18日(月)、「塾生による塾生のための半学半教の場づくり」と題して、「学びの連携」プロジェクト 第4回公開セミナーが慶應義塾大学日吉キャンパスにて行われた。各キャンパスで展開されているピアサポートシステムの成果を共有し、今後について意見交換をするイベントだ。

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 ピアサポートとは、「同じような立場の人によるサポート」という意味だ。学生が学生の相談相手になって、より身近な立場からサポートを行うことを目的としているピアサポートシステムは、近年さまざまな大学で導入されている。義塾でも、建学の精神のひとつである「半学半教」にならい、このシステムのもとで塾生同士が教えあうことを通し、互いの学力や学習意欲の向上を目指している。



 セミナーには、各キャンパスで学生のためにピアサポートを行っている学習相談アワー(日吉キャンパス)、S-Circle(矢上キャンパス)、WRC(Writing & Research Consultant、SFC)のそれぞれの代表者が出席した。イベントは教養研究センターの種村和史さんの趣旨説明からはじまり、代表者たちは、以下のような各キャンパスの取り組みを紹介した。

 

資料の集め方からレポートの書き方まで 学習相談アワー(日吉キャンパス)


 日吉図書館のリファレンスデスクで行われており、相談員は2、3年生を中心とした学部生と院生で構成されている。主に寄せられる相談は、レポートの書き方、資料集めの仕方など、レポートに関するものだ。学習相談の実演も行われた。

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情報共有システムが充実 S-Circle(矢上キャンパス)


 相談員は、公募で選ばれた理工学部各学科出身の学生スタッフ。相談内容は勉学、学生生活など、多岐にわたっている。相談員は身近な先輩のような存在で、学生が気軽に立ち寄れるスペースとなっている。ホームページ上で相談員のプロフィールとシフトを公開し、利用者が事前に相談員を選択することができる。また、相談員なら誰でも編集可能なS-CircleスタッフWikiというサイトをつくり、スタッフ間でも情報共有を図っている。相談内容をもとに、矢上でもサイエンスカフェや矢上サロンなどの企画・展示を行っている。

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相談員は政・メ出身者 SFCのWritingResearchConsultant


 WRCにいる相談員は、学部生ではなく政策・メディア研究科出身のスタッフ。SFCは大学院まで同じキャンパスのため、相談にくる人は学部生から修士課程まで幅広い。利用の状況としては相談の半数以上が研究会に関することで、分野は人文系が多い。説明の後には、即興のパネルディスカッションも行われた。SFCでは在学生の研究分野が広く、研究の手法も多岐にわたる。WRCへ寄せられる相談の内容も多様化し、対応の仕方が課題の一つとなっているそうだ。

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 各キャンパスのピアサポートシステムに共通して言えるメリットは、その名の通り学生が相談役になることにより、普段言えないような悩みも相談しやすくなることだ。自分で相談しているうちに自分がつまずいている箇所が分かり、自己解決してしまうことも多いという。

 成果発表の後は、来場者によるディスカッションが行われた。各キャンパスが連携をすることにより、よりサポート体制を充実させられるというのが全員の意見だった。キャンパス同士でノウハウや悩みを共有し、浮き彫りになった課題に対する解決策を話し合いたいと、連携への意気込みを語った。

 長谷山彰常任理事は、「教員との連携を図っているのなら、今後は学部長を招いた方がいい。授業がない日でも、キャンパスに来て誰かと話すことができる学生の居場所を図書館につくるべきだ」とコメントした。清家塾長は、「相談を受けた人が、のちに相談役になるというサイクルをつくれればいい」と述べた。

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 慶應義塾のピアサポートシステムはまだ始まったばかりだ。WRCを知らない、もしくは知っているけれど何をやっているのかよく分からないというSFC生も多いだろう。そんな人は、まずはメディアセンター2Fのコンサルティングスペースに行ってみてはいかがだろうか。学生同士が互いを高めあうことができるピアサポート。今後の取り組みに注目したい。