今年4月にリニューアルしたメディアセンター1階のFabスペース。3Dプリンタやデジタル刺繍ミシンなどを誰でも利用できるのが魅力だ。新連載「Fabってあそぼ!」では、Fabスペースに設置されている機器を実際に使いながら紹介する。第1回はデジタルファブリケーションの筆頭、3Dプリンタだ。


 Fabスペースには6台の3Dプリンタが設置されている。昨年4月のFabスペース開設当時に導入された「CUBE」(3D Systems社)がその4台を占める。今回は、リニューアルで新たに2台導入された「MakerBot Replicator 5G」(MakerBot社)を使用することにした。


ミッション1: 3Dデータをモデリングせよ

まるで粘土細工!? ブラウザ上で3Dモデリングができる「SculptGL」


 作りたいモノの3Dデータを作成することからすべてが始まる。まずは、自分のPCで3Dデータの作成(モデリング)に挑戦しよう。
 3Dデータを作成する3D CADソフトウェアは、「123D Design」(Autodesk社)などが無償ソフトとしてよく知られているが、今回は「SculptGL」を使用する。これは、3Dモデルを彫刻するように作成できる3Dスカルプトというタイプであり、Webブラウザ上で動作するWebアプリケーションだ。インストールが不要で、ブラウザ上で気軽に操作ができる。まるで粘土をこねるかように形作ることができるので、記者のように立体図形の取り扱いが大の苦手という人でも、感覚的に3Dモデリングができてしまうのだ。

“あのカモ”を作る

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 それでは、さっそく3Dデータを作っていこう。今回は、4月1日に弊部がエイプリルフール記事として考案したカモのキャラクターをモデリングする。
緊急報告 SFCからゆるキャラ誕生!

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 最初は上図のようなきれいな球体になっている。右側のツール(Tool)からブラシ(Brush)を選択し、球体の上でクリックするとその箇所が盛り上がる。逆にへこませたい場合は、下にあるツール反転(Negative)のチェックボックスを選択すればよい。ブラシ以外にも、なだらかにする(Smooth)、平らにする(Flatten)などたくさんの操作ツールがあるので、希望の造形に応じて使ってみよう。

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 思い思いにクリックを続けた結果、だいたいのアウトラインが見えてきた。だが、これではくちばしが怖すぎる。狂気すら感じるこの顔に手直しを加えてみる。
 モデルはくるくると回すこともできる。前がなんとなくできあがってニヤニヤしていても、横から見ると……

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 絶望的にかわいくない。このようにカモとは思えない代物だったりする。3Dモデルがゆえ、あらゆる方向から頻繁に確認しながらモデリングを進めていこう。

手塩にかけて育てた3Dモデルは、まるで我が子のよう?

 足を付け加え、くちばしを直し、肝心の羽を授け、ああでもないこうでもないとクリックし続けてみた結果がこちら。

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 どうだろう、なかなか様になってきたのではないだろうか。シルエットや特徴的なディテールを再現する上で、なだらかにする機能や左右対称機能がとても役に立った。
 ここまで記者が手間暇かけて作成した3Dモデルに対する愛着は相当なものである。手塩にかけて育てた3Dモデルは、まるで我が子のようだと言っても過言ではない。我が子に早く会いたい、そんな気持ちがふつふつとこみ上げてくる。

ミッション2: 3Dデータをファイル出力せよ

 満足のいく3Dモデルができ上がったら、データをobjファイルかstlファイルで保存する。画面左側のファイル(Files)から書き出す(Export)ことができる。なお、モデリングの途中に誤ってブラウザを閉じてしまうという悲劇に備えるために、頻繁に書き出しておくことをおすすめする。
 次に、3Dプリンタでプリントするためのファイル準備に入る。まず、「MakerBot Desktop」をダウンロードする。このソフトウェアで3Dモデルのデータファイルを読み込み、最終的な出力サイズの調整をする。

サポート材の設定を忘れないで

 ここで注意してほしいのが、オプションでサポート材を必ず選択することだ。サポート材とは、3Dプリントする物体の支えになるもので、今回のように最初にプリントされる部分が自立不可能な3Dモデルには必須だ。サポート材なしでプリントしてしまうと、途中で耐え切れずに転倒してしまうので、必ずサポート材をつけよう。設定(SETTINGS)からSupportsを選択した上で保存すればサポート材をつけることができる。

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 これで、3Dモデルデータの準備が終わった。さっそくプリントしてみよう。

ミッション3: 3Dデータをプリントせよ

 いよいよ、待望の3Dプリンタを使う時がきた。まずは、メディアセンター1階奥にあるAVコンサルタントのカウンターで、3Dプリンタ利用申請書に必要事項を記入する。

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 利用説明書とともに、USBメモリ、ヘラ、はさみ、スプレータイプの整髪剤が渡される。これら一式を持ってFabスペースへ行こう。

いよいよ3Dプリント! 我が子に息を吹き込む

 まず、ステージにスプレータイプの整髪剤を吹きかける。これはプリントされるプラスチック樹脂がステージに定着するためのものなので、必ずやること。
 次に、先ほどMakerBot Desktopで最終調整をしたデータを、USBメモリに入れる。データが入ったことを確認したら、3DプリンタにUSBメモリを挿入し、本体画面のUSB strageから、自分のデータを選択する。

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 以上で人間がやらなければいけない操作は完了した。あとは文明の利器、3Dプリンタの準備とプリント開始を待つだけ。

“生まれた我が子”を手に取る喜びもひとしお

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 1時間53分後、遂にあのカモがこの世に誕生! ステージが降りてきたら、ステージを引き出し、ヘラでサポート材ごと外す。サポート材はやわらかいので、手で折って取り外してしまおう。

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 出力サイズを小さく設定したせいか、細かいディテールはところどころつぶれてしまっている。とは言え、自分自身の手でモデリングしたものが目の前でカタチとなって生まれた喜びは計り知れない。ああ、やっと我が子に会えた。記者は感涙とともに大満足した。
 最後に、3Dプリンタを片付け、AVコンサルタントで借りた器具をすべて元の場所へ戻す事もお忘れなく。

使わないなんてもったいない! あなたもFabで思いをカタチに

 「使わないなんてもったいない」記者はそう強く感じた。一から自分で作ったモノを実際に触ることができるという経験は、ほかでは味わえない。SFC生なら無料でいつでも利用できるというすばらしい環境を利用しない手はないだろう。ぜひみなさんも3Dプリンタで思いをカタチにしてみよう。

 いかがでしたか。新連載「Fabってあそぼ!」では、このように弊部の部員が実際にファブリケーションを体験する様子や、Fabスペースにゆかりのある人物のお話をお伝えします。お楽しみに!