23日(土)、慶應義塾大学三田キャンパス三田演説館にて、第60回慶早新人弁論大会が行われた。SFCからも慶應義塾大学辯論部藤沢会より萩原熙一朗さん(環1)、吉田優一さん(総1)、稲益天政さん(総1)の3人が出場し、萩原さんが準優勝、吉田さんが第三席に入賞した。


 慶早新人弁論大会は昭和25年(1950年)に第1回が開催され、以後脈々と受け継がれてきた伝統ある大会だ。義塾、早稲田大学(以下、早稲田)が1年ごとに交互で主催し、今年は義塾が開催。第60回目の節目を迎える大会となった。

三田弁論館

場所は三田キャンパスの三田演説館。三田演説館は日本の重要文化財に指定されており、通常は閉館されているが、今大会などの特別な行事の時のみ解放される。奥には福沢諭吉先生の肖像画が掲げられており、弁士はその前で弁を振るった。

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義塾からは三田・SFC併せて5人、早稲田からも5人が出場した。
 萩原さんは「医療のゼネラリストを見据えて」という演題のもと、現代日本の医療現場が抱える問題について言及。その解決策として総合医制度の導入を提案する弁論を行った。質疑応答では、医療という専門的な知識がある程度必要な弁論内容だったこともあり、具体的な例や現状との違いについての質問などがなされた。多くの質問と野次を浴びながらも、いずれの質問も自信を持って答え切った。

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続く吉田さんは「幻想の平和」という演題のもと、日本の国防について考える際、中国への対策は必要不可欠であると主張。その具体的対策として、日本ほか7ヵ国との海洋国家同盟を提案。さらに有事の際にはマラッカ海峡の封鎖を行うなど、具体的なケースにまで追及した。さらにその同盟を結ぶためには、日本は国際法の観点から集団的自衛権を認めることが必要と結論づけて弁論を締めくくった。同じく日本の国防について弁論を行った早稲田側の弁士からも質問が出たが、具体的な地名や情勢を上げ、堂々と自身の政策を主張した。

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最後の稲益さんは「国の宝」という演題のもと、日本の少子化問題についてこれまでの政府の施策を不十分と断じた。その上で、より抜本的な改革が必要であると主張。少子化は未婚化と教育費の高騰が2つの大きな要因であるとし、新婚並びに3人目の子供を産んだ家庭への補助金制度の創設、さらにその財源確保のための消費税増税を提案した。質疑応答では、消費税増税に関する質問などが出たが、それにも冷静に説明。多少の荒れを見せたが、質疑応答をこなしきった。

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結果、惜しくも優勝は早稲田の井守健太郎さんに譲ったが、萩原さんは準優勝、吉田さんは第三席に入賞する快挙を遂げた。入賞者には、審査員の方から賞状とメダルが贈られた。

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慶早戦は多々あるが、スポーツだけではない。言論の慶早戦とも呼ばれるこの慶早新人弁論大会で、SFCから2人も入賞者が出た。今後も辯論部藤沢会の活躍に期待しよう。

弁論大会とは

弁論大会では、弁士はひとり演壇にのぼり、聴衆に向かって弁論を行う。弁論中は聴衆から野次が飛び出すなど激しい様相を呈する。弁士が演壇に立つ時は相手側から、主張について説明不足な点や矛盾点、実現可能性などについて常に野次が飛ばされ続ける。弁士は野次に打ち勝つほどの声を張り上げて自分の弁論を主張しなければならない。また、弁論が終わった後の質疑応答でも変わらず野次は飛ばされるので、弁士は臆することなく質問に答え切ることが求められる。
 評価は、論旨、質疑応答、声調態度の3つの項目で審査員の方々が点数をつける。論旨は、弁論で取り上げられている問題の現状分析は確かか、その問題の重要性について示せているか、解決するための施策を提示できているか、そしてそれらの要素に一貫性はあるか、などの観点から総合的に判断され、点数がつけられる。質疑応答は、質問者の意図を理解し的確な回答が出来ているかを見る。声調態度は、弁論中の声量、抑揚、間の取り方、身振りなど、自分の主張を効果的に聴衆に伝えるためのすべての表現手段を評価の対象とする。これらの総合点で、弁士の順位が決定される。