今年も大盛況のORF。ホールに入ってすぐ、大規模な展示が目に留まるのは、徳田・高汐・中澤研究会(以下、徳田研)だ。徳田研は、徳田英幸政策・メディア研究科委員長兼環境情報学部教授(以下、徳田教授)、高汐一紀環境情報学部准教授、中澤仁環境情報学部准教授が合同で研究活動を行っている。今年の展示について、政策・メディア研究科特任助教である米澤拓郎さんに話を聞いた。

スマートシティのためのオーケストレーション―社会のサービス、人、モノをつなぐ

ホール入り口近くにブースがある。

徳田研では現在「スマートシティのためのサービスオーケストレーション」をキーワードに掲げ、国や民間のプロジェクトと連携して研究を進めている。これは「オーケストラのようにいろいろな楽器が調和するようなイメージ」だと米澤さんは言う。
 近年、情報技術の進展によってコンピュータはますます小型化され、あらゆる場所に多様な形で埋め込むことが可能となった。この高度な情報技術を応用し、都市に存在しているサービス、人、モノをコンピュータやネットワークによって「オーケストレイト(orchestrate)」することで、プラットフォームが形成される。そこに利便性の高いサービスやアプリケーションを開発しやすい環境を構築し、それらを組み合わせてサービスやアプリケーションの実装をするというわけだ。

あなたの笑顔で景品が決まる!? スマイルクーポン

笑顔の点数によって実際に景品がもらえる。

江ノ島電鉄鎌倉駅に設置されている電子掲示板。スポットライト型のプロジェクターが使用され、天候や気温などをはじめとする江ノ島の情報が映し出されるほか、「スマイルクーポン」と呼ばれるデバイスも併設されている。スマイルクーポンは、小型カメラとコンピュータによって人の笑顔を認識し、その度合いを分析する。そして、笑顔の種類によって、毎回異なるクーポンを提供することができる。
 江ノ島に設置されたコンピュータとも連携している。現地の混雑度を分析することができ、混雑度が低い日はマグカップなどの豪華商品を当たりやすくすることもできる。天気が悪い日でも江ノ島に行きたくなるような、楽しいクーポンだ。
 

「逃げろ!」人の命を救う飛翔物体!? EverCopter

米澤さんとEverCopter

地震、津波などの大災害が起こったとき、人々にどうやって「逃げろ」と伝えるとともに、災害の状況を監視するのか。徳田研が出した答えは、スマホでもテレビでもない。この問題意識のもとで研究、開発されているのが、半永久的に空を飛び回ることができ、インターネット防災無線・監視カメラとして使えるドローン(小型無人航空機)、EverCopterだ。

(Smart Cityプロジェクト WEBより)

地上が破壊されても、宇宙空間にある人工衛星と地上にある手のひらサイズの受信機さえ生きていれば、人工衛星から指令を受けたドローンが空中を飛び回りながら「逃げろ」と伝えることができる。ドローンにカメラやGPSを取り付ければ、映像や位置情報を記録することも可能だ。また、現在のバッテリーでは10-15分の飛行が限界だが、EverCopterは電源ケーブルにつながったまま飛行することができるため、半永久的に滞空することを実現する。

湘南地域では大地震が発生してからわずか10分程度で津波が到達すると予測されている。米澤さんは「災害におけるドローン技術の実用化を目指し、藤沢市と連携した避難訓練を実施する予定だ」と今後の展望を話した。
 

「どこで撮ったっけ?」がひと目でわかる!SENSeTREAM

米澤さんは、実際に動画からiPadアプリで位置情報を読み取るデモを披露した。

動画とともに位置情報も記録したい。そんなときに使えるのが、SENSeTREAMという技術だ。SENSeTREAMとして動画を撮ると、動画内に位置情報など様々なセンサ情報がアニメーションするQRコードとして組み込まれ、映像や音声とともにリアルタイムで記録されていく。そのときどこにいたのかがGPSによる正確な情報で記録されるため、動画再生と照らし合わせながら逐一確認することができるのだ。

パラグライダーで飛びながら、海の中でダイビングしながら、ゴルフコースを回りながら、見知らぬ街を巡りながら……など、さまざまな場面に応用できそうだ。また、上記のEverCopterと連携(“オーケストレイト”)して、空飛ぶ防犯カメラを実現することも可能だ。
 

一緒に研究したい人、募集中!

SFCには、文理が融合した様々な実践的なプロジェクトがある。徳田研も、実際に都市や民間企業、研究機関と連携してさまざまな試みを実践している。「研究自体はもちろん、都市において国や企業とコラボレーションすることの試行錯誤も感じ取ってほしい」と話す米澤さんは、「リアルな問題意識と研究意識が融合したデモを楽しんでもらえたらうれしい。一緒に研究したい人も随時募集中!」と徳田研をアピールした。

見たことのないたくさんのデバイスに、足を踏み入れるだけでもわくわくする徳田研ブース。明日22日(土)も展示が行われているので、ぜひ最先端の技術を体験し、感じてみよう。