メディアセンター1階のFabスペースに並ぶ3DプリンタなどのFab機器に触れ、ものづくりの楽しさを発信する「Fabってあそぼ!」。今回は、15日(木)に開催された「3D全身スキャン体験会」に参加。3Dスキャナ「Sense 3D Scanner」(3D System社)と3Dプリンタ「MakerBot Replicator 5th generation」(MakerBot社)を使用して編集部員の全身フィギュアをつくってみた。

誰でもカンタン! 3Dスキャンの魅力とは―導入編

2014年4月のリニューアルオープン以来、たくさんの学生が利用しているFabスペース。いまやFabスペースを知らないSFC生はいないだろう。
 しかし、新たに導入が検討されている「3Dスキャナ」を知っている人は少ない。今回の体験会は、身の回りのモノを自由に3Dスキャンして、さらに3Dプリンタで手で触れるカタチにするという楽しさを知ってもらう、という狙いのもとで開かれた。

まずは、Fabコンサルタントの淺野義弘さん(環3)が3Dスキャンについて説明する。3Dプリンタを使って出力するには、3Dデータを自分でつくったり、ネット上で公開されている既存のデータをダウンロードしたりしなければならない。しかし3Dモデリングソフトで自ら図形を描こうとしても、例えばタコ(蛸)のように形状が複雑なものでは限界がある。そこで、実際に存在するモノを3Dスキャンしてしまうという方法がある。3Dモデリングソフトの操作は難解だが、3Dスキャンであれば、誰でも簡単にできる。
 現在、Fabスペースに設置されている3Dスキャナは「MakerBot Digitizer」(MakerBot社)。これは卓上タイプで、この上にモノを載せ、台座を回転させながら形状をスキャンしていくものだ。
 昨春あるSFC生が、この3Dスキャナと3Dプリンタを組み合わせて「ゴミ」(紙クズを丸めたもの)をつくった。淺野さんはこれを例に挙げ、「3Dプリンタでちゃんとしたものを作らなきゃいけないのか。いや、そうではない。もっと頭をゆるくして、つくること自体を楽しんでほしい」と語った。

しかしこの卓上タイプの3Dスキャナでスキャンできるのは、小さなモノに限られている。そこで、2015年度の導入を検討されているのが、この「Sense」という持ち運びができる3Dスキャナだ。大きいモノを3Dプリントすることが可能になり、例えば医療分野では義足や個人の歯形に合わせたの歯ブラシなどの実用的な開発にもつなげられている。部屋のなかの小さいモノに限らず、外へ出て自然物までもをスキャンできる「Sense」の使い道は無限大だ。
 SFCで「Sense」が使用された代表的な事例が、2014年度SFC秋祭のミスSFCコンテストだ。なんと候補者を全身3Dスキャンし、フィギュアがつくられたのだ。2Dの写真のみで候補者を見るのではなく、3Dのフィギュアで触ることができるというこの企画は、一部の男子学生から熱い評価を受けたという。
 

スグできる!? いよいよ全身スキャンされてみた―体験編

全身を3Dスキャンする方法はとても簡単だ。パソコンにつないだ3Dスキャナ「Sense」を身体に沿って動かすと、読み取られた3Dデータがそのままパソコン画面上に現れる。

3Dスキャンされる側は、このように直立不動でじっとしているだけでよい。もちろん自分の好きなポーズをとることも可能だ。参加者のなかには、ガッツポーズをする人や、タイガーマスクの覆面を被った状態でスキャンされている人もいた。

筆者を全身スキャンした後の画面。我ながら暗すぎる

3Dスキャンした3Dデータを保存し、「MeshLab」という無償で使える3Dデータ編集ソフトで調整する。3Dスキャンデータには、ところどころに空洞や陥没があり、出力エラーの元になってしまう。そのため、Fill hole機能を用いて空洞などを埋めるように調整していく。

これで全身スキャンの手順は完了。驚くことに全工程で10分もかからなかった。
 

3Dプリンタで出力!”もうひとりの自分”はちゃんと生まれるのか―出力編

後日、3Dデータ化された"自分"を「MakerBot Desktop」で確認。
 すると…

すごい。"自分"がパソコン画面のなかに立っている。驚くべき再現度だ。
 

この過去記事を参考にして3Dプリンタで出力する。ちなみに、高さ(身長)を12センチに設定したところ、2時間ほどで出力が完了。生まれた"もうひとりの自分"がこれだ。

姿勢の悪さや足の太さなどの体型はもちろん、メガネやスカートのひだまで忠実に再現されている。
 話のネタに使うのもよし、ポケットのなかにいれて一緒にお散歩を楽しむのもよし、とにかく愛着が湧いて仕方がない。

偶然会った人も「えっなにこれ!」って言ってくれるぞ

「Sense」のFabスペースへの導入はまだ検討中だが、導入されたそのときは、皆さんも自分の分身をつくってみてはどうだろうか。

「Fabってあそぼ!」では、弊部の部員がFabスペースにあるマシンを実際に利用したり、Fabに関係のある人物に話を聞いたりすることで、独自の視点でFabに迫っていく。
 次回もお楽しみに!