リーグ結成90周年の節目を迎える東京六大学野球リーグ。義塾野球部は優勝を懸けて今年も勢いある戦いを見せている。今回は、スタンドから慶應の勝利を引き寄せる「応援」に着目。早慶戦に向けてSFCの学生を巻き込むための「神宮満員計画」に取り組む慶應義塾大学應援指導部リーダー部の木村翔さん(総3)にインタビューした。

SFC生にも慶應への帰属意識を

「神宮満員計画」は、村林裕研究会(スポーツビジネス)のプロジェクトの一環として、應援指導部の木村さんをはじめ、SFCに所属する應援指導部員や体育会野球部の國富建大(総4)さん、SFC所属の野球部マネージャーを中心に始まった。

應援指導部の木村さん 應援指導部の木村さん

—— 「神宮満員計画」の考案にはどのような経緯があったのですか?

SFCの学生にもっと神宮(明治神宮野球場)へ足を運んでもらおうというねらいで、このプロジェクトを発足させました。SFCのみなさんのなかには、同じ塾生であるにも関わらず「SFCだから……」と遠慮する人が多いです。そこで、慶早戦はもちろん、ほかの大学とのリーグ戦も観戦してもらい、慶應への帰属意識を感じ、慶應の魅力を知ってもらおうという思いでさまざまな企画に取り組むことにしました。

SFCには多くの野球部員がいるので、何かのきっかけがあれば多くの塾生を神宮に呼ぶことができるのではないか、SFCの世界だけで慶應義塾を感じるのではなく、ぜひ慶應義塾のいろんなすばらしさを感じて卒業してほしいという願いが根本にあります。また、自分自身もSFCに通う應援指導部の部員として、このSFC塾生動員対策とは4年間向き合っていかなければなりません。それならば、自分が通っている間に少しでも興味を持ってもらいたいのです。

—— 確かに、三田や日吉から遠く離れたSFCはいわゆる慶應色は薄くなりがちかもしれません。どんな企画があるのですか?

これまでにやってきた企画は、生協食堂と野球部のコラボメニューを考案したり、生協食堂・売店の入口にリーグ戦の勝敗を記した星取表とSFC所属の注目選手のポスターを掲示したりしました。また、今季からは9月に入学したGIGA生に向けて東京六大学野球リーグを英語で説明したり、秋祭で應援指導部のパフォーマンスを行う機会を設けたりもしています。SFCの学生のみなさんには、ぜひ一連の企画を通してリーグ戦に興味をもってもらえればうれしいです。

生協食堂コラボの際の写真。左から横尾俊建主将、山本泰寛副将。
(應援指導部より提供) 生協食堂コラボの際の写真。左から横尾俊建主将、山本泰寛副将。
(應援指導部より提供)

人の心を動かす応援の魅力「成長と感謝」

SFCの学生に神宮球場に来てもらおうと多彩な企画に励む木村さんに、應援指導部に入ってこそわかった応援の魅力を聞いた。

—— 木村さんは、そもそもなぜ應援指導部に入部したのですか?

両親が應援指導部のOB・OGで、幼いころから慶應の応援が身近な存在だったことが一番のきっかけです。『若き血』や塾歌を耳にしたり応援の様子を目にしたりするなかで、自然と慶應への憧れが強くなっていきました。

—— ご両親も應援指導部だったのですね。SFCに入ったら「僕も應援指導部へ」と思っていたのですか?

実は、SFCへ入学した当初は應援指導部への入部はあまり考えていませんでした。高校時代に頑張っていた野球を軽く続けようかなと思って野球サークルの新歓に行ってみたり、ほかの活動にもチャレンジしようかなと考えていたりしていました。そんなとき、應援指導部の新歓で先輩から「お父さんやお母さんと同じように慶應を応援してみないか」と声をかけられたことで「慶應への憧れ」の気持ちがよみがえり、SFCのキャンパスから通う難しさを覚悟した上で入部を決意しました。

—— 数ある応援団のなかで、慶應ならではの特長はありますか?

應援指導部では、1年生から4年生までがのびのびと応援しています。ほかの大学の應援団、応援部のように学生服のバッジなどの身なりで学年を区切らず、上下関係を保ちつつも対等な応援ができるところが慶應の應援指導部の特長です。

—— 上下関係が厳しいというイメージでしたが、応援に関しては対等なのですね。そんな応援の魅力とはなんでしょうか?

応援の魅力は「繋がり」であると思っています。応援をともにすることで同志の仲間みんなが繋がり、勝利という目的に向かって声を張り上げる。応援席の一体感ほどみんなが一つになって繋がっているなと感じる場面はありません。

個人としては、「自分自身の成長」と「感謝」を学ぶことができると思います。僕たちは人様を応援する立場上、自分たちがなおさら努力しなければならないんです。だからこそ、日々の練習から自分を極限まで追い込み、限界を突破することで人間的にも成長できます。そうすると、入学時と卒業時ではまるで別人のように変わるんですよね。さらに、人を支える立場に回って初めて、支える側の人の大切さを実感し、感謝の気持ちを大切にできることも応援をしていて感じることです。

—— 自己の成長を実感し、周囲への感謝も学べる…とはいえ自分を極限まで追い込むことは容易ではないと思います。一体なにがモチベーションになっているのですか?

もちろん日々の練習はとても厳しいですが、体育会の選手にキャンパスなどでたまたま会ったときに感謝の言葉をもらうと喜びを感じて辛いことでも頑張れるんですよ。自分が応援してるときに慶應が勝利すると自分が試合に出て勝ったかのようにうれしいですし、慶早戦で勝利したときにだけ歌う『丘の上』という曲をスタンドのみなさんと一体になって歌う、それがなによりの喜びを感じる瞬間ですね。

気になるリーグ優勝の行方は…?

9日(金)現在の慶應は、3カードを終えて第1位につけている。いよいよリーグも後半戦へと差し掛かるなかで、来週末に控える現在2位の明治大学との戦いは、天王山となる。今季、横尾俊建主将(総4)の4試合連続ホームランの記録をはじめ、リーグ結成90周年の節目に多くの記録を残している義塾野球部。SFCに通う選手も、神宮で目覚ましい活躍を見せている。どの対戦においても、記憶と記録に残る熱い戦いが繰り広げられ、大きな注目が集まっている。

木村さんは「野球部の皆さんも、僕たち應援指導部としても、4年生にとってはこの秋が最後のシーズン。これまでの恩を返すべく、全力でパフォーマンスをしたい。絶対に優勝してパレードをして締めくくりたい! SFCのみなさんのパワフルさは日吉、三田、芝、信濃町、矢上に通う塾生のなかでもズバ抜けていると思います。ぜひ力を貸してください!」と目を輝かせて呼びかける。

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