2012年度の早慶戦勝敗一覧が発表された。早慶戦は、野球に限らず様々な競技で毎年行われているが、體育會全体としての結果はあまり知られていない。今回、過去5年間を遡って、義塾體育會が早慶戦でどのような結果を残しているのか分析した。


 そもそも早慶戦とはいったい何なのだろうか。歴史を遡ると100年以上もの積み重ねがあることがわかった。

早慶戦とは
 明治36年(1903)11月5日、早稲田大学野球部から慶應義塾野球部に挑戦状が届きました。「幣部依然として不振、従ふて選手皆幼稚を免れず候に就いては近日の中、御教示にあづかり以って大に学ぶ所あらば素志此上も無く候」との早稲田からの挑戦に応じ、11月21日に初めて早稲田大学との野球戦が三田綱町グラウンドにて行われたのが、あらゆる競技における「早慶戦」の最初です(結果は11対9で慶應の勝利)。






 早慶戦は六大学野球の早慶戦だけでなく、他にも50近い競技で毎年早慶戦が行われている。中には、自動車部といった一見體育會と思えないようなものもあり、義塾體育會の幅の広さを感じさせる。

 スポーツ以外でも、弁論部などは早慶新人弁論大会を事実上早慶戦として呼び、體育會以外でも早慶戦が繰り広げられていることが分かる。

 データで見てみると具体的に早慶戦の特徴が見えてきた。ここ5年間での早慶戦の勝敗をまとめたところ、74勝に対して182敗という悲しい結果が現れた。ただし、今回調査した時点で今年度の早慶戦が行われていない競技に関しては、結果から除いている。

チャート







年度 2008 2009 2010 2011 2012
勝敗17勝36敗2分13勝39敗2分19勝33敗13勝39敗2分12勝35敗4分


伝統競技の勝敗は…?


 数多くある早慶戦だが、100年の歴史のある競技から、新しく早慶戦が開催されることになった競技まで、幅が広い。ここではいわゆる伝統競技について取り上げる。

東京六大学野球


 早慶戦が始まった起源でもあり、多くの人が早慶戦と聞くとこの東京六大学野球での早慶戦を思い浮かべるかもしれない。ここ5年間の勝敗は、年2回の春季リーグと秋季リーグを足して計算して、慶應が5勝で早稲田も5勝という拮抗した勝負となっている。
 冒頭で述べた通り、記念すべき東京六大学野球早慶戦の第1回は慶應が11対9で勝利を収めている。六大学野球連盟公式サイトでのデータによると大正14年秋季より平成24年秋季までの早慶戦の勝敗は177勝212敗10分で慶應が負け越している。
 早慶の強弱を超えたドラマを感じさせるエピソードの1つとして、六大学野球のリーグ戦における最多連勝の記録がある。最多連勝は20連勝で、その記録をもっているのは慶應だ。ところが連勝記録は早稲田が21戦目で食い止め、義塾の連勝は20に留まった。
 今年は、春季リーグでは勝ったものの、秋季リーグで早稲田に負けてしまった。

早慶レガッタ


 義塾端艇部の早慶レガッタも、野球に引けをとらない歴史と伝統、そして人気を持つ早慶戦だ。始まりは1905年(明治38年)に隅田川向島で開催された第1回早慶レガッタ。以来、戦争などで中断される時期もあったものの、2005年で100周年を迎え、今日まで続く歴史のある競技となっている。ここ5年間の戦歴は、2勝3敗となっている。特に今年の4月15日に行われた第81回早慶レガッタでは慶應が早稲田に10秒以上の差をつけて勝利したことが記憶に新しい。

ラグビー


 日本で始めてラグビーチームを発足させたのは、実は義塾體育會蹴球部だ。日本のラグビー史の始まりとも言えるのが、蹴球部の魅力だ。蹴球部というと、ついサッカーを想像してしまうが、慶應では、伝統的に慶應のラグビー部の事を蹴球部と呼び、サッカー部はソッカー部と呼ぶ。
 早慶戦以外でも、慶明戦と呼ばれる明治大学との一戦は人気があり、慶應、早稲田、明治の三大学は幾度となく名試合を繰り広げ、今日に至るまで大学ラグビーの人気を盛り上げてきたと言えよう。その中でも早稲田のラグビー部はタレント集団と呼ばれており、他大学を寄せ付けない強さだ。早慶戦の勝敗も早稲田が圧倒しており、ここ5年間で見ても慶應が勝利したのは2010年の1勝に留まる。文武両道を貫く義塾蹴球部のこれからの奮起に期待したい。

勝敗の推移


 次に、年度ごとの勝ち負けについてより詳しく見ていきたい。あまり世間には知られていなくても、対早稲田で圧倒的な成績を収めている競技もあり、目が離せない。

慶應に勢いのある競技


 総合で見ると早稲田に押されている慶應だが、個別で見てみると、慶應が優勢な競技が見えてきた。今回は直近5年間のみで調べてみたが、5年以上さかのぼって慶應が強い競技もあるので、興味があれば探してみると面白い。ここでは、勝ちを◯、負けを×、引き分けを△として、数ある體育會の中で近年早慶戦で優位に立っている競技をピックアップした。





2008 2009 2010 2011 2012
柔道×
弓道(男子)×
器械体操(トランポリン)×
空手×
自動車××
ゴルフ(女子)×
洋弓(男子)××
少林寺拳法
ラクロス(女子)
ソッカー(男子)××
バレーボール(男子)××

 過去5年間で5戦5勝を挙げている競技もある。義塾少林寺拳法部は今月9日(日)に早慶戦に挑み、勝利を飾った。また、義塾女子ラクロス部も5戦で5勝しており、日本に初めてラクロス部として創立された誇りが、この対早稲田5戦5勝の中にも垣間見える。

最後に


 ここまで、過去5年間における早慶戦での義塾體育會の推移について見てきた。歴史のある競技は、勝ち数負け数を超えた伝統を持ち、さまざまなドラマを起こしてきた。まだ歴史の浅い競技も、たまたま早慶戦の応援に行ったあなたが、後に語り継がれる名勝負の立会人になるかもしれない。
 この記事を見て興味が湧いたなら、ぜひ気になる競技について調べてみて欲しい。これまでよく知らなかった早慶戦の背景を知れば、いつも盛り上がりを見せる早慶戦を、更にひと味ちがった感覚で楽しめるだろう。