メディアセンター1階のFabスペースに並ぶファブリケーション機器に触れ、ものづくりの楽しさを発信する「Fabってあそぼ!」。今回は、22日(金)に開催された「女子ファブワークショップ」(女子ファブ)の様子をお伝えする。女子ファブでは、この春に新しく導入された注目マシンであるレーザーカッター(Trotec Speedy100R)を主に利用してポーチとボタンを作ってみた。

女子力全開のかわいいボードもお手製

ワークショップ開始!

最初に、進行役の森川好美さん(総4)、岡本そらさん(環3)がこれから作るポーチについて説明してくれた。

スライドを用いて説明する岡本さん(左)と森川さん(右)

今回のデータ作成はすべてAdobe Illustratorで行う。フェルト、アクリル板、木板と素材を変えて、ポーチとボタンの全てのパーツをレーザーカッターで切り出していく。レーザーカッターは、素材との相性が良ければ様々なカタチのパーツをつくることができる。ファブリケーション機器のなかでも特に汎用性の高い機材だといえる。

Illustratorを使って自分好みの型紙に

基本的な型紙で作られたポーチの作例

まずはポーチ部分をつくっていく。すでにIllustratorで作成された2種類の型紙データから1つ選び、さらに自分の好みにアレンジしていく。
 私はフタが波線になっている型紙を選択し、そこに模様をつけてみることにした。少しだけIllustratorを使ったことがあったため、意気揚々とデータをこねくり回していたところ、Fabコンサルタントの永良凌さん(環3)がショートカットキーなどを駆使した効率のよい作成方法を指導してくれた。
 そうしてなんとか模様をつけ終え、ポーチ部分のデータ作成は完成した。

型紙に花模様を入れた

落書きがボタンになる?!

次はボタン部分の作成である。これも自分の好きなカタチにできる。「Fabってあそぼ!」でなぜか受け継がれているカモのキャラクター(関連記事参照)があり、それをボタンにしようかとも考えたが、なんといっても今回は“女子ファブ”だ。どうせならその名に見合うような純粋でかわいらしいものにしようと考え、カモを意識した上でより抽象化した鳥のカタチにすることにした。
 決めたらいざ、画用紙に“いびつな鳥”を描き、その線画をスマートフォンで撮影し、Illustratorへ取り込む。

画力は皆無。

そして取り込んだイラストをもとに、Illustratorのペンツールで曲線を描いて、実際に出力できるデジタルデータを作成していく。ペンツールの扱いに苦労したが、Fabコンサルタントのサポートを得てなんとか鳥のカタチを完成させた。

ペンツールさばきの成長が見られる

レーザーカッターでいざ切り出し!

ここまでがデータの作成で、ここからはレーザーカッターで素材の切り出しをしていく。Fabスペースに設置されたノートPCにデータを取り込み、レーザーカッター本体へ送る。この際、切り出す素材に応じてレーザー出力の強さを調整する必要がある。

メディアセンターに新しく導入されたレーザーカッター

今度はレーザーカッター本体の操作として、焦点距離の調整を行う。切り抜く素材をステージに載せ、ステージを上下に動かし、レーザーポインタに添えた補助器具が倒れれば、そこが適切な焦点距離だ。レーザーカッターを利用する際、こうした調整は必ずFabコンサルタントにお願いしよう。

焦点距離を合わせる。ポインタ右側の金属が補助器具

いよいよスタートボタンを押す。すると、レーザーポインタが縦横に動き、作成したデータどおりに素材を切り出してくれる。

どんな断面になるかは素材次第

今回ポーチの部分に使った素材はポリエステルのフェルトである。本来、布や紙のようなものをレーザーで切ると断面が焦げたようになるが、ポリエステル素材を使用することで、切断面が溶け、ボンドで固めたかのようになる。今回のワークショップでは特別にフェルトを使用したが、通常はFabスペースに準備してあるアクリル板と木板しか使用できないので、注意しよう。

レーザーを照射してデータどおりにカットしてくれる。

ボタン部分に使ったのは、木板だ。こちらは切断面や目の部分が焦げて茶色になる。この焦げによって鳥の目など表面の彫刻を施すことができるのである。

右の鳥は少しだけ頭が切れてしまった。

職業用ミシンでパーツを縫い合わせよう

パーツが全て完成したら、次は縫い合わせる。ここで登場するのが、レーザーカッターのほかに新しく導入されたマシンのひとつ、職業用の刺繍ミシン(JUKI baby lock EP9600)。職業用ともあって、縫うパワーが強く、分厚い布でも縫うことができる。さらに自動で糸切りができたり、フットペダルでの速度調整もできたりする優れものだ。

中学生時代ぶりのミシンに冷や冷やする。

このミシンで両端、マチの部分を縫い、ボタンを取り付けたら……
 

ポーチ完成!

ついに完成したものがこちらだ。

なんとか無事に完成した。

普段使わない女子力を精一杯発揮して無事にポーチをつくり終えることができた。文字にすると長いが、Illustrator弱者、手先不器用の私がポーチを完成させるまでにかかった作業時間は1時間くらいである。アイデアが手に触れるカタチになるまでの時間の短さに、デジタルファブリケーションの魅力をひしひしと感じた。
 

デジファブは十人十色 女子ファブが引き出したFabの魅力

ワークショップ終了後、女子ファブを考案した1人である森川好美さんに話を聞いた。

森川好美さん(総4)

— 女子ファブを企画したきっかけはなんですか?

今までのFabスペースのワークショップは、マシンにフォーカスして、その使い方を学ぶものがほとんどでした。それはそれで参加者がマシンを使えるようになるのでよいのですが、同時に、「生活に身近なモノをつくれる」ということを伝えるワークショップもしてみたいと思っていたんです。

— 「女子」に焦点を当てたのはなぜですか?

女子はかわいいものが好きですが、かわいいだけで実用的でないものは手元に置かないし使わないですよね。そこで、生活に身近で「かわいくて使えるもの」をつくってもらうために、「女子」という言葉を使いました。

「簡単にアイディアが形になるのが楽しい」と語ってくれた参加者

— ワイワイ楽しく参加できました。女子ファブの手応えはどうですか?

女子ファブはかなり思い切った試みだったのですが、男子学生も楽しく参加してくれてよかったです。
 今回は、事前にポーチの型紙を作って、ボタンのカタチさえ変えてもらえば最低限できるというところまで準備していました。そんななか、参加者の3人は同じ型紙からそれぞれ違うものを完成させたんですよ。デジタルファブリケーションの魅力を見たなと感じました。

— これからも続いていきますか?

はい、女子ファブはこれからも続いていく予定です。何かやりたいことがあればぜひFabコンへ来てください。要望があれば、男子ファブ、いや「男ファブ」もやるかもしれません!

参加者3人のポーチ。まさかの鳥かぶりだが、どれも全く違う。

マシンやソフトの使い方を覚えられる上に、かわいくて実際に使えるモノを持って帰ることができる今回のワークショップ。途中、ふと取材ということを忘れそうになるくらい楽しくモノづくりをすることができた。
 今後もFabコンサルタントによって独創性あふれる企画が登場することが楽しみだ。デジFabに触れたい人、モノづくりをしてみたい人はぜひFabスペースを訪れてみてはいかがだろうか。

「Fabってあそぼ!」では、SFC CLIP編集部の部員がFabスペースにあるマシンを実際に利用したり、Fabに関係のある人物に話を聞いたりすることで、独自の視点でFabに迫っていく。 次回もお楽しみに!