14日(木)、授業「SBC入門」とSBC合同研究会による最終発表会「はじまりのおわり」が、未来創造塾滞在棟1で行われた。今学期の取り組みについて報告するとともにSBCのこれからについて活発な議論が行われた。

前半は春学期に「スチューデントビルドキャンパス(SBC)入門」を履修した10グループ、後半はSBC合同研究会の3チームが発表した。

多くの学生がSBC滞在棟に集った 多くの学生がSBC滞在棟に集った

新しい学びとは何か 「SBC入門」発表

第1期目となる「SBC入門」。履修者たちはこの春学期を通して「新しい学び」について常に模索してきた。今春から新しく始まったSBCという環境で、自分たちは一体何ができるのか。果たしてどのような「学び」が考えられるのか。実際にプロジェクトを運営しているSBC合同研究会へ向けて提案を行った。

相互のフィードバックを主旨とする今発表会では、前半部の最後に参加者投票が行われ、各グループの総評が全員に共有された。ここでは、上位入賞を果たした2グループを紹介しよう。

中高生に伝えるスチューデントビルドの精神

総投票数の過半を獲得し、堂々の1位に輝いたのは、日下真緒さん(総1)のグループ。現状、SBCの利用者層は学生・教員・地域の人々に限定されているが、日下さんはこの構図に疑問を抱き、「中高生に伝えるSBC精神」を提案した。

一般に、中高生は多くの悩みを抱えている。たとえば、勉学。何のために学び、それらが自身の将来へどうつながっていくのか。あるいは進路。そもそも大学とはどういったことをする場なのか。そういった悩める中高生を対象とした「中高生版SBC」を作り、実際に大学生と手を動かしながら、最終的には1棟の教室を建ててみる。そしてゆくゆくは、滞在棟を囲む1つのまちを創り上げる。

朗らかな関西弁を交えた日下さんの新提案は、学生のみならず、各教授陣の心も惹きつけたようだ。

熱く語らう日下さん 熱く語らう日下さん

SFC生よ、IT機器から脱却せよ! 農業プロジェクト

得票数2位を獲得した坂元祐さん(総1)のグループは、SFC農業プロジェクトの一環として、SBCの敷地を用いた農耕を提案する。SFCはIT技術の最先端を走ることで広く知られているが、敢えてそこから一歩離れ、人が土に触れることの大切さを真剣に説いた。

無機質な建物の中で1年間を過ごしても、季節を感じることはできない。しかし、土にまみれ、農作物を育てることでそれは可能となる。また、「野菜=お店で売られているもの」という定着観念を払拭し、そもそも野菜とは土から生まれてくるもの、という事実を再確認することもできる。

日々、自分たちが食す野菜はどのように作られ、どの部位がおいしく、どういった手順を経て食卓に並んでいるのか。IT機器によって「操られている」SFC生に警鐘を鳴らすと同時に、より人間らしい生活を目指すことが「新しい学び」であると、坂元さんたちは考えているようだ。

チームS・B・Cのこれから SBC合同研究会

しんしんと更けていく夜。途中、休憩と軽食を挟みつつ、最終発表会は「SBC入門」から「合同研究会」へとバトンタッチする。SBC合同研究会は、チームS・B・Cの3つに分かれており、それぞれがSBCの運営・管財、設計・建築、企画・広報の役割を担っている。発表会の後半は、各チームの体制を確認し合うと同時に、SBCの将来を見据えたチームのあり方について、全員が積極的に意見を交換した。

SBC施設の運営 チームSが考える、SBCの「価値の質」

チームS リーダーの土肥さん チームS リーダーの土肥さん

春学期の滞在棟の総利用者数は延べ380人。研究会を中心に、毎週のべつまくなしに合宿が行われ、利用者からは多くの反響があった。たとえば、「ベッドが柔らかく、普通に残留するより快適だった」「木造建築ならではの木のぬくもりが感じられた」「初対面の人と一緒に宿泊することで、一気に仲が深まり、充実した議論を行うことができた」などである。その反面、ベッドの木屑によるアレルギーや、調味料等の備品の不足、遮音・防音性能の低さなど、不満の声も少なからず寄せられた。

また、滞在棟は学生・教員同士の親睦会や、留学生や地域の人々との交流を目的としたワークショップなど、合宿以外の目的でも多く利用され、SBCという新しい環境が十二分に活用されたという。

このほかにも、滞在棟で使用する長机をスチューデントビルドの精神のもと、自分たちの手で製作したり、先にも挙がったベッドの木屑問題を化学塗装により防止したりと、より快適な空間づくりを目指してこの3ヶ月取り組んできた。

チームSは決して現状に甘んじない。滞在型教育の良さである「人との関係性・長時間の空間共有・新しい学びの発見」を最念頭に置き、滞在棟利用者をサポートしていくことで、SBCの価値を高めようと努めている。彼らが志しているのは「提供できる価値の質を高めること」であり、そのためのSBC運営である。学びに必要な偶発、創発、新しい気づきを生みだす環境づくりのために、チームSはこれからも日々邁進していくであろう。

施設の設計 チームBが問う、価値のあるモノ・コトづくり

設計・建築を担うチームB 設計・建築を担うチームB

S・B・Cの3チームの中でも常に先を行くのが、チームBである。彼らは棟の設計から建設、さらには維持・管理まで、SBCの基礎・基盤を任されている。彼らなくして、SBCは成立しない。縁の下の力持ちと言える。

チームBは、滞在棟の家具・看板製作、浴室サインのデザインなどを行ってきた。また「一年一棟」を掲げ、滞在棟2の検討にも着手している。滞在棟1を建てた際のノウハウがあるとはいえ、全く同じものを築いてもそこに新しい学びは生まれない。よって、彼らはゼロベースで次の棟デザインを構想し、模型を作りながら思案する。

内部のレイアウトについても彼らの管轄だ。新奇性に富んだキッチンのデザイン、より高機能かつ意匠を凝らしたベッドのデザインを考えるべく、さまざまな議論を交わしている。これらのプロジェクトは進行中であるため、最終的にどのような滞在棟2が完成するかは、今年度末までのお楽しみである。

チームBの中心である菊地豊栄非常勤講師は、「チームBは(三田の理事会やSFCの管財担当とのやり取りを直接行うという意味で)未来創造塾の最前線に立っていることを常に意識しなくてはならない」「自分たちはクライアントでも(国から認可された)設計者でもないが、それらの立場を超えた価値を、モノ・コトづくりを通して生み出し続けられるか、常に問い続けていく」と発表の最後を締めくくった。

100人聞いて、100人知っているSBCを目指して チームC

企画・広報を担当するチームC 企画・広報を担当するチームC

建物を使うチームS。建物をつくるチームB。それら2つに対して、チームCは「SBCの発信」を行っている。現状、メンバーが4人しかいないチームCだが、Webサイト・SNS・パネル(ポスター)・ペーパー(パンフレット)といった多様な媒体を通して広報を行っている。また、SBCへ出資者を対象とした内覧会、ふじさわ産業フェスタへのチーム参加、オープンキャンパスでの滞在棟見学会など、諸イベントにも積極的に関わってきた。

チームCのリーダーを務める松岡大雅さん(環2)は、「チームCがいなければSBCの未来はないという自覚を持ち、新たなアウトプットの形を探る。チームCこそSBC」と語った。そしてゆくゆくは、「(SFC生)100人聞いて、100人知っているSBC」を目標にしたいと意気込んだ。

「はじまり」は既に「おわった」 熱意あふれるSBC

延べ40人近くが登壇し、発表者への質問・フィードバックも大いに盛り上がったSBC入門+合同研究会による最終発表会「はじまりのおわり」。今春から本格的に始まったSBCプロジェクトであるが、そこにたとだとしさは感じられず、彼らの熱意がその場を包んでいた。

機は熟し、はじまりはとうに終わった。SBCの未来と発展に向けて、これからの活動に期待したい。

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