15日(月)から冷房の運転が始まったが、今までなぜ冷房はつかなかったのか。今回の特捜CLIPでは、SFCの空調事情を調査した。

今年の5月は暑かった

「マジで暑くね?」「冷房動かせないの?」
 そんな悲痛な声が聞こえてきたのは、13日(土)に行われた憲法(統治)の補講に出席していた学生たちからだ。スーツ姿の学生たちは休憩時間に入るとそろってネクタイを緩め、風を求めた。外の方が涼しい、と多くの学生は前半部分の出席票を提出すると涼みにθ館を後にした。
 冷房がつかず、暑い思いをするのは毎年のことではある。しかし今年は格別だ。神奈川県東部では、5月は夏日が19日、真夏日も1日と、東日本全体としては1946年の統計開始以来、最も暑い5月となった。Ω館の温度計は連日30℃をマーク。6月も既に夏日が9日。なぜ15日の運転開始を待たなければならなかったのだろうか。
 

ハードの問題 冷暖房の切り換え作業に時間が

「機械的に無理なんです」総務担当の職員はそう明かす。SFCの教室が使用している空調システムは、暖房から冷房、冷房から暖房に切り換えるために専門の業者を呼んで作業する必要があるという。暖房運用期間最終日は4月10日。それから6月にかけて、切り換え作業が行われる。また、教室の空調の運用期間(冷房は6月15日-9月末)は全塾で統一されている。作業が比較的早く終わった場合は「試運転」と称して特段暑い日、あるいは寒い日に空調を動かすこともある。作業期間を短縮できないのかと聞くと、「委託費用が増える」などの問題があると、否定的だった。その一方、Δ館などの一部の空調は独立していて、即座に暖房と冷房を切り換えることができる。
 25年前のキャンパス創設当時、ニオイや航空機の騒音などを理由に窓を開けることができず、当時は日吉や三田の教室棟にそもそも普及していなかった空調システムを特別に導入した。たが、システム自体はそれ以来変わっていない。システム更新にかかる初期費用などを考えると、近いうちに変わる見込みは薄いだろう。

教室棟の空調

 

SFCは節電の「優等生」

 節電も関わっている。少なくとも10年ほど前、当時の小泉内閣がクールビズを推進し始めたころから、全塾で空調の設定温度は28℃になっているという。義塾が節電に本格的に取り組み始めたのが2011年の夏。東日本大震災の影響で全国の原発が順次停止し、電力危機が発生した。SFCでも「SFC節電本部」が設置され、目標に向け対策を練った。  SFCは節電の「優等生」だ。他キャンパスに比べて、SFCは節電に成功しているといえる。節電が始まる前年の2010年度に比べて昨年度は消費量が約40%減っている。

SFCの電力消費量の推移2011年以来SFCの電力消費量は激減している

 節電対策の一つとして、本館前の正面階段にあり、水が流れる「カスケード」の運用が止まっている。もともと震災による機械故障のため止まっていたが、復旧後、運用に関わる費用と電力を鑑みた結果、再稼働はなされなかった。ほかにも照明を消費電力の少ないLEDに換えたり、節電意識の啓発など、様々な取り組みが行われている。  空調は各教室で電源を扱えるので、統一的なきめ細やかな節電は難しいが、外気温が比較的涼しいときは大元で空調を切ることもあるという。  

教室についているコントロール・パネル

節電と快適な勉強環境のはざまに

 湿度によっては冷房28℃ですら暑いと感じる人もいるが、現在のシステムでは対応することが難しい。学校の衛生環境の基準を定める文部科学省の学校環境衛生基準も「10℃以上、30℃以下が望ましい」と、暑がりにも寒がりにも優しくない状況だ。SFCも創設から25年が経ち、そろそろ施設更新期に差し掛かろうとしているが、いつ空調などの主要設備が更新されるかはまだ見通しが立っていない。当面は各自服装の調節で対応するしかなさそうだ。