といえます。塾生にとって、選びがいのある面白い選挙なのではないでしょうか。
今回の選挙は史上初の年末年始を挟みますから、比較的塾生も公約を詳細に知るチャンスや時間が多いです。そのため候補者たちが自分たちの公約をどれだけわかりやすく伝えられるか、またSNSやオンライン投票のシステムをしっかり活かせるかどうかも大事だと思います。
また過去の選挙からも、候補者が多い場合、当選ラインが下がるとともに、各候補が持つ友人をはじめとした基盤支持者が加わって全体の投票数が上がりやすい傾向にあります。
以上を踏まえつつ、今回の選挙成立は十分に考えられると感じています。
学園祭に関する公約について「学園祭だからこそ提供できる価値は何か」
—— 岩田候補、岩切候補、奥村候補の公約から学園祭の方針は大きな論点になると考えられます。学園祭に対してどのようなニーズがあると考えますか?
前提として一昔前に比べると学園祭自体のニーズは若干下がっていると感じています。インターネットの普及等を通して、各団体独自のイベント開催や集客のハードルが下がったためですね。
とはいえ依然として五慶祭(学園祭)が持つブランドは捨てたものではありません。そのため少なくない塾生から、「もっと自由に出店やステージ企画をやりたい」「費用や参加費を安くしてほしい」「納得感のある運営体制を」といった要望が依然あると感じます。コロナ禍の制約で思うように楽しめなかった分、“完全対面”での盛り上がりを求める声自体はやはり非常に強いんですよね。
具体的に個別の候補について申し上げますと、岩田候補は「三田祭実行委員会の解散」というかなり踏み込んだ提案をしており、極端な運営改革に賛成する層を取り込む可能性があります。一方で、解散後をどうするのかという現実的なプランが鍵になるでしょう。
岩切候補は「参加費を値下げして日吉祭を活性化する」など、より現実的で漸進的な施策を打ち出しており、既存の枠組みの中でどうコストを下げ、自由度を上げるかに注力している印象です。
奥村候補は、私が在任中に取り組んだ交付金支援などをさらに拡充させる形で、全キャンパスを公平に盛り上げたいというスタンスですね。
いまの社会全体として「(アフターコロナという大きな時代の変革を踏まえ)学園祭だからこそ提供できる価値は何か」という問いがあると思います。社会の先導者たる慶應義塾としては、それをどの候補がどう具体化するかは今回の選挙の大きな見どころですね。
顔出しをしない候補について「信頼関係を築くのが難しくなる可能性」
—— 今回の選挙では、岩田候補と黒票候補が顔出しをしていません。塾生代表選挙・塾生議会選挙における顔出しについてどのように考えますか?
私としては、基本的に顔を出していた方が、有権者としても「どんな人物がどんな考えを持っているのか」を判断しやすいので望ましいと考えます。特に塾生代表は、大学や各キャンパスの塾生との直接交渉が必要なので、“誰に話しているのかわからない”状態だと信頼関係を築くのが難しくなる可能性が高いと思います。
ただ、岩田候補や黒票候補のようにあえて既存の選挙活動とは違う形で注目を集めようとする狙いもあるのでしょう。たとえば黒票候補は投票率10%を強烈に意識させるための「パフォーマンス」に近い側面もあり、制度の危機をアピールする方法としては分かりやすい部分もあるとは思います。しかし、実際に塾生代表になったり塾生議会で活動したりする際には、最終的に顔を合わせたコミュニケーションが必須となるので、どこまでプラスに働くかは疑問ですね。
いずれにせよ、「候補者が何を考えているか」がきちんと有権者に伝わり、当選後は公約を実行できる体制を整えることが大切だと思います。
今回の選挙の成立「慶應義塾大学の自治にとって大きな転機」
—— 今回の選挙全体を通して、なにかコメントがあればお聞かせください。
今回のインタビューでは、私が在任中に構築してきた「山田路線」を、どのように次の世代が継承・刷新し、さらに学園祭改革や投票率問題をどう乗り越えていくのか――まさに、複数の論点が複雑に交錯していることを改めて感じました。
奥村候補・内田候補のように「山田路線」を公然と継承すると表明しているケースもあれば、岩田候補や岩切候補のように学園祭や参加費の改革を具体的に掲げる人たちもいて、一方で「投票率10%を突破しないと選挙が成立しない」という制度的な問題を突きつける黒票候補のような存在も浮き彫りになっています。
これらが同時並行で議論されることで、塾生自治の可能性と限界が、一気にクローズアップされる状況になっていると言えるでしょう。大学との交渉をどう進めるのか、全塾協議会や交付金制度をどうアップデートするのか、そして三田祭をはじめとした学園祭の運営体制をどう再編していくか――いずれも慶應義塾大学の塾生生活に直結する重大な論点です。
私自身が3期にわたって塾生代表を務め、コロナ禍という厳しい局面を乗り越えるなかで得た実感は、「塾生自身が主体的に動けば、大学も動く」ということです。過去の事例から分かるように、大学との協議も、塾生代表や塾生議会が力を合わせれば新たな突破口が見えてきますし、サークルや学園祭の体制にしても、積極的に改革を提言する声が集まればこそ、ルールを変えられる余地が生まれます。
よって、今回の選挙で1人でも多くの塾生が争点を理解し、投票に参加することで、真に塾生生活を豊かにするための「実効性ある」代表を選べるかどうかが問われています。ここを乗り越え、投票率10%を越えて正式に新代表が選ばれれば、慶應義塾大学の自治にとって大きな転機となることでしょう。
いま、塾生に伝えたいことは
—— 最後に、塾生のみなさんへメッセージをお願いします。
塾生代表選挙は、単なる「大学行事」でもなければ「形式的なイベント」でもありません。ここで誰を代表に選ぶかによって、学園祭の運営やサークル支援、大学との交渉の成果が変わり、ひいては皆さんの塾生生活のクオリティが大きく左右されるという点を、ぜひ覚えておいてほしいんです。
代表に選ばれた人が、具体的にどこまで実務をこなし、改革を進められるのか――これは当選後の行動力と交渉力にかかっていますが、その力の源泉は、結局のところ「塾生からの信任」です。投票率が上がり、多くの人の期待を背負った代表ほど、大学との交渉も説得力を持つし、サークル間の調整や新歓・学園祭の改革にも強い実行力を発揮できます。
だからこそ「どうせ変わらない」と思わず、まずは各候補の公約にしっかり目を通し、賛同できる・あるいは改革してほしいと思える候補がいたなら、ぜひ投票してほしいと思います。何より、塾生代表選挙・塾生議会選挙は「自分たちの声を自分たちで形にする」ための絶好の機会です。投票というアクションを通じて大学に関わることで、慶應義塾大学ならではの自由な風土を、さらに豊かにしていけるのではないでしょうか。
私自身、在任時に何度も「塾生の熱量や声が、結局は一番の原動力になる」と実感してきました。選挙が成立して新代表が決まった後も、ぜひ皆さんが声を上げ続け、対話をしていくことで、慶應義塾大学の自治をより充実したものに育てていってください。その先には、きっと今よりももっと魅力あふれるキャンパスライフが待っているはずです。私も1人の先輩として、皆さんの行動と未来を心から応援しています。
どうかすべての塾生の皆さんが、この選挙を単なる形だけの行事に終わらせるのではなく、主体的に参加し、当事者意識を持って自治を支えてください。私自身はもう塾生代表の座を離れましたが、慶應義塾大学に対する敬愛の念は変わりませんし、後輩の皆さんが新たな自治の可能性を切り拓いていく姿を、心から応援しています。皆さんの投票と行動が、自らの塾生生活を、そして慶應義塾の未来をつくっていくのですから。
関連記事
- 16日から投票が始まる塾生代表再選挙・塾生議会補欠選挙 各候補者の政策は?
- 【選挙特集 第1弾】13日から投票が始まる塾生代表選挙・塾生議会補欠選挙を解説(2024年記事)
- 【選挙特集 第2弾】山田健太前塾生代表が解説 学生自治に関するアンケート結果公表(2024年記事)
- 塾生議員を選ぶ塾生議会選挙 投票は12日まで(2024年記事)
- 塾生議会選挙本日まで 全塾協議会の制度改革を総復習(2024年記事)
- 塾生代表選挙は本日まで 選挙率は10%に届くのか(2023年記事)
- 塾生代表選挙の投票率は5.42% 投票率10%以下のため選挙は無効に(2023年記事)