いよいよ来週、SFCの研究発表の場「Open Research Forum 2014」(以下、ORF)が開催される。21日(金)・22 日(土)に東京ミッドタウンでメインイベントが行われ、従来の展示・セッションに加えて新たにワークショップが導入。さらに、17日(月)から6日間に渡る「ORF WEEK」が設けられ、ニコファーレ(六本木)をはじめとする都内各地でサテライトイベントが実施される。

今年のORFは「PROTO-UNIVERSITY」をテーマに掲げる。一体なにを意味し、今までのORFとなにが違うのか。ORF2014実行委員長を務める脇田玲環境情報学部教授にインタビューした。

今年こそ、SFCを生かせるテーマを本気で実践

ORF2014公式ページより

— 今年のORFのテーマ「PROTO-UNIVERSITY」とはどういうことでしょうか?

ORFには毎年個別のテーマが与えられます。しかし、これまではテーマというよりはむしろ意思表明のようなものが多く、開催期間中に個別のテーマに沿った議論が活発に行われた年は僅かです。SFCは学際的なキャンパスなのだから、その強みを生かせるテーマを考えることにしました。

私たちが持つ「大学」という共通項を再認識

ORFに集まる人のバックグラウンドと専門分野は多様多種です。SFCの学生や教員、研究者、営業職、経営者、官僚、受験生、教育者、単純にSFCに興味のある人……そんな一見混沌とした参加者たちの共通項は、やはりSFCという「大学」なのです。

PROTO-UNIVERSITY―“母体”に戻り、胎児の視線で大学のあるべき姿を考える

「PROTO-UNIVERSITY」のPROTOは、細分化し最適化された構造を得る以前の、原始的で未分化な状態を指す言葉です。言い換えれば、これからいかなる形にも変形、進化しうる状態のことです。そんな母体内の胎児のような視点から、これからのUNIVERSITY、大学のあるべき姿をみんなで考えていこうというのが今年のORFのテーマです。

実行委員長 脇田教授実行委員会 脇田教授

SFCは常に挑戦的・実験的であるべき―ORFのマンネリ化を打破

— 今年のORFには従来の展示とセッションに加えて、ワークショップとサテライトイベントが追加されます。さらに「ORF WEEK」と称して従来の2日間から6日間になるなど、大きな変化がありますね。

ORF2014公式ページより

SFCは創設以来、硬直化した既存の大学像を打破し、新しい可能性を模索し続けてきた実験キャンパスです。守るべきものは守りながらも、一方で常に挑戦的、実験的であることがSFCには求められます。ORFの開催場所をSFCから六本木に移してからすでに12年が経ちましたが、驚くことに研究発表のフォーマットは12年間変わっていなかったのです。この12年間のめまぐるしい社会変化の中にあって研究発表のスタイルも随分と変化していますが、ORFはそこに無頓着だったと言わざるを得ません。

ORFは本当にオープンなのか?―”見る” “見せる”のカベをなくすワークショップ

ORF外部実行委員の江渡浩一郎さん(独立行政法人産業技術総合研究所主任研究員)が立ち上げた「ニコニコ学会β」は驚くべき研究発表イベントです。「野生の研究者」を支援するオープンなイベントで、ニコニコ動画をプラットフォームとしつつも多様なフォーマットを使い分けて次世代の研究発表の姿を模索しています。一番感銘を受けたのは、参加者も発表者も他人の研究に無関心でないところです。全ての研究に興味を持って「参加」しているんです。ORFは"Open" Research Forumを名乗っていますが、ニコニコ学会と比較すると果たしてオープンと言えるのだろうか、と疑問に思ってしまいました。
 今年から導入される「ワークショップ」は、時間をかけて我々が持っている情報、素材、思想などを来場者の方々と共有することで、従来の「見る側」と「見せる側」の壁の曖昧なものにすることが目的です。時間をかけた「対話」の中で新しい共同研究を誘発する場にしたいと考えています。

ORF2014公式ページより

東京デザイナーズウィークを意識!?―同時多発的イベントを実験

ちょうど先々週(10月25日-11月3日)に、東京都港区を中心としてAnyTokyo東京デザイナーズウィークなどのイベントが同時多発的に行われていました。どこに行ってもデザインイベントが開催されているので、デザインと社会の関係を考える1週間になるわけです。
 今年の「サテライトイベント」は、まさにそのような場を作りたいと考えました。ORF WEEKに六本木付近に行くとSFCのイベントがいつも開催されており、大学と社会の関係を考えざるを得ない1週間にしたかったのです。
 例えば、17日(月)と18日(火)には、多くのSFC卒業生が働いているGREE株式会社さんの六本木ヒルズ本社で「ORF 2014 Satellite at GREE」が開催されます。「After Internetは世界をどう変えるか?」「ゲームは社会に貢献できるか?」をテーマに、SFC OBを中心にしたゲストと村井先生、國領先生が登壇予定です。メインイベント前日の20日(木)の夜には、「SuperDeluxe」でトークセッションとライブパフォーマンスがあります。熊坂賢次先生(環境情報学部教授)と気鋭の社会学者によるトークセッション、岩竹徹研究室のコンピュータミュージックのライブパフォーマンス、濱野智史さん(政・メ05卒)がプロデュースするアイドルグループPIPのライブなどが予定されています。

ORF2014公式ページより

ORFで己に問う―私の中の「大学」とは何か

— PROTO-UNIVERSITYにおいて、私たちSFC生はどうあるべきでしょうか?

仏教に「身土不二」という言葉があります。自分が身を置く環境と自分の身体は切り離すことはできないということです。特に若い頃は、何をすべきかよりも、どこに身を置くべきかが大事な問いだと思います。
 SFCは様々な分野の人が集まっている特殊な環境です。そんな環境の「土」をしっかり生かすことも大切ですが、自分の一部になるその「土」が、求めている「土」なのか、あるいはどのような「土」であるべきなのかを考えることも大切です。
 

学生という身分である我々からは絶対切り離せない大学という名の「土」。それを突き詰めて考えていくと、新しいSFC生活が見えてくるかもしれない。
 ORF直前実行委員インタビューでは、実行委員長の脇田教授だけでなく、新たに導入されるワークショップについて井庭崇総合政策学部准教授、アルゴリズムを用いた展示・空間デザインについて松川昌平環境情報学部専任講師に話を聞いた。下記リンクより、ぜひご覧ください。