SFCにはあらゆる分野の研究会が存在する。シラバスだけでは分からない研究会の実情を、SFC CLIP編集部員が突撃取材する「CLIP流研究会シラバス」。第4回は阿川尚之研究会「憲法判例を通して見るアメリカ」を取材した。

何をしている研究会?

 阿川尚之研究会(以下阿川研)では、週ごとに指名された学生がアメリカの憲法判例を原文で読み、内容を発表。その後全員でディスカッションを行う。事件の背景事情と裁判の争点を把握し、なぜ裁判官がその判決を下したかを論理的に分析することが主な目的だ。これはアメリカのロースクールの手法で、阿川尚之総合政策学部教授のアメリカ留学の経験に基づいている。この授業形式は春・秋学期を通して行われ、卒業プロジェクトの他に個人研究を行っている学生は基本的にいない。

(無題)阿川尚之総合政策学部教授

履修の理由

 毎年15人から20人程度の学生が履修している。学生に履修の動機を聞くと、大部分は「友達の紹介」または「他の講義にて、阿川教授の人柄に惹かれて」と語った。憲法学や法律を学びたいという強い意志を持った学生もいるが、そうでもない学生もいる。それでも、2年3年と継続して履修し、阿川研での研究に励み続ける学生が多いのも特徴だ。

(無題)阿川教授と学生

卒業後の進路

 阿川研からは、ロースクール(法科大学院)に進学する学生が多い。99年に研究会を開いてから、10年間(注1)の中で、10人以上は弁護士になっている。平均して、毎年1人は弁護士という職に進む学生がいることになる。学部を卒業して就職する学生は、必ずしも法律に携わる職業ではない。金融に進む学生もいれば、外務省に入省した学生もおり、就職先は多様だ。阿川教授は「どんな道に進んだとしても、研究会で得た論理的思考が活きる」と言う。

注1 サバティカルの3年間は研究会を開いていなかった。

(無題)ディスカッション中の様子

アメリカ憲法史を学ぶ意味

 アメリカ憲法史を学ぶ意義は、実際の判例を細かく見ることで、論理的思考法を身につけることにあると阿川教授は語る。阿川教授は「研究会のテーマとして、私がアメリカ憲法史を選んだのは、私が好きだから。必ずしも、憲法史を学ぶことが重要なのではない。重要なことはどんな分野でも言えることだが、考えることの大切さを知ることだ」と語る。

 学生は「最初は分かったふりもしてしまいますが、続けて履修するうちに本当によく分かってきます。阿川教授の問いかけを聞いているうちに、阿川教授の思考回路が見えてくるのだと思います。」と語った。

 同時に阿川教授は「アメリカは日本にとって重要な国。現代アメリカの政治を知る手段になる。」と研究内容が直結して活きる面も語った。

 アメリカの憲法判例を読むことには、阿川教授の奥深い意図がある。実際に、ディスカッション中の発言からは、学生の論理的な思考回路が垣間見えた。