SFCにはあらゆる分野の研究会がある。シラバスだけでは分からない研究会の実情を、SFC CLIP編集部が調査する「CLIP流研究会シラバス」。第10回は高汐一紀研究会「ユビキタス情報空間により拡張されるヒトの認知能力とソーシャブルヒューマノイド」(以下、高汐研)を取材した。

人間と空間との仕掛けを作る

 
 研究会が主に研究対象とするのは、「知的情報空間」だ。人間とモノ、あるいはモノとモノのやり取りを扱う。それだけではなく、人間が暮らす中で、生活環境から心や感情に受ける影響を含め、総じて「知的情報空間」という。情報技術によって、人間にとってより快適な空間を作ることが主題だ。
 「研究会として柱はあるけれど、ハードウエアの研究をしている学生もいれば、ネットワークの研究をしている学生もいる。学生は各々自由に研究をして欲しい。個々の研究をまとめ、知的情報空間という柱のためのストーリーを作るのが教員だ」と高汐一紀環境情報学部准教授。教員が個人研究についてテーマを縛るようなことはしないと語る。

(無題)高汐一紀環境情報学部准教授


個人研究を支える親子制度


 高汐研は、基本的に徳田英幸研究会、中澤仁研究会と合同で活動する。毎回の研究会では、テーマごとにグループに分かれ、ミーティングや個人研究の進捗報告を行う。こうして1学期間を通し、何らかの成果を形にすることが、学期ごとの目標だ。
 高汐研を含めた、合同研究会には先輩が後輩の研究をサポートする親子制度が設けられている。全ての学生にパートナーが与えられ、研究の相談をすることができる。

高汐准教授とモノ作りがしたい!


 履修者の八木彩香さん(環4)は、高汐准教授について、「ツイッターで気軽に話しかけられるぐらいに、気さくでフレンドリーな方です。講義を受け、高汐准教授のキャラクターに惹かれ、『高汐准教授の下でモノ作りする!』と決めました」と履修のきっかけを話す。合同研究会の中で特に高汐研を履修する理由については、「ハードウェアを作るのが好きな人は高汐研が良いと思います」と言う。

不得意が分かるのも成長


 「SFCは研究会に早く入れるけれど、デメリットもあって、2年生に始めて3年生には飽きてしまうというケースがある」と高汐准教授。「必ずしも一つのことにこだわり過ぎなくても良い。少しやってみて、得意でないことが分かったり、他の研究会のメンバーのやり方が良いな、と思うのも成長。最終的に、面白いと感じたことを研究するのが一番」と語った。

(無題)


 ドイツ留学からSFCに戻ったばかりの高汐准教授。「空間が変われば人間の思考や生活態度、思考の範囲まで変わっていくと思う」と、訪れる未来を熱く語っていた。個々が自由に研究活動に取り組めるだけでなく、大きなビジョンを見据えた研究会であると感じた。